公正世界をぶっ壊そう。
皆が川島の決闘法発言に言葉を失いただ見つめるだけになる。しばらくその空気が続いた後、石井が声を上げる。
「川島、提案者としてはめちゃくちゃありがたいんだけど本当にいいのか?」
川島が頷く。
「川島がそこまでする意味あるか?国に公式に記録されるんだ。やっぱなしなんてできねえぞ。決闘ごっことは違えんだぞ。」
川島は何も言わない。
「野村、川島にもし何かあったら俺も一緒に対価をはらうさ。」
「馬鹿かよ、負けたら十中八九国外に流されるより酷いことになるんだぞ、そこまですることか?」
「言いたいことはわかるよ野村、でもそんな馬鹿なことにさえ命や覚悟をかけなきゃできないのが今のこの国なんだ。このまま言われるがままに放流されるのも癪に触るだろ。俺たちの青春しようぜ兄弟。」
「あークソ。俺は川島までいなくなるのは嫌だから、四組の奴の要求があまりに理不尽だった時はぜってぇ止めるからな。」
「わかったよ、ありがとう野村。なんやかんやお前はいい奴だ。」
「きめえよ馬鹿。」
そうして石井たちは一組に中村、大澤、泉、伊藤の4人。二組に石井。四組に宮島、川島、野村、松丸が行くことになった。
そして決戦の昼休みを迎える。
一組の扉を開けると皆が各々飯を食べたり、パソコンをいじったり、寝ていたりした。目当ての人物である島田は当たり前のように寝てた。
伊藤が寝ている島田に話しかける。
「島田、起きてくれ〜。」
起きないので身体をゆする。
「ん、なんだ、伊藤か、めずらしいな。」
寝ぼけた声で島田が言う。
「お前いつも眠ってるから話しかけにくいんや。んでさ、お前たち文化祭は何やるかきまったか?」
「文化祭?そりゃ去年と同じでなんも意味のないクラス展示だよ。この学校にいりゃ聞くまでもないだろ。」
「いや、俺たちは映画撮ろうと思うんやけど」
そう言った瞬間これまで各々の作業に集中していた一組の生徒たちが一斉にこっちを向いた。
「映画って、んな面倒くさそうなことよくやろうと思ったな。どうせ石井の入れ知恵だろ。てかそれ先生がぜってぇ許可しないだろ。」
「そりゃそうやな。だから島田たち一組にも一緒にやらないかって相談しにきたんや。」
「いやいやいやいや、めんどいし俺らにやるメリットないじゃん。先生からも睨まれるだろうし。」
「なんとかならんか?」
「なんともならんだろ。」
といいつつ島田は周りを見渡す。一組の生徒は無言の同意をしていた。
伊藤はその状況をみて、中村に目をむける。中村はそれに気付き頷く。
「ねえ島田君、本当にだめなの?」
「な、中村さん。」
島田は急にどぎまぎする。
「私島田君がすごいこと知ってるよ。いつも寝てるけど、いつかの美術の授業で島田君の絵みたけどセンスあるよね。あれだけ才能あるなら映画にも活かせると思うんだ。それに一組ってそういうセンスある子多いじゃない。」
「いや、そんなことないよ。でもなぁ。」
「島田君、お願い。私島田君と一緒に映画とりたいなぁ。」
「やりましょう!そこまで言われたらもう動くしかないよね。素晴らしい映画とりましょう。みんなもそれでいいよな。」
島田が落ちた。周りの目線はひどいことになっていた。
「さすが島田君。じゃあ他のみんなの説得お願いしてもいいかな。」
「おまかせください!」
「約束だよ。」
そう言い中村は手を出す。
島田は満面の笑みでその手を握り大きく頷いた。
「馬鹿や」
「馬鹿ね」
そうして一組の説得は終わった。
二組の扉を開けた石井。タブレットで漫画を読んでいる山田の席に歩みを進める。
「よっ。山田。取り引きがあるんだけどいいか?」
「よう石井。内容は?」
「ここじゃなんだから廊下でいいか?」
「別にいいけど。」
石井と山田は廊下に出る。
「で、取り引きって何よ?」
「文化祭で俺たち映画をやろうと思うんだけど、三組だけじゃなくて二年生全体でやりたいんだよね。だから二組にも参加して欲しいんだ。」
「映画ねえ。俺のクラスの奴らはノリいいやつ多いし、言えばやってくれるだろうけど正直俺としたら放流以下の酷いことになるリスクを負ってまでそんなことやる気出ないってのが正直なところだな。俺だけのリスクなら兎も角、クラスのリスクになるからな。」
「妥当な判断だと思う。だからこそ取り引きがしたい。これを見てくれ。」
そういい石井はスマホの画面を山田に見せる
「これって紙の漫画本か?しかもかなり古い奴だな。」
「全部初版本だ。」
「初版なんてまだ存在したのか!」
「俺たちの映画に参加してくれたらこれを全部やる。」
「嘘だろ、これありゃいろいろどうにでもなっちまう価値があるんだぞ。」
「さっきいってたリスクはこれで消えるだろ。あと漫画も漫画が本当に好きなやつのとこにいる方が幸せだと思うぜ。俺は一回読めば充分派なんだ。」
「そうか。わかった。その覚悟は伝わった。俺たちも参加するよ。二組の奴らには俺から言っとくから心配しなくて大丈夫だ。」
「恩に着るよ。」
「馬鹿野郎、取り引きだ。取り引き。お前に着せる恩なんてねえよ。」
「それもそうか。」
「恩着せるぞ。それより一つ聞きたいんだけど、お前がこんなに動くのはやっぱあの子のためか?」
「全てじゃないけど、きっかけではあると思う。そこらへんは俺も俺自身のことだけどよくわからないんだ。だけどほとんどはみんなで青春したいんだと思う。」
「そっか、まぁ俺には関係ないからいいけどな。ま、やるからには二組の奴らは全力でやるからよろしくな。」
「ああ、ありがとう。」
そう言って山田が教室に戻って行った。
それを見送った石井は急いで四組に向かう。
流刑の僕らの青春 @bodo3
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