第10話 魔法使いとザマァ2

「で、犯人は誰なんですか?さっさと終わらせてください……しんどい」


 いつのまにかファイヤーマンズ・ギャリー俵抱きになっていたカワイイヨ!

 息も絶え絶えに、「早く推理しろ」と急かす!


「犯人はズバリ、オソイ様ですわ!」


 ネージュは肩に抱き上げたカワイイヨを丸太の如くぶん回し、その頭をオソイに突きつけた!

 オソイ、動揺!


「な……言いがかりはやめてほしいのです王女様!証拠はあるのですか!?」


「今すぐに出せる証拠はありません、なので推理で証明いたします!」


 耳まで赤いカワイイヨを指示棒の如く使い、両足でザマァを指す!


「ザマァ様は現在マッサージチェアでこのようにタプタプと訪れる死を待っておりますが、そもそも何故彼はここにいるのでしょうか。オソイ様?」


「ザマァ君は……ギルドでツイホーケイ君とパーティに戻る手続きをした後、時間かかりそうだからって一人でお風呂に入りにきてるって言ってたのです。というか!オソイが犯人って」「時に!ザマァ様は現在、全身の肉という肉をシバかれているだけなのでしょうか?どう思いますか、オソイ様?」


「どう……えっと、どういうことなのです……?」


 オソイ困惑!

 ネージュは肩にちっちゃいカワイイヨを担ぎ直し、机に置かれた牛乳瓶をその場の全員に見える様にかざす!


「否!ザマァ様はただ脂肪を絞っているだけにあらず!彼の体内には現在、この飲料が入っているのですわ!」


「『職業鑑定飲料リアクタンD』だねー。ウチの新製品!ザマァさんにも買って貰ったんだぁ♡

あ、ネージュ王女は後で無職ちゃんが飲んだ『職業鑑定飲料リアクタンD』の料金払ってくださーい♡」


「無職じゃ……ない……」


 朦朧とする意識の中、カワイイヨは薄々気づき始めていた!「これさっき飲んだ『職業鑑定飲料リアクタンD』に何か入ってたんじゃね?」遅い!遅すぎるぞカワイイヨ!


「そ……それがなんだっていうのです?犯人ってなんのことなのです?あんまり根拠のないことばかり言われると、オソイ泣くのですよ!?」


「――オソイ様、貴女はその『職業鑑定飲料リアクタンD』に細工を施しましたわね?」


「なのです!?」


 オソイ驚愕きょうがく!何を隠そう、心当たりしかない!


「やはりそうでしたわね、そしてその細工とは――ズバリ『銭湯にあるマッサージチェアにわざわざコインを入れて座りたくなる能力コード』!」


「『銭湯にあるマッサージチェアにわざわざコインを入れて座りたくなる能力コード』!?」


 オソイ混乱!そんな能力コードはかけた覚えがない!


「その細工によって……ザマァ様はマッサージチェアに座らざるを得なくなったのです!」


「う……」


「んー……?その細工によって何が起こるんだ?意味あんのか?パルファ妹」


「意味しかありませんわ。なぜならザマァ様が飲んだ『職業鑑定飲料リアクタンD』は!」


「……!?」


「そうですわよね、ライア様。貴女ともあろうお方が新製品を一本割高で売りつけた程度で満足するはずがない!」


 ネージュはライアに確認!

突然名指しされたライアは、新製品割高で売りつけて何か悪い?という顔をしながら説明!


「まあ、あたしがザマァさんに『職業鑑定飲料リアクタンD』を売りましたし、飲み終えた空き瓶も回収しましたから飲んでるんじゃないんですかねー。大体、十本前後?」


「ということなのですわ!つまり!いえ、やはり!此度の殺人計画、オソイ様の犯行ということになりますわね?」


「う……え……?」


 オソイはぷるぷると震える手でメガネをクイッとする!ダメージ!なぜか確実にダメージが入っている!


「大量の『職業鑑定飲料リアクタンD』を摂取後、哀れにも貴女の計略に引っかかったザマァ様はこのマッサージチェアで眠ることを余儀なくされました。

 そして、マシーンに贅肉ぜいにくをガッチリ挟まれ二度と立ち上がれなくなったザマァ様はこのまま――」


 ネージュはパァン!とザマァの腹より少し下のあたりを攻撃!


膀胱ぼうこうが破裂し、死に至るのですわ!!!」


 むちむちプリンセスの名推理が整う!驚愕きょうがくの真実!誰もが息を呑み、被害者の下腹部に目を注ぐ!

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