第2話 3人の会話
時は前後して、恵一が初講義に出る前日。
一年生の入学式が終わった日の午後。
キャンパスが連なる大学で、一番奥にある建物。
サークル活動をしている学生たちが、汗をかいて練習している。
そんな場所の奥にある、薄暗い部屋。
普段は誰も人が通らない、物置のような場所。講義が開いたコマの時間を利用して3人の人物が話していた。
物置にしまってある跳び箱に座って、各自持ってきたお菓子やジュースを口にしながら──。
「入学式終わったね。今日の転校生、どう思う? 男の子、入ってきたでしょ?」
「う~~ん。中の上って感じ。悪くはないんだけど、ちょっと地味かな~~。まあ、白いシャツで茶色いズボンの子? 好みじゃないけど、あれが最低点ってくらいかな? 正直それでも微妙って感じ?」
唇に人差し指を当てながら考えているのは、小柄で金髪で巻髪をしている女の子。
ギャルの外見をしている派手な外見。2年生の桜上彩紗さくらがみあやさ。肩と人一倍大きな胸元が見えているピンクのワンピースは、本人のずぼらな性格ゆえ着崩れしていて、下は太ももがほとんど丸出しのタンクトップ。男の視線を集めるような刺激的な格好。
「ああ、真面目そうな子やね~~」
「真面目君だね。でも堅そう」
「まあ、あんさんみたいな単位ギリギリで卒業を狙う講師泣かせとは違うタイプということはたしかやなあ──」
京都弁っぽい言葉を使い言葉を返したのは、彩紗と同じくらいの155cmくらいの身長。水色のニットに白のロングスカート。首までかかったふわふわなクリーム色の髪型。上品な女性という印象をしている。
眼鏡をかけて、ほんわかした雰囲気の女の子。楓川翠かえでかわみどり
「なんだ、嫌味か! コスパ良く講義に出ていると言え」
宙に浮いている足をぶらぶらさせながら、ぶーたれている。
「んなわけないでしょ。あんた、テストで点取れなくて単位落とすわよ」
肩までかかったストレートの黒髪。すらっとしたスレンダーな体系に、白いシャツとGパン。
ちょっと釣り目で、大人びた顔つき。
腰に手を当て、冷静に言葉を返しているのは2人の同級生であり親友の梅咲いろは。
大学ではまじめな優等生という印象で、品行方正な女性として周囲からの評価も高く尊敬されている。
調子に乗りがちな彩紗の突っ込み役やブレーキを掛けたりすることが多い。
いろはの方も、友達ということと同時に自分がいなければ彩紗が悪い方向に行ってしまうという使命感で彼女に接しているという感覚で接している側面もある。
「もっとさ、背がモデルみたいな体格でスラっとして、金髪のイケメンがよかった~~」
顔を膨らませて、不満そうにぶー垂れる彩紗。
おっとりとした性格の翠は、にこっとした笑顔で彩紗に言葉を返す。
「まあまあ、まだ付き合ったってわけじゃわからんし、どんな人か知っとくのも
ええんちゃう? 意外とオラオラ系かもしれへんで」
彩紗は話を聞きながら、大好物の小豆トーストのパンを口に入れながら言葉を返した。
「ふぁあ、せっふぁふのふぃはいなんふぁしふぃふぉふぃふぉやっへひふほ」
「こらこら、食べ物食べながらしゃべらんといて──。せっかくのべっぴんさんが台無しやわ」
「そうよ。お行儀が悪いわ」
いろははこつんと軽く彩紗の頭をたたいた。
彩紗はすぐに小豆トーストパンを咀嚼して飲み込む。ミルクティーを一口飲んだ後両手を腰に当て、かごから立ち上がった。
立ち上がった瞬間、Gカップある豊かな胸が、ピンクのワンピースごしにプルンと揺れる。小柄で小麦色の肌、だらしない性格で女子だけということもあり着崩れした状態ということもありとってもエロく見える。
「ったくもう。いくら女子だけだからってだらしなさすぎ。そんなんじゃいい男が逃げるわよ」
「逆だっつの、こっちの方が男が寄ってくるじゃん!」
