第42話:ド淫乱エロトラップスケベダンジョン
挽肉になった不死身のバリアチート持ちだったモノを後にして、ひたすら南西へと歩を進める。
目的地が亡国ツァーカムだと分かってるのは楽でいいが、果たして追いつけるかどうか。
一度は首を取り戻したとはいえ、さっさと【俊足】のチート持ちをブチ殺しておけばよかったな。
「あんまり急がなくても大丈夫よ。 アングリムには確かに【俊足】のチートがあるけど、体力が多いわけじゃないもの」
「逃げ足だけはいっちょまえってか」
女がタイロックに担がれながら偉そうにご高説を垂れてやがる。
まぁ速いだけなどうとでもなる。
なんなら奴隷だけでもやれそうな気がするな。
「それよりも問題は山越えの方ね……」
女が心底嫌そうな顔をして遠くに見える山……というよりも切り立った壁のような景色を見て呟く。
「山にもなんか過去の転生者がやらかしたなんかがあんのかよ」
「……………」
だがおぶられてる女は何も言わない。
「おい、勿体ぶってねえでさっさと言えや」
女の顔面を掴み左右にシェイクするが、それでも喋らない。
「もしかして罠にハメようとしてんじゃねぇだろうな」
「それだけはないわ……まぁアングリムがあの山を越えてないのを祈ることね」
嫌な予感がしながらも戻る気も止まる気もないので、駆け足でさっさと山へと向かった。
そこはまるで切り立った崖のような急勾配であり、もはや壁といっても差し支えないレベルのものだ。
「これを登れってか、登山ってよりもロッククライミングだな」
「ちょっと、そっちからは超えられないわよ」
壁に手を掛けてさぁ登るかといったところで女が上ではなく横の方を指差した。
「過去の異世界転生者が国境防衛の為にアキレスの亀って防衛結界を張ったの。 簡単に仕組みを説明すると、いくら上に登っても登る度に体が半分縮んで登頂までの距離が一生縮まらないわ」
「そいつぁ相性最悪だな」
侵入者撃退用のゴーレムがいるとか野良ドラゴンが襲ってくるとかならブチのめして終わりだ。
そんで俺の【万能戦闘技能】があれば大体のトラップはゴリ押しで回避できるが、だからこそ、こういう類のトラップは無効化はできねえ。
ただひとつ疑問点がある。
どうして女がこの山のことを喋りたがらなかったかだ。
これくらい、別にどうってことねえだろ。
だが女が勝手に歩いていくので、それを考察する暇もない。
そして大きな横穴の前で女が立ち止まった。
どうやらここが正規ルートらしいが中に入らない。
「おい、さっさと進めよ。 それとも罠でもあんのか?」
「よく分かったわね、中には罠が山ほどあるわ」
「やっぱりかよ。 ってかよく素直に白状したな」
「別に言いたくなかっただけで、隠すつもりはなかったもの」
「どういう意味だそりゃ?」
女は大きく深呼吸し、そして意を決して答えた。
「ここがかの異世界転生者が作った、入る者全ての腰を砕き、快楽で正気を奪うド淫乱エロトラップスケベダンジョンよ」
…………あまりにも突拍子も無い単語が聞こえたせいで、周囲が静寂に包まれた。
「…………なんだって?」
「ここが! ド淫乱! エロトラップ! スケベダンジョンよ!!」
聞こえてないと思ったのか、今度は大声で叫びだした。
「一度言えば十分だわ! 何度も言うんじゃねぇよ!」
「だからアルフも言いたくなかったのよ!」
確かにこんなん言いたくないわな。
俺も聞き返したくなかったが。
「昔の馬鹿共はどうしてこんなもん作ったんだよクソッタレ!」
「領土防衛という点でだけ見れば優秀だからでしょ。 非殺傷だから間違って人が入っても死なない、敵も簡単に捕まえられる、人道的よね」
「侵入者を無差別にエロい目に遭わせるのは人道的じゃねぇだろ。 ぜってぇ作った奴の趣味だ」
セフィロト大陸にも異世界転生者が作ったダンジョンがあるが、こっちは難易度的にも別格だな。
マジで入りたくねぇぞこれ。
「そういやお前らはどうやってここを超えてんだよ、隠し通路でもあんのか?」
「刻印糸で洗脳されてれば何も感じないから普通に歩いて通り抜けてるわ」
まさかの力業かよ。
俺もニコポとナデポで洗脳はできるが、それやっても通れるのは女だけだから意味ねえんだよな。
「ちなみにダンジョンは上に30層昇ってから、そこから30層降りる仕組みになってるから走って突破っていうのも無理よ」
「クソみてぇなダンジョンだな!!」
おかげでチート野郎共もここで時間を浪費したとも言えるが、俺らがここで足止めされてちゃ意味がねえ。
「一応、全うな方法で罠を解除して進むことも可能よ。 ただし、ダンジョン内には催淫効果のあるガスで充満してるから徐々に集中力が削がれて、いずれ堕ちるんだけど」
「死ねよこのダンジョン作った奴!!」
いかん、もう死んでるんだった。
死んだら消滅しろよ、なんで負の遺産が残ってんだよ。
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