第6話 王国と異世界転移族1
無人露天風呂を出て一時間弱、適度に休憩を挟みつつ歩き続けた少女二人はルミエーラ王国唯一の入り口の前たどりつく。
「じゃーん!ここがお母様の治める
ルミエーラ王国――
世界に数多存在する国の中でも規模、文明水準ともに最大最高の
「長かった……徒歩以外に移動方法ないんですねこの世界」
「ありますが、この程度の距離ではまず使用しませんわね。我がルミエーラ王国民はたかだか一時間歩いたくらいでへばるほどヤワではありませんわ。何より歩き疲れた後のお風呂が最高に気持ち良いのではありませんか!」
「ゴリラか。1kg弱のゴング持ちながら風呂のために歩き回る温泉ゴリラの
露天風呂から王国に向かうまでの途中に、スクールバッグの中を適当な理由で何度も見られそうになったカワイは既に
そうでなくともこの黒髪は口が悪いことに定評があるが、特に本日は言い回しが最悪であった。
「ゴリラ……たしか貴女方の世界に存在するという一種族の呼称ですわよね。なんだかそのようにお伺いすると異世界転移族の皆様より、よっぽどイキモノとして優れているように聞こえますわね」
「ゴリラは確かにデカくて強いんで……タイマンならまあ、負けるんじゃないかと思います」
「デカくて強い……竜族のような種族なのでしょうか?」
「竜いるんだここ。うーん……例えるなら、もっと色黒でお腹が引き締まってる……ザマァさんみたいな……」
ゴリラ
白を基調とした街並み。建物の屋根や窓は群青色に塗られていているため、景観は白と青の美しいコントラストとなって見るものを魅了する。
さらに街の至る所に引かれた水路と、植えられている白い花々が圧倒的な清潔感を醸し出している。
カワイは思わず足を止め、そんな都市の中央にそびえ立つ巨大な城を見上げていた。
「……まあ、こうしてみると国はキレイでいいとこに見えますけど」
「そうでしょうとも!この国の水も、風も、人も――皆、愛すべき私たちの財産なのですわ。ですので私は探偵となり、この国を脅かす全ての謎を解き明かすのです!お父上のように!」
「父上?ってことは――」
「ネージュ様!ご無事のご帰還何よりであります!」
露出一つないことが逆に珍しい、
「お仕事お疲れ様ですわ。時に貴女様、この辺りでゴリラを見ませんでしたか?」
「違う、ザマァさんはゴリラじゃない」
「そうでしたわ!訂正いたします。色黒でスリムなザマァさんを見ませんでしたか?」
「違う、ゴリラはザマァさんじゃない」
「ああ申し訳ありません!再度訂正いたします。ザマァさんと、色白で細身の子供ゴリラを見ませんでしたか!?」
「違う、ゴリラの親子を探してるワケじゃない!」
「ツイホーケイ様とザマァ様ならつい先程お城に向かうところを見たであります!」
「なぜ通じる!!!」
「やはりギルドでしたわね。ありがとうございます!さあカワイイヨ!行きますわよ!」
「話聞いてた?城って言ってたぞ?」
オラウータンの如く、その怪力でカワイの手を引いてずんずんと城に歩き出すネージュ。自重の『じ』の字もこのプリンセスにはあるわけがない。
しかしながら、困惑する新人異世界転移族に気持ち程度の解説を挟むくらいはヒトの心はあるようで。
「あの城、
「うん???」
「
「なんで一つにした。ゴリラの知能でも、もう少し考えて環境ととのえるぞ。せめて浴場だけは分けようとかなかった?」
「それを分けるなんてとんでもありませんわ!ルミエーラ王国民にとって入浴とは食事と同義でしてよ!」
「抜くと死ぬってことか……」
「何はともあれ実際に見るのが一番早いと思いますわ!さあ行きますわよ!我が国が誇る最大の公衆浴場――セレニテ・ルマエへ!」
「……ん?あれ、ギルド」「さあセレニテ・ルマエへ!ゴーゴーですわ〜!」
ウッキウキなネージュはそのままカワイをセレニテ・ルマエへと引っ張っていった。
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