第15話 王族と異世界転移族2
というわけで宮殿内の食堂に案内されたカワイイヨ。
食堂からはキッチンが見え、
第一王女、パルファ・ブラン・ルミエーラ
第二王女、アイソレ・ブラン・ルミエーラ
第三王女、ネージュ・ブラン・ルミエーラ
揃いも揃って
並んで微笑み合いながら作業をする姿は
それでも一際目を引くのは、やっぱり第三王女。なぜこんなにも目を離せないのか。果たして
「変わっていらっしゃいますでしょう?」
「おわお!?あ、はい!凄い変わっているように感じます!」
突然声をかけられたカワイはピャッと飛び上がる。慌てて振り向くと、背後に立っていたのは、メリヤスだった。
「アミュレッタ様の意向で、必要最低限の機能だけ残した結果なのでございますよ。この宮殿は」
ころころと笑うメリヤス。
この部屋、居間と食堂にはほとんど物が置かれていない。壁にも、もちろん何も掛かっていない。
台所にはかろうじて食器棚や冷蔵庫のような物が置かれているが、本当に必要なものしか置いていない。
例えるならば引っ越したばかりの新築一軒家に机と椅子だけで生活してる感じである。
人の過ごす空間として、あまりに寂しすぎる、とも言えるだろう。
「アミュレッタ様というのは……」
「ルミエーラ王国現君主にしてネージュ様達のお母様ですわ。……本当は、基本帰れないので宮殿もいらないとアミュレッタ様はおっしゃっていて、それでは貴女様が本当にお辛い時に逃げる場所がありませんと、わたくしが頼み込んで作っていただいたんですよ」
「え、宮殿をですか!?」
「ええ、ですのでメリヤス宮殿とアミュレッタ様が名付けました。……わたくしは反対したのですがね?」
メリヤスは遠い昔を懐かしむように目を伏せた。
アミュレッタはルミエーラ王国の現君主。ならその夫は?
「あの、メリヤスさん。ネージュさん達のお父さんって――」
「お待たせしましたカワイイヨー!お食事が出来ましたわ!さあ!夕食にしましょう!」
快活なネージュの声にカワイの質問はかき消された。と同時に、ふわりと食欲を掻き立てる香りが鼻をくすぐる。
ことりと机に置かれた深皿の中には
「今夜はシッチュウですわ!」
「わぁいシチューだ!いいにおーい!ってそんな短時間でイモは煮えないだろ」
「え、チンレンジを使えば10分で柔らかくなりますわよ?」
「いくらナーロッパつっても持ち込んで良い概念と悪い概念の区別くらいつかなかったのか。電子レンジの開発者と今も改良を重ねる技術者に謝れ。そもそもシチューのイモをレンチンって「発音が違いましてよカワイイヨ!シッチュウ、ですわ。最後は伸ばしません!」
「最高にどっちでもいいわ。それよりシッチュウの作り方なんですけど」
カワイはネージュにシッチュウの調理方法について問いただそうとすると、食卓に凛とした声が響く。
「ネージュ、アイソレ、メリヤス、そしてネージュのご友人。シッチュウが冷めないうちに早く食べるとしよう」
声の主が両手に持った皿を机に置いていく。
輝く
「お客人、
当方はパルファ・ブラン・ルミエーラ。ルミエーラ王国第一王女です。……知っていたかな?」
「
はい、妹様方がお話されてたので、お名前だけは知っていました。あと友人ではないです」
「ふむ。では今日は貴殿に私達のことをもっと知ってもらえるよう、今日はネージュに負けないくらい話をするとしようか」
そう言ってウインクしてみせる第一王女に、思わずキュンとしたカワイは少し赤くなる。
「みんな席につきましたかー!私も料理を運び終えましたわ!
そしてカワイイヨのお隣に失礼いたしますわ!ではいただきますさせていただきますわ!」
「あはは。ネージュ、今日は一段と元気だね、愛しいよ」
「お料理している時もカワイイヨ様のことだけお話していましたからね。
よほど宮殿にお越しくださったことが嬉しかったのね……」
手を合わせ、全員で生命への感謝を捧げる。
さて、食べるか。とスプーンを手に持ちシッチュウを
「ところで、ばあやはつかぬことをお伺い致しますが。ネージュ様は川井様をこれからどうするおつもりなのですか?」
「もちろん責任を持ってセコンド、もとい
スプーンが白い湖に沈む。カワイは毒を盛られた第一被害者のように、息が止まった。すぐ吹き返した。
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