第18話 王族と異世界転移族5
深夜、カワイはガバッと起き上がる。
右隣にはネージュ、左隣にはパルファ、その奥にアイソレが。狭いマットレスの中にみっちり詰まりながらすうすうと寝息を立てて眠っている。
眠れないのは美少女に包囲されていて緊張しているからというのもあるが、「
お花を
そう思ったカワイは周りを起こさないようにそろりと起き上がり、部屋を出た。
廊下には窓からの月明かりがぼんやりと射し込んでおり、幻想的な雰囲気を
目が覚めたら異世界で、変態王女となんやかんやあって婚約関係になりました、だなんて。ケレン味だけは人一倍の単発漫画みたいな物語。昨日の自分に聞かせたら、どう思うだろうか?
まず信じないだろう。というか、そんなトンチキとハレンチ
でも、ああ、そうだ。昨日はそれどころじゃなかったと、考え直す。
激しい雨が降っていた。
窓ガラスに叩きつける雨粒は、お前は
いや、もしかすると――
ふと異世界に転生する設定のライトノベルを思い出す。カワイはあまり本を読む方ではないが、そういう作品が元いた世界には沢山あるという知識はあった。
そして、大抵そういう作品の主人公は転生する直前に死んでいる。つまり。
「もしそうなら。わたし、あの体育倉庫で――」
「大変ですわよカワイイヨ!」
バーンと扉は開かれた。もちろん、トイレの。
「きゃああああああ!?何してるんだよ!何してるんだよ!!!」
「鍵開けは探偵の基本スキルですわよ!」
「王女の
カワイはとりあえずトイレを流す。
「そんなことより
「えっ流しましたけど。そんな臭いです?匂いって自分では中々」
「間違えました、事件の香りがプンプンしてますのよカワイイヨ!」
「今日はもうどうしても休みたいんですけど、ダメですか?」
「さあ事件は
「まあ、いつもの
やっぱりネージュに身体を抱き上げられるカワイイヨ。だが、その前に。
「あ、待ってください。わたし、まだ
「こちらは異世界のことを知るための重要な
「は?え……ちょっと待って。王女様?わたしをこのまま抱え上げるつもりじゃ――」
「ヨイショー!ヨッコラセー!ヨッコラセー!」
「まてまてまてまてバカバカバカバカ」
そしてやっぱり、事件は温泉で起きているのだった。
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