第20話:よくできたで賞
大多数の魔物は呪文士達によって火達磨になったものの、それでも勢いをそのままに突撃してくる魔物が迫る。
その呪文士が後方へ下がり、その群れを重装の歩兵が受け止めた。
≪ウォォオオオオオ!!≫
魔物と騎士の咆哮が響き渡る戦場を少し小高い丘の陣地から眺める。
しっかりと抑え込めているように見えるが、やはり新人の所が押し込まれ気味だ。
つまり俺が爽快に登場し、一気に押し帰すという絶好な英雄的シチュエーションである。
「ッカー! 右翼の第3部隊がやべーなぁ! これは俺が行かねぇと駄目だなこりゃあ!」
「分かった、タイロック、行く」
「は? ちょっ、待ちやがれクソッ!」
重い腰をあげてさぁいざというタイミングであの馬鹿が跳躍して押し込まれている場所へと着地した。
≪オオオオォォ! タイロック殿の援軍だぞ!≫
大槍の横薙ぎによって周囲の魔物が一斉に蹴散らされ、周囲の奴らがタイロックを称賛した。
「あの馬鹿、俺の見せ場を奪いやがって!……いや、今度は左翼側が―――」
「じゃあ行ってきますねぇ」
「おい馬鹿! 勝手に行くんじゃねぇ!」
そしてまた俺が行こうとする瞬間にキリエが飛び出していき、二刀のマインゴーシュで窮地を救ってしまった。
それからも騎士がピンチに陥る度に奴隷共が頑張ったことで、死者どころか負傷者すら出ずに、戦闘は圧勝という形で終わってしまった。
そして城に戻って来た俺たちにはお褒めの言葉とやらが贈られることになった。
「従士タイロック、並びに従士キリエ。 両者の奮闘を称え、ここにティファレトの矛、そして護剣の称号を授ける」
そして親父殿が一つ咳払い。
「騎士団の後ろから的確な指示を出して前線の崩壊を止めていたショウには、このよくできたで賞の判子を上げよう」
「なめてんのかこのコノヤロォォオオオ!!!」
手の甲に花丸をつけた判子を叩き落し、俺は城中に響き渡るくらいの声をあげた。
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