122 直接対決延長戦8
「ちょっとタイム! 休んでて!!」
フレドリクたちをボコボコにしたのはフィリップなのに、フレドリクが妻の逆ハーレムを許していたと知ったフィリップは、とんでもなく焦りながら走って行くのであった……
* * * * * * * * *
時は少し戻り、エステルとルイーゼのお茶会。ルイーゼからの悩みをエステルが頷きながら聞いていたのだが、とんでもない話が出たので固まった。
「エステル様……どうかしました?」
「さ、さっきの話。ほ、本当ですの??」
「はい。エステル様も、さすがに4人は大変ですよね~?」
「はあ~~~!?」
「え? 何か変なこと言いました??」
こっちもこっちで、夜の話を聞かされたエステルから変な声が出ている。この話はフィリップから聞いてはいたけど、本人がそれを悪びれることなく言うのだから驚いたみたいだ。
「少し時間をくださいませ。カイサ、オーセ。こちらに」
「「はい!」」
エステルと一緒に訓練場の隅に移動したら、3人でコソコソと話をする。ゴシップ好きのカイサとオーセは、なんか目がキラキラしてるけど……
「毎日、殿方を代えて行為をするのは、普通のことですの??」
「一般論から言いますとありえません」
「ですわよね?」
「フィリップ陛下は一般論から外れまくっていますけど……」
「ですわね……それはいまは置いておきましょう。とりあえず、ルイーゼが悪いことをしているということで合ってるのですわね?」
「「はい!」」
経験の少ないエステルは2人から確認を取り、さらに情報を得る。どうやらこの情報を知っている者はかなり少ないらしく、ルイーゼの専属メイドに近付いたカイサとオーセがなんとか聞き出したらしい。
フィリップに話をした時には2人はめっちゃ興奮していたから、噂話を集めさせたせいでゴシップ記者として目覚めてしまったと、フィリップも反省したらしい……
「と、とりあえず、戻りますわよ」
カイサとオーセのテンションが高いので、エステルもたじたじ。ルイーゼの待つテーブルに戻ってお茶を一口飲んだ。
「あのですわね……普通は、男性と女性は一人ずつしか相手しないらしいですわ」
「どうしてですか? すっごく楽しいですよ??」
「不貞と言いましてね。罰を与える場合もありますのよ」
「みんなはそんなことしませんよ~」
「交代ですわ!」
エステルが優しく言ってもルイーゼには通じないので、カイサとオーセに代わってもらった。
「あのですね。複数の男性としていると子供が生まれた場合、誰の子供かわからなくなるんですよ?」
「私の子供はみんなの子供だから大丈夫だよ」
「あのですね。お父さんがいっぱいってのはおかしいんですよ」
「そうかな~??」
「「無理です!!」」
カイサとオーセも、早くもギブアップ。エステルも先程の話が気になったのか、自分から質問する。
「いいですの? 帝国では世襲制を取っていますのよ。それは、初代様の血を脈々と繋ぐ伝統なのですわ。それが途切れてしまうと、帝国の歴史が終わってしまうことになりますの」
「え……」
「やっとわかってくれましたわ!!」
ここまで説明してやっとルイーゼの顔色が変わったので、エステルたちは軽くガッツポーズしてる。
「ところでですけど、男の子を産んでますわよね? その子の父親は誰かわかっていますの??」
「そんなのわかりませ~~~ん!!」
「「「あっちゃ~……」」」
まさかの誰の子供かわからない事態。なのでエステルたちも呆れている。
「とりあえず、陛下の判断を仰ぎましょう。もしもの場合は覚悟するのですわよ」
「か、覚悟とは……」
「子供を取り上げられるか、フレドリク殿下と離縁するか……それだけのことをやっていると自覚なさい」
「そ、そんな……」
ルイーゼを脅したエステルは氷の壁に向かっていると、その一角が急に動き出したのであった……
* * * * * * * * *
「えっちゃん!」
氷魔法で壁をブロック状に引き抜いたのは、もちろんフィリップ。ちょうど近くにいたエステルに気付いて駆け寄った。
「兄貴のヤツ、とんでもないこと言ってるの!」
「奇遇ですわね。ちょうどわたくしもとんでもないことを聞いたところですわ!」
そしてエステルと一緒に「ワーキャー」やって、ルイーゼの逆ハーレム状態の話を摺り合わせていた。
そうして話がまとまると、2人は壁の向こう側に移動する。カイサとオーセも気になるのかあとを追ったけど、途中で氷の壁を触っていた。
「冷たい……これ、プー君がやったのよね?」
「うん……私たちにずっと隠してたんだ……」
「隠し事ばっかり……あ、そういえば冷蔵庫の氷って、いつも満タンだったのは、プー君が入れてたのかも?」
「そういえば、夏でもプーちゃんの部屋だけ涼しかったよね? いなくなってから暑かったのはそのせいじゃん」
この2年の謎が解けた2人だけど、その先の惨状に息を飲んだ。
「みんなボロボロ……これもプー君が……」
「プーちゃんは何もないようだったのに……」
「私たち、凄い人に抱かれてたんだ……」
「だね……これは、離れたらもったいないね」
「ええ。
フレドリクたちのボロボロの姿を見て、よりいっそうフィリップから離れられなくなるカイサとオーセであった……
一方その頃、フレドリクサイド……
「フックン! みんな! 大丈夫!? 私が治してあげる!!」
フィリップたちが「ワーキャー」やっている間にルイーゼは氷の壁を走り抜け、フレドリクたちと合流して回復魔法で癒していた。
ルイーゼは腐っても最強の聖女。モンスでは治療に時間が掛かっていたフレドリクの筋繊維断裂もあっという間に治し、後回しにしていたカイも完璧に治していた。
「助かった。さすがはルイーゼだな」
フレドリクが礼を言って頭を撫でたが、ルイーゼは涙目で見ている。
「フックン……私たち悪いことをしてたんだって。だから、子供と離れ離れになったり離婚しなくちゃいけないの……」
「なんだと!? 誰がそんなこと言ってたんだ!?」
「エステル様が……でも、悪いのは私たちだし……」
「そんなことない! ルイーゼは何も悪くないんだ!! エステルめ……」
「いや、エステル様は関係ないよ??」
エステルの名前が出たからには、フレドリクたちにはルイーゼの声も聞こえない。
「ルイーゼを守るためには、フィリップを倒すしかないぞ!」
「「「おお! ルイーゼのために!!」」」
こうしてさっきボコボコにされたフレドリクたちは、ルイーゼを守るために立ち上がるのであった……
「なんか兄貴たち、超燃えてない?」
「ええ。何があったの……ルイーゼがあちらにいますわね」
「ゲッ……だからか~」
「また涙目で何か言ったのでしょうね」
「勘弁してくれよ~」
ルイーゼが関わると、フレドリクたちの目の色が変わるのは健在と察したフィリップとエステルは、呆れ果てるのであったとさ。
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