第12話
「ぶっぅぅぅ!」
いきなりとんでもないことを言い出したため、飲んでいたお茶を吹き出しそうになってしまった。
「え…図星ってこと!?」
「いや違うって!急にお前が変なこと言いだしたからだろ。なんで俺が知り合って間もない女と付き合わなきゃならんの!?」
これだからビッチの考えることは…。すぐにそうやって付き合うだの言いだしちゃう。頭お花畑なのだろうか。
「いや違うなら良いんだ!ごめん変なこと聞いちゃって…。」
「まぁ、別にいいけど。」
シフトでも愚痴でもない話題が彼女がら出るとは意外だった。転校生が来て咲良も舞い上がっているのだろう。
「界人、何の話をしてるんですか?」
「うわぁ!」
急に背後から声を掛けられて普段出さないような声を上げてしまう。それは咲良も同じだったようで俺同様に驚いている。
「急にどうしたんだよ。クラスメイトに質問攻めに遭ってたんじゃなかったか?」
「抜け出してきたんですよ!誰かさんが助けてくれないから大変でした。」
そう言ってぎろっと俺を睨んでくる。
「いや別にそんなに怒らないでも…。それでわざわざどうしたんだ?」
今は授業間の休み時間だ。校内を案内するにしては時間が短い。
「あのぅ、そのですね…。」
「なんだよ、もじもじして。」
ノエルは短いスカートから出る足を内股にして、何やらもじもじしている。
「その、界人!トイレっ!」
「れ…レタス?」
「す…すき焼き…って、しりとりちゃうわぁー!」
ノエルが盛大なノリツッコミを入れる。なんだしりとりじゃなかったのか。
「名執くん、今のはさすがに…ふざけてたんだよね?」
咲良が若干ドン引いている。いつだって俺は真剣なんだが。
「でー、トイレだったっけか。それなら早く言えよ。連れてってやるから。」
「感謝ですっ!」
転校初日、分からないことだらけで仕方ないだろう。ノエルを引き連れてトイレに向かおうとすると、何故だか咲良に手を引っ張られる。
「え、トイレ行くの?二人で一緒に?」
ブルブルと震えた手はがっちりと俺の腕を離さない。
「そうだけど、どうかしたか?」
「いや男女で一緒にトイレ行くってのはその、どうなんだろうね…。」
「別に個室に一緒に入るわけでもないんだからいいだろ。急にどうした?」
いつも落ち着いている咲良にしては動揺しているみたいだ。正直昨日から一緒のトイレを家では共有しているわけで、そんなことは気にもしていなかった。
「じゃあ私が!一緒にトイレ行くよ。」
「いや別にいいよ。俺案内するし。」
「私もっ!トイレ行きたいの…。」
「そうですか…。」
なんだか咲良の良く分からないカミングアウトを聞いてしまった気がする。
「あの…そろそろ…。」
話に置いてきぼりだったノエルはより一層足をもじもじさせている。
「あ、漏れそう?」
「皆まで言わんでくださいっ!」
激高したノエルと、良く分からないが咲良と一緒に、トイレまでダッシュすることになってしまった。
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