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電車内であるならば、
「バカなッ――!?」
風間は、鷹一の拳を躱すと同時に、大きく背をのけぞっている。それほどまでに体勢を自ら崩していたのなら、たとえどれほどの
問答無用で、体勢を崩す事ができる。
鷹一は、まるで眼の前から歩いてきた人間を避けるように一歩、風間へ向けて踏み出し、肩を掴んで、テコの原理で地面に向かって叩きつけるように投げた。
有名な柔道の技、大外刈りである。
「がっ……!」
背中を叩きつけられた風間の口から息が漏れた。
剣を使う武道の人間が、転がされてから使う技は、ほぼ存在しないと行っていい。
鷹一は素早く風間の肩口に膝を押し当て、剣を振るうことができないように押さえつける。
そして、“
一足早い勝ち名乗りが、鷹一の内心で行われる。
たが、それはまだまだ甘い鷹一の、早とちりにすぎない。
「
瞬間、風間の握っていた“
車両と車両をつなぐドアまで吹き飛ばされ、先程風間にしたように、鷹一の背もドアに叩きつけられる。
そして、鷹一の全身に、まるでナイフで切りつけられたような傷が刻まれていた。
とろりと血が流れその頬を赤く染めた。
「隠し玉か、クソッ」
そう悪態をつく鷹一、今ので仕留められなかったのは、正直言って痛手だ。
「まさか、Eクラス相手に、ここまでもつれ込むとはな……。とっておきたい、とっておきたったんだが」
“
だからこそ、鷹一を盾ごと吹っ飛ばすことができた。
そして、出力を全開にして放てば、周囲に台風にも匹敵するかまいたちを発生させることができる。が、それを使ってしまえば、一定時間刃を発生させることはできなくなってしまう。
だが、風間はそれを使わざるを得ないほどに追い詰められた。
とはいえ、そろそろ使っても問題のない時間だからこそ、取った行動ではあるのだが。
『さあ、両選手! レイズタイムが発動しました!』
鷹一と風間の脳内に、AIの実況音声が発生した。
AAAが他の格闘技と違うのは、選手が相対した時から五分経過する(あるいはハコによって指定されたタイミング)まで、
もちろん、最初に賭けたのを取り消すことはできないが、戦況次第で「勝ちそうだな」と思ったほうにも賭けることができるのだ。
そして、賭けられた分は、レイズポイントとして選手に配布される。
そのポイントは、試合終了後にファイトマネーに換金することができるが、試合中に使うこともできる。
風間は、ギアの画面をちらりと見る。
それに釣られるように、鷹一も画面を見た。
二人に配布されたポイントが表示されており、風間はニヤリと笑う。
「……十分なポイントが入ってるな」
鷹一も画面に入っているポイントを見ると、Cクラスの
実のところ、人間には
というより、多くの人間に同じ能力がある、というべきか。だからこそ、いくつもを同時に発動することができる。
しかし、一気にいくつもの能力を発動させれば、個々人の才能の
そんな
そのギアに、ポイントによる
最初に持ち込める
しかし、ポイントさえ稼ぐことができるのなら、
ここまでは、鷹一が押していた。
だが――風間の勝利に賭けた観客たちは、風間を負けさせまいと、一気に
結果――押していたはずの鷹一に、あまりポイントが入らないということになっているのだ。
つまり、今鷹一がやるべきことは、一つ。
「オレが
鷹一は“
だからこそ、鷹一は懐へ飛び込むことを選択。
自分が信じる拳で、風間を倒そうとしたのだ。
もちろん鷹一は、現在風間が“
が、
そこに、鷹一の甘さがあった。
風間はAクラスなのだ。
雑魚ではない。
風間は、鷹一が振りかぶった右拳を、横っ飛びで躱した。
電車内で、大げさなほどの大きな動き。
それは、風間が電車の外に飛び出すためだった。
「なっ……!」
風間は、体ごと窓に体当たりをすることで、外に出る。
本来であれば、外に叩きつけられるはずだったが、電車は少しずつそのスピードを落とし、駅に止まろうとしていたのだ。
そして――風間は駅のホームに、転がり落ちる。
遅れてしまった鷹一は、一瞬風間の脱出を見送るしかなく。
ギアを操作しながら、すぐさま同じように、駅へと飛び出すものの。
その時点で五秒ほどが経過していた。
走っていた電車から、風間に五秒遅れで飛び出したということは、少なく見積もっても、風間に到達するまで一〇秒はかかる。
あの一瞬で、一五秒稼がれた。
それはつまり――。
風間秀也、新たな
「チッ……」
駅のホームに降り立った鷹一は、思わず舌打ちをした。
遠く、一〇メートル近く離れている風間は、すでに
風間の右手に復活した“
そして、風間を守るように、一五人の鎧をまとった騎士達が立っていた。
あまりにも色濃く映し出された殺意に、鷹一の皮膚が泡立つ。
“
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