第13話 孤高の美少女ってだけで近寄りがたいものがある

 翌日である。


 いつも通り登校して、三谷と一井はどうなったかなと思っていると、それほど変わった様子もなくやってきた。俺の姿を見つけると二人とも顔をそむけるが、なんとなくふてぶてしさを感じる様だった。やはり次もあるのかと気が重くなる。しかし、証拠物件をわかりやすい場所に置いてきたので、仮に彼らの保護者が現場にやってきていたならそれなりに大事になった筈だ。更に、仮に彼らが言い逃れをしたとしてもそれなりに家族関係にヒビが入ったのではないだろうか。あ、更生しなさそうな方に追い込んでしまったかもしれない。失敗したのかもしれない。まぁ仮の話だ。


 山田は普段通り、というかここ最近の落ち込みぶりを思えば元気そうな様子だったので安心した。太田はまあ平常運転である。だが、この二人が面倒な申し出をしてきたのだ。

「やっぱり長瀬に謝りたいんだけど」

 昨日の事件に思うところがあったのだろうか。わからない。その長瀬はというと、これも普段通りに一人で過ごしていた。元々友人が少ないタイプだったのかもしれない。以前よりゆったりとした様子で本を読んでいたりするので過ごしやすくはなったのだろうと思う。

「アニキに取り持って欲しいんだけど・・・」


 俺だって彼女には話しかけ辛いのだ。いじめの事がなくとも、孤高の美少女ってだけで近寄りがたいものがある。とはいえ乗りかかった舟という奴である。昼休みに突撃することにした。


 明後日の方を向きつつ、微妙に迂回しながら長瀬の席を目指す。自席で本を読む長瀬に声をかけた。

「あのー」

 驚いたように俺を見上げる長瀬。ごめんなさいね。

「ちょっと頼みがあるんだけど・・・」

 なんやねん?言わんばかりの怪訝顔である。本当にごめんなさいね。

「山田と太田が君に謝罪したいと言っているので、えっと、少しお時間を頂きたいのですが・・・」

 思わず敬語になってしまった。

「嫌だけど?」

 そうですよね、クズどもに与える時間などありませんよね。しかし、ちょっとぐらい交渉しないと大人として恰好がつかない。

「そうだよね!嫌だよね。それはわかってるんだけど、ほんのちょっとでいいからあのアホどもに時間を貰えないだろうか」

 無言の拒否がかえってくる。

「絶対に変な真似はさせないし、ムカついたら(太田を)殴ってもいいよ。別に許さなくてもいいし君の安全と安心は100%保障します」

 斜め45°の良いお辞儀を決めてみる。

「やっぱり駄目かなぁ?」


 駄目っぽい。まあ無理強いは出来ないし諦めるか。あいつらは毎日、長瀬家の方角に祈りを捧げたらいいんだ。

「放課後ならいいけど」

 長瀬がポツリと言った。いいんですか!?ありがとうございます!と直角にお辞儀をしそうになるのを堪える。

「ありがとう!マジでごめんね。放課後また声をかけるのでよろしくお願いします」

 ホンマにすんまへんとペコペコしながら席に戻り、太田の尻を蹴とばしておく。また体育館の裏かなぁ。

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