第43話:名も無き者、エロトラップダンジョンに眠る
「マジでどうするよ、嫌だぞ俺は」
「はいっ! ショウ様ぁ、このキリエにお任せくださいぃ!」
「は? お前、トラップ解除とかできたか?」
「いえぇ、でもサキュバスなのでこういうのは得意なはずですぅ。 私がダンジョンのトラップを全て作動させて無力化しておくのでぇ、ショウ様は少し遅れてからどうぞぉ!」
そう言ってキリエが自信満々にダンジョンへと入っていった。
「5分、中、気絶する、賭ける」
「じゃあ俺ァ10分で」
「アンタら、もうちょっと信じてあげなさいよ」
「いや、あそこまでフラグ立ててたら無理だろうよ」
そして適当に時間を潰していると、ダンジョンから大きな悲鳴と共にキリエが出てきた。
何故か半裸で、身体のいたるところにピンク色のスライムが付着している。
「いやぁぁぁあああ! ムリムリムリ! ムリですあんの! なんですかアレはオカシイですよ!?」
「時間は3分……根性ねぇなオメェはよぉ!」
「ひいいぃぃん……すみませぇん……」
いやまぁそこまで期待してなかったからいいんだがな。
腐っても転生者が作ったダンジョンだ、そう簡単に攻略できる難易度じゃなかろうよ。
女は半泣きになってるキリエを慰め、タイロック替えの着替えを取り出して渡している。
「はぁ~しょうがねぇ、俺がなんとかしてやっか」
「え、今度はアンタが入るの? 中に興味津々なの?」
「んなわけねぇだろ、はっ倒すぞ女ァ!」
「じゃあどうするのよ」
「上からも無理、正面からも無理、なら下から行くしかねぇだろ」
「下って、地面でも掘ってくつもり?」
「いいや、ちょいと違う。 お前らダイダラボッチって知ってっか?」
俺は大きく深呼吸して山を掴む。
【万能戦闘技能】によって【怪力】などのスキルを最大まで発揮しているが山は動かない。
「これは武器これは武器これは武器これは武器………」
自分に暗示をかけるように呟く。
石ですら武器になるのだ、ならば山も武器になるはずだと。
何度も何度も、それが真実であると思い込むように。
そして【武器習熟】スキルの発動が発動した。
このスキルはどんな武器であろうとペナルティなく十全に扱えるようになるものだ。
そう……武器でさえあればどんなものであろうと、どれだけ重かろうと関係ないのだ。
「ドッセイリャオリャァァアアアアア!!」
そうして俺は山を持ち上げた。
「オラァ! テメェらさっさと下に潜りやがれ!」
そして全員が地面と山の下にできた隙間に潜ったのを確認してから、俺も下から支える体勢で潜る。
タイロックは窮屈そうにしているが、歩けるだけのスペースは十分にあるようだ。
あとは持ち上げたまま少しずつ手と一緒に前に進めば超えられるってやつだ。
「し……ショウ様ぁ、大丈夫ですかぁ……?」
「楽勝だわ! さっさと行け!」
チートで各スキルを最大限まで強化してるからこその芸当だが、うっかり手を滑らせて落とせば全員が潰されて圧死するなこりゃ。
そうして慎重に前へ前へと歩いて向こう側が見えてきた頃、後方から声が聞こえてきた。
「クソッ、あいつが揺れの正体か!? 殺せぇ!!」
どうやらダンジョン内にも待ち伏せがいたようだが、俺が持ち上げて揺らしたせいで入口から出てきてしまったらしい。
ただ、あまりにもタイミングが悪すぎた。
追っ手の奴らがこちらへ向けて全力疾走するが、それよりも速く俺たちはゴールに到着した。
つまり、もう山を持つ必要がねえ。
「ドラァ!!」
俺は両手を離し、山を地面に落とした。
「あっ――――――」
隙間から聞こえた潰れる音と断末魔が、山とその落下音に文字通り押し潰された。
十中八九、圧死しただろう。
「まぁ贅沢な墓標を立ててやったんだ、成仏しろや」
「墓標、エロトラップスケベダンジョンなんだけど」
恐らくどんな異世界であろうとも、エロトラップスケベダンジョンに押し潰されて殺された奴はいないだろうな。
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