第11話
どうなってんのこれ…。
「えー、今日からこのクラスに転入することになった真白ノエルさんです。真白さん、自己紹介を。」
「今日からこのクラスにお世話になります真白ノエルです。その、皆さんと沢山青春したいですっ!よろしくお願いします!」
少し緊張していたが元気よく挨拶をするノエル。亜鷺高校の制服を見事に着こなして拍手で迎えられている。
「外国からの娘かな?」
「うっそ、めっちゃ可愛いんですけど!」
「彼氏とかいるのかなぁ…。」
クラス中からのひそひそ話が耳に入る。ただでさえ目立つ見た目をしているのに転校という形でクラスに入ってくるとなると嫌でも目立ってしまうだろう。
「界人と同じクラスです!わーい。」
こっちに笑いかけて無邪気に手を振ってくるノエル。おいやめろやめろ。要らん疑いをかけられてしまう。
そしてクラスの視線が今度はこっちに集中する。言わんこっちゃない。
「転校生もしかしてあの男子と知り合いなのか。」
「転校生と付き合ってたりして、あの男子。」
「そんな訳あるか。あの男子全然イケてないじゃん!」
うんさっきから「あの男子、あの男子」っていうの止めてくれない?俺の名前がクラスに全く認知されてないみたいじゃん。まぁ実際そうなんだけど。
「ん、名執と知り合いなのか。じゃあ適当に慣れるまで真白の世話してやってくれ。」
やる気のない担任教師はそうやって仕事を押し付けてくる。
「は、はぁ…。」
こうしてノエルの学校乱入もとい転入によって、俺の平穏な高校生活が徐々に踏み荒らされていくのだった。
授業が終わって休み時間に突入。普段であれば気だるげな様子でトイレに行ったり、仲良しグループで固まって他愛もないおしゃべりを始めたりするクラスメイト達だが、今日ばかりは話が違う。
そう、転校生質問イベントが待っているのだ。
無駄に容姿が良いノエルにはワンちゃん狙っている男子どもと、可愛い子とお友達になりたい女子どもが見事に集っていた。
「ねぇどこからきたのぉ?」
「外国の子だよね?」
「付き合ってる人っている?」
といったような質問攻めに遭い、さすがのノエルも若干困惑しているようだ。時折こちらをチラチラと見て助けを求めてくるが助けは出さない。転校生としてそういうイベントを経験して強くなれ、ノエル。
適当な言い訳を考えながら文庫本に目を落としていると、ひらひらと手のひらが俺の視界内で揺れる。視線を上げると、俺公認の清純派ビッチ。咲良妃織がこちらに手を振っていた。
「今日は何だ?またシフト?」
こいつから話しかけられるときなんてロクなことがない。大体シフトのことか、バイト先の先輩の愚痴だ。
「今日はそんなんじゃないよ。あの転校生のこと。」
そう言って咲良はグイっと俺に顔を近づけてくる。柑橘系のいい匂いが鼻腔をくすぐった。
「あの子、名執くんの知り合いなの?さっきそんなようなことあの子が言ってたけど。」
かなり近い距離で囁かれる言葉はその内容よりも目の前の女子の可愛さに意識がいってしまう。侮れないなビッチは。
「まぁ知り合い、みたいなもんかな。この前偶然知り合って。」
「へー。名執くんも女の子と知り合ったりするんだ。」
「何か酷い。別に俺だって年がら年中誰とも関わらないって訳にはいかないだろ。」
「でもバイト先でも私しか話し相手いないよ?」
「ぐっ…。」
痛いところを突いてきやがる。確かにバイト先での話し相手は俺がたまたま教育係を勤めた咲良しかいない。
「本当に名執くんって積極的に他人と関わらないよね。バイト先でも後から入った私の方が多分馴染めちゃってるし。」
「何今日は俺のこといじめたい日なの?」
そこまでマウント取らなくても良いじゃん…。こっちだって気にしてるっちゃ気にしてるんだから。
「別にそういう訳じゃないって。でも、その…あの子とはそういう関係ではないってことだよね?」
「そういう関係ってどういう関係?」
「いやだからっ、その…付き合ってるとか、ってこと…。」
「ぶっぅぅぅ!」
いきなりとんでもないことを言い出したため、飲んでいたお茶を吹き出しそうになってしまった。
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