ステージ5
気がつけばそこは、開拓者ギルドの入り口だった。カウンター席に座る赤い髪の少女が、こちらを見ている。
——これでもう、五度目だ。
リーナを失うのは、四回目だ……!
これ以上、死なせるわけにはいかない。そう決意を新たに、僕はカウンター席へと歩いてゆく。
そして僕は、再び始まりへと至った。五回目の始まりは、新たなる決意と共に。
————————
「くそ、なかなか手強いな……!」
アイラー村からアドレーヌ港への道中、僕たちは魔物と戦っていた。熊をそのままひと回りも二周りも大きくしたよう魔物だ。そして背後は崖、落ちれば海まで真っ逆さま——まず、助からないだろう。
——いや待てよ、この魔物を海に突き落とせばいいのでは?
「リーナ! こいつを海に突き落とすぞ!」
「妙案だね! ——けど難易度はッ! 高いよッ!」
先ほどからリーナは何度も熊型の魔物を切り付けているが、そいつの体力が減っている様子はない。難度の問題はあるが、やはり、突き落とすのが最善に思える。
「私が崖側に行く! ケレシスはこのまま、背後から圧力を強めて!」
リーナの指示に従い、僕は魔物の背後から『聖鎖』トリニチューンを使って攻撃を行う。
熊型の魔物が、姿勢を低める。——突進の予備動作だ。僕はその背後に『聖鎖』で攻撃し、無理矢理に動かさせる。
あの位置だと、リーナを巻き込んで海へと落ちかねない……!
「リーナ!」
魔物が、リーナへと迫る。もはや回避はできない。そして——リーナと魔物は、海へと落ちていった。
その後を追うように、僕は崖から海へと飛び込む。リーナと接触することさえできれば、一緒に巻き戻ることができるのだ。
接触することさえ、できれば……!
また最初からになるが、リーナを死なせてしまうよりはいい。
「リーナ! 手を伸ばせ!」
自由落下の最中、僕はそう叫んだ。僕はリーナに手を伸ばし、リーナは僕に手を伸ばした。
水面が迫る。
あと少し、少しでも手が触れれば……!
「——リーナ!」「ケレシス!」
叫ぶ。お互いの名を、叫ぶ。
刹那、静かな水面に、大きな水柱が立つ。僕の手には、何も握られていなかった。
気づけばそこは、開拓者ギルドの入り口だった。
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