第52話:勇者と旅の終わり
「魔王が、ひとを、おそい、ゆうしゃが、それに、たちむかう……そうして、あらそうことで、ひとは、ぶんめいをきずいてきた、それが、ぼくらの、やくめだった」
「知らねぇよそんなこと! いいからさっさと剣を持ちやがれ!」
震える手のせいでメナスは聖剣を落とし、ショウがそれを拾いまた持たせようとする。
それをどこか遠い出来事でもあるかのように見ながら、メナスは語り続ける。
「何百年かまえ、また、ぼくはめをさまして、魔王を、たおしにいった……でも、いなかった、いせかい、てんせいしゃが、たおした……そこから、なにかがおかしくなった」
「いいから! 黙ってろ! クソッ、止血を先にした方がいいのか!?」
必死な形相になりながらも、自分の服を破り傷だらけの身体を手当てしようとするショウを見て、メナスは微笑む。
「魔王が、いなくなってから、ぼくは、しねなく、なった……だから、ずっと、魔王を、さがしていた……ここにいるのも、魔王を、ふっかつ、させる、子が、ふういん、されて、いたからだ」
メナスは震えながらも聖剣を握る。
懐かしくも、それでいて何かに満足したかのような顔をしながら、聖剣を見つめる。
「……いままで、ずっと、なにかをまちがえてたきがする……けど、ようやく、それが、わかったんだ」
しっかりと剣を持たせようとするショウの手を握ったまま、メナスは聖剣を自らの身体に突き刺した。
「オイオイオイ馬鹿野郎なにトチ狂ったことしてんだよテメェ!」
ショウは急いで聖剣を引き抜こうと手に力を込めるが、突き刺さった剣は身体と一体化しているようにビクともせず、刀身の根元だけが折れてしまった。
「………ぼくが、魔王、だったんだ」
「メナスっ!」
メナスの身体は端から徐々に風化していき、塵となっていく。
アズールとパルマは涙ぐみながら、消え去りゆくメナスが零れないようにと抱きつく。
メナスは微笑みながら、彼女達の頭を頬で優しく撫でた。
「ここが、ぼくの、たびの、おわり、だったんだ……いままで、ありがとう、ぱるま、あずーる」
既にメナスの手足はなくなり、もはや上半身しか残っていない。
最後の力を振り絞るように、ショウの方を向く。
「さようなら……ぼくの……ゆう……しゃ………」
その一言を最期に、かつて勇者だったものは砂となり、風と共に消えてしまった。
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