第12話 通報しました。

「あたしは、こいつらに呼び出されたの」

 山田が相田と尾井を指さす。完全に空気だったなこいつら。

「そしたら、三谷と一井がいて、あたしの手を縛ったんだけど」

 解けた紐が絡みついた両手を俺に見せる。

「全然縛れてなかったのね。でも、この子達は怖くなっちゃったみたいで・・・」

「あたしたちは山田を呼び出せって言われただけだし!」

 相田が言う。

「人質にするとか意味わかんないし!」

 尾井が被せるように言う。そしてサンピンコンビを指さす。

「こいつら無茶苦茶で、マジで引くわ!」

 は?お前らも逃げさねーよ?と冷たい目で睨みつけ、鉄骨をガンしておく。二人がビクッと目を伏せたので心の中で二コリと笑う。

「あーーそれでね、逃げようと思ったらいつでも逃げられたんだけど、時尾を呼び出すとか言ってたから様子を見てたのよ」

 山田は意外と余裕だったらしい、ちょっと俺を気遣う程に。

「ふーん、事情はわかったけど・・・」

 三谷と一井を睨みつける。

「で、お前らはどうするの?」

 興奮状態から冷めた一井は俯いている。三谷が応えた。

「は?どうするって何がだよ」

「拉致監禁っつう重罪を犯してまで俺たちをボコりたかったんじゃないの?」

 鉄骨をガンする。ちょっと楽しい。

「もういいのか?」

「・・・・・・」

「大変な犯罪をやっちまったわけだけど、お前らどうなるんだろうね?」

「・・・・・・」

「まあ既に通報してあるわけだが」

「ちょ!」

 無言で空気のようになってた4人が飛び上がるように動いたので笑ってしまう。

「ははは。まあ警察じゃなくてお前らの家に電話したんだけどね。お宅の息子が拉致監禁してますよって。ははは」

「はぁ?親に言うのは卑怯だろ!?」

「何が卑怯だよ。子供の不始末は親の責任だろうが」

 女子どもに視線も向ける。

「お前らがいるのは知らなかったから、お前らの家には電話してねーよ。ラッキーだったな」

 相田と尾井がほっとしたような表情を見せるが、

「まあそろそろ三谷か一井の家のモンが来るんじゃないか?結局は明るみになると思うけどね」

 やはり絶望に染まる。しかし、二人で数舜、目と目で意思疎通をしたようだった。

「うちらマジで反省してるしホントごめん。ここまでやると思ってなかったし三谷と一井マジ最悪。腕を縛った時点でドン引きだったしありえないって思ったのはホントだから。今から心を入れ替えるから本当にすみませんでした許してください」

 早口で一気に言い切り、また二人で顔を合わせた後、キレイな土下座を決めた。

『グッドポイントを2獲得しました』

 土下座でゲットかよ。

『あと1で10ポイントです』

 10になったらどうなるのよ。

「そういうわけだからホントごめん。じゃあ、うちらもう帰るから。また明日学校でね」

 2重の意味で茫然となった俺を残してササっと消えていく二人だった。女は切り替えが早いなぁ。

「いいのか?」

 山田に言った。

「まあいいんじゃない?」

 あきれ顔で言ったので、もうよいことにする。ポイントも貰ったしね。

「お前らはどうするの?」

 動揺してもたもたしているサンピンに言った。この状況で保護者がやってきたら面倒だなぁと思ったのだ。こいつらが逃げたら俺もさっさと立ち去ろうと考えた。山田が平気そうだからここで切り上げたい。

「ばっくれようぜ!」

 しばらく考えて三谷が言った。一井が頷いて応える。

「覚えてろよ!」

 と捨て台詞を残して猛ダッシュで去っていった。まだ続きがあるのか。

「じゃあ俺たちも逃げるか」

「ほんとに連絡したの?」

「当たり前だろ」

「・・・容赦ないわね・・・」

「アニキ・・・」

 子供というのは親に言いつける事に忌避感があるのだ。

「いや、親にチクってはいけないというのは根拠のない思い込みだよ。小学生は社会的に独立した責任ある立場では、まだないんだ」

 一井の十徳ナイフを見つけやすいところに蹴りだして、速やかに移動する。今回、俺は大して悪いことはしていない。全てが明るみになってもさほど問題にはならないだろう。気楽な心持ちで帰路につくのであった。

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