その一葉に想いをのせて

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第1話

私は独りで、窓から見える景色を眺めていた。

すると、コンコンと扉がノックされた。

「こんにちは~、おじゃまします。あれ?まだ寝てないんですね。」

そこには女の子が立っていた。

手には袋を持っていて、ニコニコとしている。

深緑色をした髪でセミロングくらいの長さだ。目はパッチリとしていて可愛らしい子だった。

私は驚いて固まってしまった。

その子はキョトンとして

「...もしかして聞こえなかったんですか?」

不安そうな顔になっている。

「あ...いやごめんなさい!聞こえてました!」

私がそう言うとパァっと明るい笑顔になってくれた。

可愛い子だなと思った瞬間である。

私はハッとして

「えっと、ごめんね?お名前教えてもらっても良いかな?」

と聞くと、彼女は明るく返事をしてくれた。

「私は『リン』って言います!よろしくお願いしますね。」

「こちらこそよろしくね、それで私に何か用があったのかな?」

私が聞くと、彼女改めリンは少し困ったような顔をして言った。

「実は道に迷ってしまって......。」

私はクスッと笑うと、笑顔で

「じゃあ案内してあげるからこっちに来てもらえるかな?」

と言って手を差し伸べた。

すると彼女も嬉しそうに微笑みながら

「はい!ありがとうございます!」と言いながら私の手を握った。

彼女の手の感触がとても心地よかった。・

「それにしてもどうしてこんな森の奥に...?」

「えへへ...色々あってですね...」

そんなことを言いながら歩いていると少し開けた場所に出た。

目の前に川があり、上流の方へ流れていくようだった。

水のせせらぎの音や鳥の鳴き声などが聞こえてくるのが分かるほど静かで気持ちが良い空間が広がっていた。

「ここはとても静かなんだね。気持ちが良くてなんだか眠くなってしまいそうだよ...。」

私は大きく伸びをするとそう言った。

そんな私を見てリンがクスクスと笑った。

笑われたことに恥ずかしくなり顔が熱くなるのを感じた。

「ふふっ、すみませんっ、ちょっと意外だったのでつい...。」

私はあははっと苦笑いしながら頬をポリポリとかく。

「でも本当に気持ちいいですよねぇ...。」

そう言いながら彼女は目を瞑った。

私もつられて目をつぶる。2人の間に沈黙が流れた。

しばらくすると風が吹き抜け木々がざわめく音が心地よく聞こえてきた。

私はふと目を開けるとそこには穏やかな顔で寝ている彼女が視界に映った。

思わず見惚れてしまうほどに美しく可愛く感じた。

しばらくその様子を見ていると突然パチッと目が開き私と目が合ったかと思うとみるみるうちに顔が真っ赤になっていく。

そしてあわてふためいたように慌てだした。

「すっ、すいません...!ついボーッとしてしまって...!」

「ううん大丈夫だよ、気にしなくて大丈夫。それにこんなに綺麗な顔してるんだもんね仕方ないよ♪」

私はそう言ってニコリと笑った。

そうするとさらに顔を赤くしてうつ向いてしまった。

あれっ...?どうしたんだろう...?もしかして恥ずかしかったのかな...?そんな風に思っていると彼女は小さな声でぼそっとつぶやいた。

「...綺麗......ですか......?」

「......うん。とっても綺麗だと思うよ。」

私が言うと彼女はうつむいてモジモジし始めた。

可愛い...そう思った瞬間私は無意識に彼女を抱きしめていた。

一瞬何が起きたのか分からなかったようで驚いていたがすぐに落ち着いた様子で抱きしめ返してくれた。

私は道案内をすることを忘れてしまっていた。

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