第21話 僧侶とザマァ3

「オチ○チ○バトル……俺とザマァが?ありえない!」


「では、今すぐハズレカナ様のオチ○チ○を見せてくださいませ。カワイイヨに」


「なっ……!?」


「犯罪を助長じょちょうするな。嫌がってるだろうが、わたしが」


 ハズレカナは閉口する。

当然である。彼女にオチ○チ○はない。すなわちオチ○チ○バトルなど出来るはずがない。


「貴方のオチ○チ○には、今もまだザマァ様との激闘オチ○チ○バトルあとが残っているのですわ!それこそが動かぬ証拠!言い逃れはできませんことよ!」


「オチ○チ○に激闘オチ○チ○バトルあと……!?くっ!」


「おち○ち○おち○ち○うるさいな。おち○ち○がゲシュタルト崩壊ほうかいするわ。

……はあ、ハズレカナさん。ちょっといいですか?」


 カワイは荒れ狂うオチ○チ○の氾濫はんらんを防ぐため、大前提を打ち崩す。


「どうしても俺のオチ○チ○を見るというのであれば……実力行使に出るが」


「それは不可能です。だってから」


「どういうことですかカワイイヨ!?」


。おち○ち○だとか、おち○ち○バトルだとか、フザけたこと言いまくってましたけど。見当違いもはなはだしい」


「な……何を言う!俺は男だ!」


「じゃあち○ち○見せてみろよプリンセスに」


「カワイイヨ、見てくださいませ!チ○チ○イヤイヤ体操していますわよ!わたくしが!」


 チ○チ○が嫌なことを情熱的なダンスで全身から表現しているネージュ。

その姿を見て「速攻で終わらせて帰って寝る」と決意したカワイは今回の事件の全ての真相を明らかにすることにした。


「そもそも何で婚約混浴に二人がいたのか。これは、わたしの推論すいろんになりますけど。

ハズレカナさんはザマァさんに自分を意識して欲しかったんじゃないですか?」


「!!」


「面白い推理ですわね。続きを聞きますわ、カワイイヨ」


「ニヤつきながらキモいダンスするのやめろ。ちなみに根拠は……この写真です。これはハズレカナさんですよね?」


 カワイは(ネージュに)盗まれないようにと寝巻パジャマに突っ込んでおいた写真を取り出し、全員に見えるように提示した。


「君は、それをどこで……!」


「昼間オソイさん達と一悶着ひともんちゃくありまして、その際に見つけたモノです。あなたが、オソイさんに渡したモノですよね?」


「くっ……!」


「オソイさんはこの写真をザマァさんに見せようとしていました。、です」


「な……何ですって!?全く知りませんでしたわ!心当たりすらパーですわ!」


 お前現場にいただろうが、という荒ぶる暴言を飲み込んで続けるカワイ。


「その薬はオソイさんが作った特別製の……えーと」


「『正直オレは苦手なアイツ。でも最近なんだか少し可愛くなったような?いやいやいや、気のせいだって、違うって、全然好きとかそういうのじゃないっ……(息継ぎ)

でもアイツが他のヤツと笑ってると胸がチクチクする……この気持ちは一体なんなん魔法薬コード・ドラッグ』ですわ!」


「なんで一息でいこうとした。

……まあ、そういうことです。ハズレカナさん、あなたは嫌われている自分を意識してもらうためにオソイさんと、おそらくツイホーケイさんまで巻き込んだ壮大な計画を立てたのでしょう」


「ななな、なんでそんなことを俺が!」


「その理由はただ一つ!えーいCtrl+A#終雪築く霊峰の白オールコード スノウ!」


「わたしのセリフを……ひゃあぁぁぁ!?」


 乾いた破裂音が辺りに響き渡れば。

 からだは歓喜するように揺れ動き出す!

 隆起りゅうきする大地、否、氷雪により上がってゆく高度!

 瞬く間もなく視界を覆いだす星空!

は既に浴場ではなく。むちむちプリンセスの能力コードによってつくられた推理劇の終幕ラスト・ステージ

 すなわち――


「崖ですわー!本日はうまく出来ましたー!」


「高い高い高い。あ、待ってスースーするんだけど風ぇ!まくれる見えるヤバいヤバいヤバいヤバ」


 ザッパーン!波立つ温泉!

 いい感じのBGMといい感じの照明がいい感じにクライマックス感を出してくるぅ!

 ネージュは指をビシッ!と崖端のハズレカナに突きつけ告げる!


「ハズレカナ様がザマァ様に意識されたい理由、それは!ザマァ様にラブ♡ザッパーンだからですわーっ!!!」


「それわたしが言いたかったのに!

悔しいので付け加え追い打ちします。

……実家まで押しかけて結婚を視野に入れたお付き合いを考えてたくらいラブ♡ザッパンだったんだろ!」


 真相をり暴かれたハズレカナはみるみるうちに赤くなっていく!そのまま染まった頬を両手で押さえて――


「き……きゃああああああ!」


 助走をつけつつ勢いよく温泉に落ちていったー!!!


「えっ、ちょ!?落ちちゃいましたけど!?」


「ご安心なさいカワイイヨ!『真実を明らかにされた犯人は温泉に身投げしなくてはならない』とルミエーラ国際探偵条約第137条で決まっているだけですわ!」


「そんなもん国際条約にするな。ほんとにとんだ職権濫用しょっけんらんようだなこの王女!」


「あ、ちなみにわたくしが先程使用した技は長時間保ちませんの。なので――」


 刹那せつな、崩れる崖!!!


「〜〜〜っ、さ、き、に、い、え!」


「お風呂にダーイゥ!普段入れない温泉とこに合法的に入れますわー!やったー!」






 昼の露天風呂から始まり、深夜の混浴まで。長く続いた此度こたびの事件は、一先ひとまずの終わりエンディングを迎える。


 カーテンコールに現れたのは温泉から上がった飛沫しぶきが三つ。

 浴場で流血沙汰りゅうけつざたを起こした件でオーナーパナケアに怒られる女(10分)と。

 浴場に高所から飛び込みを行った件でオーナーパナケアに絞られる女(5分)と。

 浴場に飛び込んだ上、大音量のEDMを流しながら一人シンクロ・ナイズド・スイミングしていた件でオーナーパナケアに「貴女、昼も騒ぎ起こしましたよね?」と延長を入れられた女(30分+60分)。


 ……一番の被害者は間違いなくオーナーパナケアだろうな。

 全員の説教を終えた後、『職業鑑定飲料リアクタンD』を一気飲みしながら次の仕事に向かう彼女OL風エルフを見てカワイはそう思うのだった。




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