その言葉にいろはが、大きくため息をついた。それから、ジト目で彩紗をじっと見つめる。
「何その目」
「あんた、外見だけで人を選んでいるといつかしっぺがえしが来るわよ。それに、それでよって来る男なんて性欲目的のロクな奴じゃないわ」
「なんだよ。外見だけでも人ってわかること多いんだよ。それに男なんてみんなそうだろ? それが目的なんだから。男なんて。な、いろは」
彩紗はぶーぶーと文句を垂れる。いろははうっと何かが気付いたかのように、一瞬だけ表情が引き締まる。
「確かに、そういう人がいるってことは認めるわぁ」
「でも、確かに彩紗の言う通りかもね。別ににさア、今までは女の子たちだけでやってきたわけだし、無理に男と一緒にいる必要ないんだよね……」
「あーそれわかる。女だけだったら暑いときシャツまくって下敷きでおなかパタパタやっても誰も怒らないみたいな?」
「お行儀わるいわ~~、でも男の子がいると気ぃ使ってしまうのは確かやな~~」
いろはは二人をじっと見て、しみじみと言う。
「まあ、同性だけの方が気楽に要られるっていうのは否定しないわ」
「そやけどなあ──社会に出たら嫌でも男の人と接しなかいけないんやで」
「まあ、そうなんだけどさぁ~~いまま女の子だけの大学でも、楽しくいれるじゃん。やっぱり、気楽になれるし。二人ともそう思うだろ?」
「あんたは講義さぼり気味でしょう。このままじゃ留年するわよ。まあ、私はいなきゃいないでうまく過ごす。それだけだわ」
「つまり、いろはは男より同性が好きってこと? あら^~~」
茶化すように、彩花が言う。
「それは翠のことでしょう?」
「そんなことないで。心臓にズキン! とくる男の人が目の前に現れないだけや──」
翠はあわあわと手を振ってこたえる。
「翠、お前意外と男を見る目が厳しいんだな。優しくて、告白されたらコロッと行っちゃうタイプだと思ったぜ。飛び上がって舞い上がってそう
翠は意外そうな表情で、ジト目で翠を見つめた。
「もう~~、変な目で見るのやめ~や。まあ、もし好きって言われたら嬉しくて飛び上がるのは否定せえへんけどなあ」
「じゃあ、告られたら付き合っちゃうの?」
「それは、相手次第や。それより今は彩紗はんや。どうする、行ってみるん?」
「どうしようかね──ああ啖呵切っちゃったけど、ほかにめぼしい奴いないし~~」
彩紗は不満そうにつぶやいて大きくため息をついた。
「まあどうせほかに目ぼしい子がおるわけでもないんやし、仲良くといてしといて損はないと思うでー」
「わかったよ。声かけて見るよ、見ればいいんだろ」
まどかは、チャイムに気付いてスマホの画面に視線を向けた。
「やば、休憩時間に入った。次の講義、出るんでしょ。早くいきましょ」
「私はいーや。まださぼっても大丈夫だろ」
ぶーぶーと不満そうに言葉を返す。ふてくされてそうな態度に優等生のまどかは彩花のほっぺを軽くつねった。
「いててててて。ふぁふぁったふぁふぁった」
「駄目よあんた。そろそろ出席しないと単位やばいわよ!」
「わかったよ。出りゃあいいんだろ出りゃあ」
つねられたほっぺを抑え、彩花は不機嫌そうな口調で言葉を返した。
「じゃあ、行くで~~」
いずれも大学2年生。1年生のころから、3人は講義に出たり一緒にだべったり遊んだりしていた親友ともいえる存在だった。
時には言い争ったりすることもある、本音を言い合える仲。
翠とまどかが立ち上がると、彩花もそれに合わせていやいやながらに重い腰を上げる。
そして、講義のある部屋へと移動していった。
3人とも、何もない人生を過ごしてきたわけではなかった。それぞれに喜び、悲しみ。そしてドラマがあり、今に至っている。
そして、これからも──。
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