「ドカーンと一発！かまどきゃし」

これは、とある地方紙の朝刊のコラムで触れられていた交通安全標語です。

「かまどきゃし……？」という方のために少し解説すると、これは東北地方の方言で「破産する」という意味です。個人的には「かまどきゃし」よりも「かまどけぁす」のほうが耳馴染みのある言い方になっています。

「竈を返す」というのが語源らしいですが、「竈を返す」ことが文化的にどういった文脈で「破産」に繋がるのかというと、「竈を返す→竈で飯が食えなくなる＝一家路頭に迷う」ということらしいです。

で、この安全標語でなにを言いたいのかというと、「デカい事故、一発起こせば破産だぞ！」ということを言いたいらしいのですね。こっちのほうが安全標語っぽいのはさておき、くだんの標語は「ドカーンと一発！」という幸先の良さそうな言葉選びがいいですね(？？？)。

いかにも事故を起こしてしまったときのような「よくわからんがやっちまった感」が強めに押し出されていて個人的にツボです。

そして「かまどきゃし」のスピード感。「事故＝破産」という言葉の数式の完成度においては「E=mc²」ぐらい美しいのではないでしょうか。

もちろん交通事故に対する安全標語なので、間違っても逆に爽快感を与えてしまうようなものは失敗かと思うのですが、言葉そのものを吟味してみるとなかなかに味わい深い標語です。

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