第070話 頻発する出動要請
次の日。
「なんだか、ご機嫌じゃない? どうしたのよ?」
美玲と共に学校に向かう途中で彼女が、隣からニュッと不思議そうに顔を覗き込んでくる。
「ふっふーん。よく聞いてくれました。これを見よ!!」
俺は待ってましたと言わんばかりにポケットからスマホを取り出し、これ見よがしに美玲の顔に近づけて見せびらかす。
「何よ、スマホじゃない。それがどうかしたの?」
しかし、なんでもない顔で返事をする美玲。
「何よ、スマホじゃない……じゃねぇよ!! スマホだぞ!! スマホ!! 俺は人生で初めてスマホというハイソサエティアイテムを手に入れたんだよ!! それをお前は一〇文字で済ませやがって。お前に優しさはないのか!!」
ちょっとずつ彼女の声真似をしながらツッコミを入れる。
俺がスマホはとても素晴らしい、美玲はそれが分からないというのか!?
「そんなの知らないわよ。そんなことより早く行かないと学校に遅れるわよ」
「お、おい、ちょっと待ってくれよ!!」
美玲は俺に構うことなく、そそくさと歩を進める。俺は慌てて彼女を追いかけた。
「ん?」
しかし、彼女は何かに気付いて唐突に立ち止まり、スクールバッグの外側の小ポケットからスマホを取り出した。
「はいもしもし、はい、はい、分かりました。すぐに向かいます」
電話がかかってきたらしく、二、三会話をしてすぐに通話を切る。
聞こえた話を限り何かあったらしい。
「陰陽師としての出動要請が出たわ。私は行かなきゃいけないから、シュウは先生に連絡しておいてちょうだい」
「俺は?」
妖が出た際に、その近隣にいる陰陽師には協会から出動要請が届く。妖は市民の命や生活に関わるため、別の事をしている場合、出動要請を優先しなければならない。
勿論その分の手当ても出るし、授業に関しては出席扱いになったりもするので、イケるなら生きたい。
「あんたは確かに強いけど、まだ最低ランクの陰陽師。要請があったのは第三級と二級の陰陽師だから必要ないわ。普通に学校に行きなさい」
「分かった。気を付けて行って来いよ」
要請が来てないなら仕方ないか。
俺は土蜘蛛の事を思い出し、少し心配しつつも送り出す。
「ふん。あんたなんかに心配されなくても分かってるわ」
美玲は少し不満そうに顔を背けるが、少し頬を赤くしてヒクヒクさせているので、満更でもなさそうだ。
「おう。それじゃあな」
「ええ」
別れの挨拶の後で美玲は身体強化をしてどこかに飛び跳ねていった。
「そういえば、あいつ俺のことを再会の時以来初めて名前で呼んだな?」
さっきは全く気が付かなかったが、今になって初めて違和感を覚えて思い返してみれば俺の名前を呼んでいた。
一体どういう風の吹き回しだろうな。
それを見送った俺は学校に向かい、先生に美玲のことを伝えていつものように授業を受けた。この時は全く気にしていなかったが、事態は徐々におかしな方向へと進んでいく。
「え? 今日もか?」
「うん。そうみたい。それじゃあね」
「ああ。気を付けてな」
それから徐々に出動要請が多くなり、二週間ほど経った頃にはほぼ毎日駆り出されるようになっていった。
「おいおい、大丈夫か?」
終いには目の下に凄いクマを作ってウチの前にやってきて心配になる。
「ええ。問題ないわ。昨日は夜通しだったから少し疲れているだけよ」
「あんまり無理するなよ。なんなら俺も力を貸すぞ」
俺の質問に首を縦に振り、なんでもない風にアピールする美玲。全然大丈夫そうには見えないので、俺の方が強いのは分かっているだろうから、いつでも頼るように言っておく。
「そうも言ってられないのよね。協力に関しては、そろそろシュウにも出動要請が出るかもしれないわ。その時に頑張ってちょうだい」
「分かった」
美玲との会話の数日後、俺にも電話が掛かってきて出動要請が掛かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます