13
■
「……おい鷹一。さっきので何連戦目?」
「五戦目だな……」
鷹一は、
「鷹一さん、Aクラスを倒したEクラスだからか、注目されてますねえ」
鷹一は先程、教室の前で話しかけてきた生徒と試合をし、すぐさま殴り倒した。
そしてその後、鷹一のあまりの
さすがにもう無理と倒れ込んでいた。
「あのなあ! 戦後のボクサーじゃねえんだぞ! 一日に何連戦させんだ⁉」
鷹一がそう叫ぶと、紅音は思わず「でも、試練に立ち向かう鷹一さんも素敵ですよ?」と、倒れている鷹一のそばにしゃがみ込む。
連戦の噂が紅音のもとにも届き、彼女も駆けつけたのである。
「もう無理。さすがに無理。脳の奥が痒い。綿棒を限界越えるまで突っ込んだらかけるか?」
「死んじゃいますよ?」
「冷静に言わないで」
ため息混じりに言う鷹一の頬を撫でる紅音。
「まったく。いい加減、私のことをトレーナーにしてくれたらいいのに。こういうスケジュール管理も、トレーナーの仕事なんですから。どうせ鷹一さんは「売られた喧嘩を買わねえのは男じゃねえ」なんて言って、全部受けちゃうんだから」
そう言いながら撫でる紅音の手を、鷹一はなんとか払い除ける。
「トレーナーがいようが、誰からの挑戦でも受ける。それがオレだ」
「でもさ、鷹一。もうそろそろ、脳が焼き切れるんじゃねえか?」
それは、高レベルの能力を引き出した時もまた同じ。
いくら鷹一が、この五連戦で“
というより、ギアが
「ああ。さすがにもう、今日は無理だな……。鼻血出そう」
「あのですね、鷹一さん。そんなに連戦してたら、
「それがお前なのは怖いんだよッ! トレーナーってどういう仕事か言ってみろ!」
「それはもう、試合前の練習、スケジュール調整に、試合展開のアドバイス。血となり肉となる料理を作り。日常のお世話をし、その肉体を徹底的に管理するというのがトレーナーで……」
「お前にそれ言われると怖いんだよ! オレの
叫んで、一瞬深呼吸すると、鷹一は身を返して、地面を押して立ち上がろうとする。
だがさすがに、連戦が祟っているのか、腕が震えていた。
「お前、いつもボロボロになるんだな……」
天馬に起こしてもらい、鷹一は「いつもってほどじゃねえ」と舌打ちをする。
「怪我は……あんましてないみたいだな? んじゃ、しばらく休むだけでいいか」
天馬は、鷹一を持ち上げると、パイプ椅子に座らせた。
「おお、サンキュー」
「なあ、鷹一ぃ。トレーナー、つけた方がいいんじゃね?」
天馬の恐る恐るという言葉に、紅音はパッと顔を明るくする。
「おぉっ。飛騨さん、たまにはいいこと言いますねっ!」
「たまに、ってほど付き合いがあるわけじゃないだろ!? まだ二日目とかなんですけど!」
「もっと言ってください、もっと……!」
小さい声だが、天馬への
「オメーまでそんなこと言うのかよ! こえーんだよこの女! 俺のことエロい目で見てるもん。昨日、こいつの家でシャワー浴びてる時、背後にいつもより強い視線感じたし」
「みっ、見てませんけど!? 大体、脱衣所前までで我慢しました!」
「
「王ヶ城さん、女の子がここまで言われるの相当だよ?」
「違っ、違いますぅ〜! 私、
「聞きたくねえッ。お前がトレーナーになったら、スケベなことされそうでヤなんだよ」
「ひどい! 女の子に言っていい内容じゃないですよ⁉」
「だったら言われないように振る舞え。なあ天馬、腹減ったんだけどよぉ。飯食いに行かね?」
紅音の
「あれ、鷹一大丈夫なんか?」
「ああ。ちと疲れてるけど、もう歩ける」
「だったら、がっつり行きたくね? お前、今日五連戦したんだから、相当持ってるべ。奢ってよぉ~」
「お前だってオレに賭けたんだから、結構持ってるだろ?」
「いやぁ……」
目を逸らす天馬に、鷹一は「ギア出せお前ッ!」とジャブの要領で、彼の左腕を素早く掴んだ。
「ごめーんッ! 穴狙ったんだよぉ! 今回は全体的に鷹一のほうが
「なんて
「わ、私はしっかり鷹一さんに賭けましたよ!」
「それは、ありがとう。ハンバーガーが食いてえんだけど」
「だったら、私が作ります! 鷹一さんの血となり肉となるものは、私が!」
「そのフレーズ怖いんだよ! 普通にカフェテリア行こうぜ……」
そう言われて、肩を落とす紅音。
が、鷹一にとって、紅音は同じ屋根の下で暮らすだけの他人であるため、慮る理由もない。
なので、そんな紅音を無視しつつ、鷹一は
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