第40話:選択肢

「ショウ様、ご無事ですかぁ!?」

「当たり前ェだろ……と言いたいところだが、流石に無傷とはいかなかったな」


 刺された左肩をグルグルと回してみるが【自然治癒】スキルの効果もあり違和感は特に無い。

 とはいえ、あそこまで強いのは予想外だった。

 見たとこまだ力を隠し持ってるようで、中々に厄介そうな相手だ。


「……なんだか嬉しそうですねぇ」

「人の顔色伺ってんじゃねェよ。 んで、追跡失敗した言い訳は考えてあんのか?」

「うぅ……すみません、従士失格ですぅ……」


 キリエが小さい背をさらに縮こませて丸まったので頭を掴んで前を向かせる。


「オメーらは従士の前に俺の奴隷だろ、言われたことやってりゃいいんだよ」


 そしてそのまま頭をぐりんぐりんとまわしてから手を離してやる。

 こいつは何かあっても黙ってるせいで分かりにくいんだよなァ。

 そんで奴隷に気ぃ使うのもおかしなもんだからもう黙ってついてこいで通してる。

 で、もう1匹の方だが……。


「女に逃げられた奴、なんか言うことあるか?」

「まだ、負けてない、次、勝つ」


 こいつはこいつで威風堂々としすぎだ。

 取り敢えず罰として1発腹をブン殴っておく。


 そして最後に戦いに加わっていなかったあの女はというと、速さだけが取り得のバカにバラバラにされて殺された奴の死体を集めて、他の奴らと一緒に弔っていた。


「こんなことされても、他の奴らはリスタート教団に従うってのか」

「ええ、それしか生きる道がないもの」

「まぁ俺がぶっ潰すんだがな」

「そうね」


 女はそれだけ言い、住民の奴らと一緒に手を合わせて祈る。

 こういう奴らを見ると無性に歯がゆい。

 腹が減ったなら減ったと言えばいい、助けてほしいなら助けてと言えばいい。

 ただ黙っていればなんとかなるとでも思ってんのかこいつらは。


「あぁもう面倒くせぇなテメェらは! ここから北の海岸怪しい馬鹿がいる! ここで野垂れ死にしたくねぇ奴らはそいつに言ってセフィロト大陸に行け! 死にてぇ奴は知らん、ここでくたばって死ね!」


 そう言って俺はリスタート教団の奴らが逃げた方向へと足を進めた。

 タイロックとキリエがそれに続き、それから少し遅れて女が小走りで追いついてきた。


「ねぇ、良かったの?」

「知らねぇよ。 良いも悪いも選んだ奴次第だろ」


 少なくとも俺は選択肢を与えた。

 だから死ぬしかなかったって言い訳は使わせねえ。

 死ぬなら世界のせいにせず自分の選択で死ね。


 たとえ死んだとしても、瑕疵もなく死んだウチの親父殿よりかはマシな死に方だろうよ。


「ところで、あの男に全部任せてよかったの?」

「アイツは前に難民をまとめてた実績があるから大丈夫だよ」

「そうじゃなくて、勝手に丸投げした件についてよ」


 俺はしばらく考えてから答えた。


「まぁいいだろ、俺は困らねぇし」

「ショウ王よりも、あんたの首を取ってた方が世界の為になってたかもしれないわね」

「俺の首は世界を狙える逸材ってことか」

「照準をつけて発射するって意味での狙うだけどね」

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