第20話 面倒な事は一気に片づけるに限る
窓口で払戻金を受けとる俺たち。ちらっと罪悪感を覚えるが実際にこれはチートだから悪いのだ。2つの札束と+αに震える我々は小物だ。借金を全部返してもそこそこ残るのはかなり嬉しい。
「さっさと返済しに行こう」
危ない目の色になっている叔父さんを促して直ちにサラ金に行くことにする。いやちょっと待ってなどと言うので腹パンで黙らせておく。高利の借金の返済より優先される用途がある筈がない。
果たしてこのおっさんの借金は200万より少し多かった。その上家賃を家賃を滞納していることも発覚したのでさっさと支払わせた。加えて光熱費も滞納していたの直ちに支払わせる。結果、払戻金は10万円も残らなかった。
「この段ボールどうしようか」
ゴミだし邪魔だし捨ててもよかったのだが、半ば罰を与える意味でずっと持たせていた。
「まとめてヤフオクに出して、少しでも回収しなよ。お金もないしな!」
残金を没収して、生活費としていくらか渡した。
「もうちょっとなんとかならないか」
などと言うので尻を蹴とばしておく。
「金銭感覚バグりすぎだろ。大金借りて気が大きくなっちまうのもわからなくもないけどさ。本来、叔父さんは破綻してたんだからな。反省しろよマジで」
「ごめん・・・」
ここできっちり修正しておかないと使えないからな。叔父さんの家に行き、ニューカキンの退会手続きにも手を付けさせた。大量の商品もその場で出品させる。
雑務が片付いた頃にはすっかり日が暮れていた。今日は両親が不在なので、晩御飯を食べに行くことにする。場所は思い出のガストである。
「なんでここなんだよ・・・」
もちろん嫌がらせだ。安くて腹が膨れるメニューをパパっと注文する俺を見て、叔父さんは複雑な顔をしている。
「本当に大人なんだなぁ」
「そこで実感するのかよ」
「さみしい独身男のオーラがでてるぞ」
ぐぬぬ、ばれてしまった。悔しい。
「叔父さんなんて童貞だろ」
「ど、どどどどど」
「あの偽ブランド女への態度でバレバレだっつの」
「彼女の話はヤメロヨ」
ん?妙な反応だな。
「ふられたの?」
「いや・・・三好と付き合ってた」
そう言ってあの後の事をポツポツと話し始めた。
やはり、あの女に惚れてネットワークビジネスにのめり込んでしまったらしい。しかし、何度か会ううちに三好との仲に気づいてしまったのだ。三角関係であぶれるのは辛いものだ。だって、
「あいつら俺が金子さんに気があるのを知ってて隠してたんだ。絶対、陰で笑ったり蔑んでたりしたろ!」
どうしたって惨めだからね。
「時々、三好のやつが妙にニヤニヤしてると思ってたんだ」
その敗北感たるや・・・一人で勘違いして舞い上がって好意ありますアピールしていただけならまだしも、それを相手の彼氏に見られており、しかもその彼氏が自分の友人なのだ。こっそり送った痛いメールなんかも間違いなく見られているだろう。そしてそれを肴に色々盛り上がったに違いない。死にたくなるのが道理というものだ。
「俺だってそれぐらいの経験はある。気持ちはよくわかるぜ叔父さん」
俺たちは無言で見つめあい、がっちりと握手をした。アホなことをしていると、安くて腹が膨れるセットがやってきたので手を付ける。
とにかくそんなわけで一晩泣いて冷静になり、大変な状況になっていることに気づいたらしい。
「まあ翔のおかげで助かったよ」
借金を運よく返せたのは良かったが、マルチカップルにやられっぱなしなのは悔しい。とくに叔父さんの恋心を弄ばれたのに腹が立つ。もちろん、過去(未来?)の自分を重ね合わせて感情移入しているのである。
「やられっぱなしってのもなぁ・・・」
「いや、あの時お前が帰った後、大荒れだったんだぜ。充分やり返したろ」
何を言う。本来は200万以上の借金が残っているところなんだぞ。どうやって仕返しをしようかと考えていると、金子と三好と童貞っぽいカモが入店してきた。
「今日は本当にタイミングが良い日だなぁ」
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