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「朝比奈鷹一。お前は、確かにEクラスにしてはいい
風間はそう言いながら、一歩踏み出した。
すでに“
鷹一の髪が“
鷹一は“
どちらにしても、今問題なのは“
解禁された“
「だが――僕が“
風間は、フェンシングの型を選んだ。
“
この二つの異能力を活かすのならば、その方が最適だと、風間は思っているのだろう。
それはつまり――風間にとって、慣れた
“
それだけ聞くと、なぜこの能力が
しかし、そもそも、操作する対象が増えると、それだけ脳に負担がかかる。
さらに言うなら、数は力だ。
それは――
全員が、使い手の発動させている
“
一人が使っているのなら“
少なくとも、普通の剣が届かない距離まで逃げれば、攻撃を受けることはないからだ。
しかし、複数人となると、間合いの管理は圧倒的に難易度が上がる。
自らの異能力を知っているからこその
それに、電車内では“
そういう意味でも、計算ずくだったのだ。
駅のホーム程度の広さがあれば、その集団戦を活かすことができる。
『四番線、発車いたします――』
電車の発車を告げるアナウンスが鳴る。
そして、鷹一は選択を迫られた。
電車に乗って逃げるか、それとも、ここで叩くか。
だが、鷹一はその内の一つを、即断で捨てた。
(逃げる――そんな弱い考え、オレがしてたまるかッ)
鷹一の脳内に、再び
『危険を避けようとか、リスクを避けようとか。そんな考えは捨てなさい。AAAはギャンブル。いざって時には、自殺するくらいの考えが必要な時もある』
鷹一は、その声に従い“
風間はきっと“
確かに、鷹一の“
が、それでも器用貧乏という評価から抜け出せないのは、圧倒的に
しかし、そんなもの、すでに対策してある。
鷹一の右拳に、どんどん“
布であろうと、量が増えれば重くなる。
鷹一はその拳で、思い切り
ガゴンッ! と鈍い音がして、
「“
だからこそ、重くなった拳も振りかざすことができるのだ。
鷹一は、叩き込まれた空間把握能力で、覚えた“
だが、それでもまだ、鷹一は未熟。
体が切り刻まれていき、全身がミキサーでかき混ぜられたかのように、どんどん傷が増えていく。
「ぐぅ……ッ!」
鷹一はまだ、自分が無傷で勝てるほどの力を持っているとは思っていない。
だが、これほどの手傷を負うとは思っていなかった。
出血多量の
しかし、それでも、風間をぶん殴って倒せるなら、安い代償だ。
もう一度、発奮のために、鷹一は“
だが――
そこに、風間は居なかった。
「なにぃッ!?」
思わず、鷹一は周囲を見る。
風間は、ドアが閉まる電車の中に乗っていた。
『あぁーッとぉ! 風間選手、電車に乗り込んでいるッ! 朝比奈選手は設定上、風間選手を狙う殺し屋です。電車に追いつけないと判断された段階で、任務失敗! 朝比奈選手の負けで試合終了となってしまいます!』
と、AI実況の声が脳内に響く。
「マジかよクソッ!!」
鷹一は周囲の“
電車がホームを抜けるまでに、倒せる人数ではない。
鷹一は、思わず舌打ちをする。
「とっておきたい、とっておき……だったんだがな」
ギアを操作し、鷹一は新たな
■
風間は、電車内で遠ざかっていくホームを見つめ、そして、鷹一が追ってこないのを確かめると、ため息を吐いて、椅子に腰を下ろした。
「やれやれ……朝比奈鷹一、苦戦させられた」
なぜあいつがEクラスなんだ?
と、首を傾げる。
が、どちらにしても、風間は勝った。
それが今、この時の事実である。
まさに今、この時だけがすべてだ。
過去に強かろうと、未来に強かろうと、今負けてしまうのならすべて関係ない。
仮に、鷹一がこれから先、
ここで風間に負けたという一敗は、彼の
一敗の価値は、それほど重いのだ。
だからこそ、誰だって負けたくない。
一敗は、百回勝たなくては取り返せないから。
その思いは、炎となって、さらなる力を呼び起こす。
かつての風間なら、“
しかし――、朝比奈鷹一という選手の存在が、彼を成長させた。
負けたくないという思いが、風間の眠れる才能を引き起こしたのだ。
「朝比奈鷹一……。お前に、敬意を払おう」
そう言って、風間は気づく。
AAAは、勝利が確定すれば、実況AIから勝利宣言が入り、そして控室へ自動転送される。
だというのに、まだ勝利宣言も転送も始まらない。
すでに鷹一がいるはずの駅は、遠く離れているというのに。
その事実に気づいた時、風間は立ち上がった。
まだ勝っていない。
まるで、気づくのを待っていたようなタイミングで、風間の乗る車両に、鷹一が乱暴にドアを開けて入ってきた。
血まみれの姿で、肩で息をして。
「はぁーッ……はぁーッ……!」
まるで、猛獣が喉を鳴らして威嚇するような息遣い。
鷹一は射抜くような眼差しで、風間を睨んだ。
「朝比奈、鷹一……ッ!」
「全力、出させてもらうぜ……ッ!」
鷹一は、ギアの画面を指先で叩いた。
そして眼の前に現れた三✕三のパネルの内、一つを殴る。
レイズタイムにて獲得した、新たな
「“
殴った瞬間、鷹一の全身が、
それは、暁龍衣が使っていない、鷹一の
相手の
どれだけ広い範囲にその効果を適用できるか。
脳に与える負荷と、どれだけ
である。
鷹一の纏った“
レベルにすると、Cがいいところである。
そんな、鷹一の“
(僕以上に、朝比奈がポイントを稼いでいる可能性はゼロではない――が)
風間は知っている。
“
エリートの、エリートたる所以。
それは、当然努力をしている、ということだ。
風間は、自らが使わないであろう
“
レベルC。
熱の無い炎。
しかし、炎の熱以外の性質を、炎以上に再現することができる。
純粋なエネルギーだ。
簡単にいうと、RPGで言う、
「こいつは、使いたくなかったよ」
鷹一は、そう呟いた。
「少なくとも、三年と
鷹一が拳を握ると、全身を包んでいた“
発生させていた炎を、一部にのみ集中させることで、より出力を引き上げているのだ。
「ま、まずいッ、“
その瞬間、再度発動させた“
「オレは、
そう言って鷹一は拳を突き出し、ぼうぼうと音を立てて背後へ噴射する“
その拳は、まだ“
そして“
そして、鷹一の全身を一本の槍へと変えた――。
倒せなくとも、数が売りの“
木偶で作った壁が、まさに木っ端微塵に吹き飛び、風間までの道を切り開く。
そして、全身を槍と化した鷹一の拳が、風間の腹に突き刺さった。
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