げぇ!めちゃくちゃ大軍団ができてる!?

 俺は無人機を再び駆り出して、神聖オーマ帝国の首都のあたりを偵察することにした。

 今回は爆弾も何も装備していない、身軽なままでの飛行だ。


 しばらく飛んでいると、神聖オーマ帝国の首都の前に到達するが、その様相は前回訪れた時とまるで違っていた。


 色とりどりの大小さまざまの天幕がいたるところに建てられ、大地を埋め尽くしている。

 天幕の近くには、パチンコ屋の新装開店のノボリよろしく、色取り取りの旗が突っ立てられていて、風を受けてその身を揺らしていた。


 げぇ!めちゃくちゃ大軍団ができてる!?


 帝国っていうくらいだから、各国の大中小の貴族を集めて軍勢を作ったのか。

 蛮族みたいな倫理観でも、意外と緊急時でも即座に動けるだけの備えあったのか、オーマ帝国。


 帰って爆弾を積んで、先制攻撃とも考えたが、しばし考える。

 何故かというと、周りの村から黒い煙が上がって炎上しているからだ。別に俺が何かしたわけではない。


 だが、これに心当たりはある。ありまくる。

 軍隊というのは動かないだけでも維持費が滅茶苦茶にかかる。現実的な話で言うと、猛烈な量の飯を食う。さて、これぐらいの数の軍隊がトラックも無い時代、一か所にとどまり続けると何が起きるか?――はい、略奪ですね。


 周りの農村から食糧をぶんどって、抵抗した連中を焼いている煙だあれは。むしろそのまま食ってすらいるかもしれん。「カリスト教」の本に「隣人を食せよ」とかあったしな。


 ほっといても神聖オーマ帝国という国にスリップダメージが入っていくし、貴族の略奪を止められない皇帝は、自分が支配する土地に住む人間からの尊敬を徐々に失う。


 そうなれば何をするのにも抵抗されるようになる。自分の命令が通らなくなるという、最強デバフの完成だ。


 オーマのトップが割と無能で助かったな。これは軍隊を作り過ぎて、毎ターンの収支がマイナスになるタイプのプレイヤーだ。


 ゲームなら、軍隊を解散してしまえばいいが、現実はそうはいかない。中央の力が弱まるのを意味するし、首になった連中は野盗になるか、傭兵になるかして、結局地方の有力者、つまり貴族の力が増す。

 地方が強くなるとどうなるか?もちろん織田信長のように中央を目指す。つまり、いまのトップの首のすげ替えを狙った内戦が始まるというわけだ。


 日本の戦国時代とかと似たような流れっすな。


 ふむ、ならこっちは守りを固めて、時間を稼いでいけば、そのうち神聖オーマ帝国の死亡診断書が出るだろう。貴族の国家の枠組み脱退かーらーのー、帝国解体という結果をもって。


 戦わずして崩壊っていうのは無理だろうが、数十年かけてガチですりつぶしあうような事態にはならないだろう。オーマがその前に終わるわ。


 おそらくだが、略奪しきって物資不足が発生して、金のない連中から勝手に帰りだすとかの混乱が始まる前に、この戦力を移動させて決戦を挑んでくるだろう。時間はそう残っていない。こっちも軍事に注力して色々用意しないとな。

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