三 その後の話
今夜も変わらず、わたしはこの岬に立って、見慣れた海の景色を眺めている……。
けっきょく、彼もどこかへ行ってしまった……やっぱり彼もこれまでの男達と一緒だ……。
最初に身を投げたのは、生前、結婚を誓い合っていたあの人と……様々な理由で双方の親兄弟から結婚を反対され、
これで、来世ではずっと一緒にいられる……わたし達はそう思っていた。
だけど、一緒に死んだからといって、幽霊になっても一緒にいられるとは限らないようだ……。
あの人と手を取り合って身を投げた後、気がつくとわたし一人がこの岬に取り残されていた。
いったいどこへ行ってしまったのか? いくら捜してもあの人の姿は見当たらない……。
死んだ身でもよくわからないが、あるいは〝成仏〟というものをしてしまったのかもしれない。
それからどれだけの長い時を、この岬で独り過ごしたのだろうか?
あれだけ強く抱いていた彼への愛もいつしか薄れ、わたしの心にはぽっかりと穴の空いたような淋しさだけが残った。
だから、その淋しさを埋めてくれる──あの人の代わりにわたしと一緒にいてくれる男をわたしはここでずっと待った。
でも、これまでにも幾人かの男がわたしの望みを聞き入れてくれたが、やっぱりみんな、あの人と同じにどこかへ行ってしまう……。
それでも、いつかはわたしとずっと一緒にいてくれる、そんな人が現れるかもしれない。
そうして淡い期待を抱きつつ、わたしは今夜もこの岬で、次の男が来るのを待っている……。
(岬の約束 了)
岬での約束 平中なごん @HiranakaNagon
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます