第10話

 俺はぐちゃぐちゃになっている洗濯物を片付けながら部屋着のサンタクロースを見る。心なしか頬が赤くなっているのは気のせいだろうか。

 沈黙が何だか気まずく感じ、何か話題はないかと思考を巡らせる。そういえばノエルに関して気になっていることがあった。


「ノエル、お前は学校に行かなくていいのか?」

「へ?」


 何言ってんのこいつみたいな顔をしているがノエルは見るからに高校生くらいの容姿だ。普通なら学校に通っていると思ったがそうではないのか。


「学校って、界人が通っている高校みたいなとこですか?」

「みたいなっていうか高校だけど。」

「通わないですよ。私もう成人してますし。」

「え!?成人してるの?そうは見えないけど。」

「界人、それは私が子供っぽいって言いたいのですか?私の方がお姉さんなんですよ!」


 えっへんと胸を張るノエル。むしろ年下だと思ってたんですが…立派なのは胸だけだ、と思っていたのは内緒にしておこう。


「もうこのサンタクロース業も50年目に入ります。サンタクロース界では大ベテランですよ。」

「そうなんだ。それは立派だ…。」


 ん?今この子なんて言った?


「え、もう一回言って?」

「ですから、サンタクロース業も50年やっていると…。」

「ノエルさん今何歳?」

「なっ!レディーに年齢を聞くなんて失礼ですよっ!」


 もはやレディーという年齢ではない気が…。最低でも50歳以上ということになる。一体どうなっているんだ。


「あのぅ、ジロジロ見られると恥ずかしいんですけど…。」

「あ…悪い…。」


 あまりにも年齢とかけ離れている容姿をしているため、ついガン見してしまっていた。


「50年と言ってもサンタクロースになってからは身体的成長はしていないので、見た目はその…まだ十代なんですけど…。」

「つまり、合法!?」

「何言ってるんですか意味わからないんですけど。」


 目が怖い怖い。取りあえずただれ出る魔力をどうにかしてくれませんかね…。


「でも、学校ってちょっと憧れます…。私は子供の時からサンタクロースになるための修行でまともに通えていなかったので。」

「へ、へぇ。そうなんだ…。」


 何か嫌な予感がするこの流れはもしかして…。


「学校、通ってみたいですっ!」


 やっぱきたー。この流れだから完全に言うと思ったよ。


「いやーそんなこと言ってもノエルさん。あなたもう高校生っていう年齢じゃ…ふぐっ!」


 空き缶が独りでに俺の顔面へとクリーンヒットした。さては魔法使ったな。


「何か言いました?」

「いえ、何も言ってないです…。」 


 しかしながらノエルが本当に高校へと編入したいとなると、手続等が色々必要になるはず。そもそもこいつに戸籍はあるのかとか、現住所ここにしたらヤバいなとか問題が山積みだ。正直面倒くさいから諦めてほしいんだけど。


「学校!学校!」


 もはや完全に行く気になっているノエルを説得するのも骨が折れてしまう。取りあえず煙に巻いて誤魔化すしかないか。


――そして冬休みが明けて3学期最初の登校日。


「……。」


 どうなってんのこれ…。


「えー、今日からこのクラスに転入することになった真白ノエルさんです。真白さん、自己紹介を。」

「今日からこのクラスにお世話になります真白ノエルです。その、皆さんと沢山青春したいですっ!よろしくお願いします!」

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