第17話 王族と異世界転移族4(サービス回)

「やだー!ネージュに、はんりょとか!はやすぎるのでしてー!」


 即オチであった。わんわん泣くパルファ、威厳いげんはどこへやら。

 本日は先程までみんなで食事をとっていたリビングダイニングキッチンに寝かせてもらうことになったカワイ。

 床に何枚かき布団を重ねて作られた少し広めのマットレスの上に四人の人間がぎゅうぎゅうとひしめく中、尋問パジャマパーティが始まろうとしていた。


「やっぱり飲み過ぎましたねお姉様。いつもこうなんですの。申し訳ありません」


 アイソレが胸を寄せた時に出来た危うい隙間につい目線が吸い込まれるカワイ。

 三姉妹の寝巻パジャマはかなりゆったりとしたつくりで、身体が少し前かがみになったり、脚を組んだだけで色々見えてしまいそうである。


「いや、大丈夫です。あんな勢いでビール飲んでる時点で予想ついていましたし」


「それよりもカワイイヨにわたくし寝巻パジャマが着れなかったことの方が申し訳ありませんなのですわ。上だけなら絶対に着れると思いましたのに!まさか胸が」「戦争か?戦争を今すぐ始めたいのか?お?」


 完全にサスペンダー状態になっていたのは語るまでもない。

 三姉妹の洋服はどれもサイズが合わず、仕方がないのでメリヤスの寝巻パジャマを借りたカワイイヨ。くるぶしまである可愛らしいワンピースをまとった姿は、まさしく誕生日プレゼントのお人形のようである。


「ところでーネージュー?明日はカワ君と学園の入学試験を受けにいくのでしてー?」


「入学試験?なんの話ですか?」


「明日はアルコバレル学園の入学試験日、そして私の誕生日でもあるのですわ!」


 胸をトンと叩いて前に張るネージュ。薄く色づく先端の突起がそのシルエットあらわした。

 カワイを覗く三人は現在上下の下着を着けていない。そのためつややかな乙女のからだが少しばかり透けていて、本当に目のやり場に困る状態になっている。


「わたしは元いた世界で学校に通ってましたけど」


「あのお洋服は学生服だとお話しされていましたものね。まあだからどうしたという話ですわ!よそ元いた世界よそ元いた世界うちこの世界うちこの世界!」


「はい。でアルコバレル学園ですか。どこかで聞いたような」


「アルコバレル学園。13年前、突如地上に無差別侵攻を開始してきた魔王軍に対抗するため人類と竜族が協定を組み設立された、未来ある闘士とうし達の学び舎。女神に選ばれたものしか立ち入れない聖域、とも呼ばれていますの」


「学園の入学試験は一年に一度だけ!そして試験を受けることができる最低年齢は14歳!そしてわたくしは明日14歳!つまり、もはや入学するしかないということですわ!」


「ふーん……え、14歳!?その身体で?」


「そっくりそのままお返し致しますわ!」


「は???」


「カワイイヨはもっとしっかりバランス良く食事を取った方がよいでわよ?」


「あなたの方がバランス取れてないからな。栄養がかたよってるからこうなるんだからな」


「ひゃあん♡」


 カワイは思わずネージュの乳を小突いた。

些細ささいな動きでもポヨポヨ弾む大きな膨らみが計六つ。緊張と興奮以上にねたみと劣等感がカワイをむしばむ。


「まあ、とーかたは学園にいるから気になることがあったらなんでも聞いてほしいのでしてー!」


「はい!学園のことは……ああ!そう言えばお姉様、聞いてください!

 私セレニテ・ルマエで全身を洗われたのですわ!頭を乱暴に流しただけでなく、身体はやめてと言ったのに可愛いから嫌だ、などと荒々しく全身を掻き回すみたいに――」


「カワイイヨ様は見かけの可憐かれんさによらず以外と積極的ですのね」


「それはカルカリアという全然関係ない女性の所業です。わたしは見てただけですから。触ってないですから」


 昼間、カルカリアに全身を揉みしだかれていたネージュの姿を思い出し耳が熱くなるカワイ。その場でより小さく体育座りをする。


「カルカリア……でして……」


「パルファお姉様によろしくとかホザいていましたわよあの方。お知り合いなのですよね?」


「うぅ……苦手でして。ぐいぐいくるし、ばんばん痛いし、『どんな手を使っても、お前を必ずワタシのつがいにする』とかわけわかんないこと言ってくるし。なによりおっきくてこわいぃ……」


 パルファは全身をふらふらと揺らしながら、そのままカワイに抱きついた。鼻腔びこうをくすぐるほんのり甘い香り。これだけ泥酔でいすいしているのに酒の臭いは一切しない。


「パルファさん?ちょっと動けないんで離れてください」


「うぅ……まだ私はカワ君を……認めたわけでわぁ……」


 そう言い残し、微動びどうだにしなくなった。耳をませば、くうくうという呼吸音。つまり――


「うーん!寝てますわねパルファお姉様!

 多分もう朝まで起きませんわ!」


「……えぇと。お三方にはご自分のお部屋があるのでしたよね、三人で運びます?」


「二階に運ぶのは骨が折れそうですの。今日はこのまま、ここで寝かせておいても良いですの?」


 すなわちそれは、カワイがパルファの抱き枕になるということである。

 カワイは一人で寝たかったが、こうなっては仕方がない。


「えー……まあパルファさん一人増えるくらいなら」「パルファお姉様だけズルーイ!私もカワイイヨと一緒に寝ますわ!寝るったら寝ます異論は認めません!おやすみなさーい!」


「……はあ。そうなると私もここで寝なくてはなりませんね。カワイイヨ様、お姉様ともう少し真ん中に移動してくださいな。端に失礼致しますの」


「このクッソ狭いマットレスの上に四人で寝ようとするな。いや本当に。あんまり押されると手がへんな所に」「はいどーん!はいギュー!カワイイヨこっちむーいて!ですわ!」

「っつ!?近い、近い近い!」


 前方に乳、後方にも乳、眼前には瑠璃色の瞳。強烈な胸の高鳴りが苦しくてたまらない。

 美しき怪物から逃げるようにカワイは目蓋まぶたを閉じて外界との繋がりを絶った。

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