第19話 僧侶とザマァ1

〜BGM:むちむちプリンセスのメインテーマ ダミ声腹から出せremix〜




わたくしは探偵志望、ルミエーラ王国第三王女、ネージュ。

 相棒のカワイイヨと共にかんばしい事件の香りを嗅ぎつけセレニテ・ルマエのお風呂が一つ、婚約混浴にやって参りましたわ。

 んんっ、失礼。こんやくこんよく〜!にやって参りましたわ!

 時に、急いで現場に飛び込んだわたくしは被害者の方のお顔をよく見ていませんでしたの。

 ですので今改めてまじまじとご確認させていただいたところ――


 ザマァ様ですわね。これザマァ様ですわね。

 しかし、第三王女たるもの『まーた貴方様ですか、最凶の悪運で無双系主人公してるのでして?』とか考えてしまっては王家の名誉に関わりますわ!

 第三ラウンド、気合を入れて参ります!


 夢中に霧中なプリンセス、略してむちむちプリンセス!華麗なる推理劇、ザバっと整えて見せましょう!」


「王家の名誉はもうベッコベコだよ。まあだいぶ既視感デジャブなのは否定しないけど」


 事件現場、婚約混浴はその名の通り混浴である。会員登録をすることで利用できるセレニテ・ルマエ内でも少し特殊な浴場。

 その婚約混浴でザマァは顔から局部にかけてバスタオルを一枚乗せられて仰向け状態で放置されている。


「被害者のお顔を確認しても良いでしょうか?事件発生時に現場にいた、僧侶のハズレカナ様?」


「……あぁ。構いません」


 カワイはその人物に見覚えがあった。

短く切り揃えられたベリーショート。昼間に拾った写真の女性その人である。

 ただし、写真のようなドレスも化粧もしていない。今はゆったりとした法衣ローブで体型もわからない。ハッキリ言ってしまえば――風貌ふうぼう


「えーと、ハズレカナさん。ここ混浴ですけど……ザマァさんと入ってたってことですよね?」


「ああ、混浴とはいえ風呂は風呂。男と男の裸の付き合いは、そうおかしいことではないと思うが」


「……ふーん」


「まあ!ザマァ様、頭から血が……!」


「えっ、血が出てるんですか!?」


 ネージュがザマァの顔にかかったバスタオルをどかすと、ひたいに血が流れた後がある。


ひたいに流れた血の後…… 正面か頭上に、立った状態でケガをしたってことですかね?」


「そうだな、俺が殴ってしまったから」


「……ん?」


「犯人は俺だ。俺がやりました」


 ハズレカナはあっさり自供した。


些細ささいなことで喧嘩けんかしてしまって、思わず殴ってしまいました。騒ぎを起こしてしまって申し訳ありません。

ザマァが起きたらツイホーケイ達を交えて話し合います」


「……ふむですわ」


「あっもう解決ですよねコレ。帰りましょ帰りましょ。プリンセース?」


「しかし、そんなの犯人が勝手に言ってるだけですわ!」


「ついに本性表したな、このヤロウ」


 ネージュはカワイに視線を向ける。

その輝く瞳が、このまま終わって良いのかとうったえている。


「それに、ハズレカナ様が自白したとてまだのですわ。違いますかカワイイヨ?」


「……」


 カワイは少し考え込む。

第一ラウンド。第二ラウンドと終えて。今までの証言と、これからの現場検証で導きだせるかもしれないある推論すいろん


「いや、謎も何も。俺が――」


「いや、確かにまだ謎は残っていると思います。少なくともハズレカナさんは


「……!」


 切れ長の目が見開かれる様子を確認したカワイイヨ。このまま終わらせるわけにはいかないか、と仕方なくネージュに目配せした。


「となれば探偵としてやることは一つでしょう!――ゴング!」


「あ、はい。準備出来てますのでいつでもどうぞ」


 ハズレカナはすでに臨戦態勢ゴングを構えている


「では上着をバーン!ゴングはカーン!

 今宵のむちむちプリンセスはウルトラセクシーダイナマイト深夜テンションでイカせていただきますわー!」


 今、外套がいとうは投げられた!

 謎と謎が混じり合うこの混浴にて、開幕の火蓋は今切られる!

 (本日)最後の推理劇、行く末を見逃すな!!

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