呼び水

「呼び水」


先日、この言葉の由来となるトラブルに対応しなければならない場面があったのですが、そこで初めてこの言葉はこれが由来なのかと感心したのです。


そのモノとは「井戸」です。


井戸といっても、時代劇でよく見る桶をするすると下ろして汲むようなそれではなく、また少し前の時代でよく見る手押し式のレトロ風情のモノでもなく……電気によってモーターを動かし、圧力で汲み上げる最近の井戸ですね。いずれ最近の井戸は全て圧力によって組み上げる方式なので、電動かそうでないかの違いでしかありませんが。


ですので、正確には井戸ではなく「ポンプ」ですね。


トラブルというのは、そのポンプが水を吸い上げなくなり水道水が出ない、というもの。トラブルの要因自体は様々あり、モーターやインペラ(羽根)の故障、単純に地下水が枯渇したなどがありますが、今回は「呼び水」が不足していたことに起因していたようです。


ポンプの原理は小学校の理科の授業で習っていると思います。圧力によって水を汲み上げるためには、ポンプ内で真空状態を作らなければなりません。この際、「呼び水」が何らかの原因により減ってしまい、水を吸い上げられなくなったことが水道水が出なくなった理由です。呼び水を追加したことによって、無事にトラブルは解決しました。


とまあここまで今回のテーマである「呼び水」エピソードについて話しましたが、本来であれば「呼び水」は、上記のように近代的な構造の井戸ポンプに用いられる固有名詞であったものだと思います。


ですから、それを慣用句的に「ある事柄をひきおこすきっかけ」の意として用いるのはおそらくそれ以降の話。つまり、この慣用句は、ここ100年そこそこで使われ始め、そして定着していった言葉だといえます。下記のページでは、手押し式ポンプの使用が大正時代から始まったと書いてありますので、まさしく100年そこそこといったところですね。


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kannzai「水にまつわる言葉」

https://www.kanzai.co.jp/database/mame65.html#:~:text=%E4%BA%95%E6%88%B8%E7%94%A8%E3%83%9D%E3%83%B3%E3%83%97%E3%81%8C%E8%A3%BD%E9%80%A0,%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E5%88%86%E3%81%8B%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82&text=%E3%80%8C%E8%AA%98%E3%81%84%E6%B0%B4%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%81%E4%BA%95%E6%88%B8,%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82

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ここで「呼び水 初出」を検索すると、コトバンクにその実

例があり、1951年がそのようになっています。思いのほか間が空いてますね。


なお、「呼び水」は「誘い水」ともいい、古語には隠語的に「誘う水」という言葉もあるそうです。


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誘ふ水

読み方:さそうみず

恋慕してくれる男のこと。小町の歌に、「わびぬれば身をうき草の根を絶えて、さそふ水あらば往なんとぞ思ふ」とある。


Weblio辞書「誘う水」https://www.weblio.jp/content/%E8%AA%98%E3%81%B5%E6%B0%B4

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今回はトラブルを発端にひとつの言葉を調べてみましたが、意外と歴史の浅い言葉でちょっと驚きですね。


また、業界用語が一般に広まって定着した言葉ってもちろんこれ以外にもたくさんあるので、ちょっと気にかけながら過ごしてみようと思います。

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