第4話 勢いで馬鹿な事をしてしまった自分の動画を無理やり見せられる羞恥プレイ
学校が終わり、逃げるように学校を出た。さて気になるのはグッドポイントの事である。善い行いに応じて付与されるという推測を確認するために、善行を積みながら下校したのだった。
簡単な事から始める。手当たり次第に落ちているゴミを拾ってゴミ箱に捨てていった。メッセージは出ない。
ゴミつながりでゴミをポイ捨てしている子供を見つけて注意する。無反応。
信号待ちをしているヨレヨレの老人の手を引いて信号を渡ってみる。結構感謝されたが無反応。
いやダメじゃねえか。老人を助けるのは結構勇気がいったんだがなぁ。偽善じゃダメなのかな?検証は続けるとして、例の制裁は明日決行予定である。準備を進めなくてはならない。
日付が変わり、翌日である。人目につかないようコソコソと仕掛けをするのは思っていた以上に骨が折れた。学校に夜中に忍びこむのが大変だった。時は2001年。まだそこまでセキュリティ意識が高くないのが幸いだった。
決行予定のホームルームの時間がきた。それなりに隠ぺいしてあるが、バレたら大問題になるだろう。流石に緊張する。鼓動が早まり手に汗がにじんだ。
「みなさんさようなら」
ホームルームが終了する瞬間を狙って、手元のリモコンのスイッチを押す。先ず教室のテレビをつける。更に同じく学校の備品であるDVDプレイヤーを再生させる。この仕掛けの為に結構散財したのである。小学生には痛い出費だった。
流れる映像は長瀬へのイジメを俺が隠し撮りし、30秒程の長さに良い感じに編集したDVDビデオだ。今の時代ではまだ大変高価であるDVD-Rで作ったものだ。
イジメ現場の全景から、山田にズームし、その邪悪かつ醜悪な笑顔がしばらく流れる。
突拍子のない出来事に皆放心している。ここまでは狙い通りだ。イジメに参加しているものが一人一人アップになる。
放心していた担任が動いた。
「何よこれ!?」
慌ててテレビに駆け寄りリモコンを手に取る。当然電池は抜いてある。
「動かないわ」
時間稼ぎの為に置いてあったのだ。必死こいてリモコンを操作するのを見てニチャァと笑う俺。
次にテレビを直接操作しようとするが、残念ながらコントロールパネルにはプラスチックのカバーをつけておいた。両面テープで付けてあるだけなので、冷静になれば簡単に剥がせるが、しばらくは気づかないだろう。尚、コンセントにも同様にカバーをつけてある。
「スイッチがない!?」
「コンセントもない!?」
アホかこいつと腹の中で笑っていると、ラストシーンだ。太田のスケベ面のアップ。昨日撮ったばかりの最新映像だ。酷い顔だよコレは…
再生が終了したので俺の汎用リモコンで電源を切っておく。
『グッドポイントを5獲得しました』
多いな!
予想外のポイント獲得に俺が茫然としてしまった。が、今は周りの反応を確認しておくべきだろう。山田は顔を伏せて震えていた。山田の取り巻きは「なによこれ!」「どういこと!?」などと盛り上がっていた。長瀬は怪訝そうな表情をしている。
「俺らテレビに写ってたよな!」と、何故か少し嬉しそうな太田である。意外と悪い奴じゃないのかもしれない。
クラス中が大騒ぎする中、隣からベテラン教師がやってくる。
「何の騒ぎですか?!」
担任のBBAがしどろもどろに説明している。
証拠品が手元にある俺としては速やかに帰りたいところである。騒ぎもひと段落し、クラスメイトの半分ほどは帰りたくてそわそわし出した。
「帰ろうぜ」
俺は独り言を吐いて席を立ち教室の出口に向かう。こういう時は最初の一人になってやれば、堰を切ったように皆動くものである。教師たちは一斉に教室を出る子供たちを引き留めるか悩んだようだが、決断できずに見送った。
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