ステージ6

 気がつけばそこは、開拓者ギルドの入り口だった。カウンター席に座る赤い髪の少女が、こちらを見ている。


 ——もう何度、彼女を失っただろうか。


 五回、という嫌な数字が脳裏をよぎる。もうたったの一度でさえ、死なせるものかか……! 僕はそう、右腕のリングに誓う。僕はカウンター席へと歩いて行った。


 そして僕は、再び始まりへと至った。六回の始まりは、亡き彼女たちへの誓いと共に。



 ——————————



 僕たちは、砂漠にいた。


「ケレシス、もういいよ。もういいんだよ」


 テントの素材で作った即席のソリに乗るリーナが、ひどく衰弱した声でそう言った。僕はソリを引っ張るのをやめて、一度休憩する。


「このままじゃ、あんたまで……!」

「僕が置いて行ったら、リーナは魔物に襲われるだろ」

「だからそれでいいって言ってるじゃん!」


 包帯で巻かれていない側の彼女の瞳には、涙が浮かんでいた。僕は血でどろどろになった彼女の包帯を取り替えようと、先の方から少しずつ巻き取っていく。


 右足と、左足と、右手と、左目。

 それが前回の先頭で失った、彼女の全てだ。そのせいで、彼女はこんな方法でしか移動ができなくなった。全ては僕が悪いのだ。せめて僕がもう少し、強ければ……!


「自分を責めないで。悪いのは、全部私だから。だから、私を置いて行って。これは自業自得」

「……ふざけるんじゃない。死なせてたまるか」


 僕は悔しさに震え、涙を必死に堪えながら、そう言った。


 その時、僕の視界にあるものが映った。まるで、大きな砂の壁のようなそれは——


「砂嵐」


 リーナは呆然と、そう呟く。

 僕は急いで、リーナの乗るソリを組み立て直し、テントを作る。これで過ぎ去るまでやり過ごせるはず……!


 風に、砂に、テントが大きく揺れる。僕はテントの骨組みを掴み、必死に飛ばされないように耐える。


「ごめんね、ケレシス。私がこんなのだから……」

「もうやめろ、自分を責めるな」


 僕はそう言ったが、ごめんね、ごめんね……、と。彼女はただ、涙と共にそう繰り返した。


 それから、どれだけの時間が過ぎただろうか。砂に埋もれたテントをどうにか持ち上げて、僕は久方ぶりの外気を取り込む。


「リーナ、いくぞ。……リーナ?」


 一滴の涙が彼女の顔を伝う。彼女の息は、止まっていた。



 気がつけばそこは、開拓者ギルドの入り口だった。

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