メメント・モリ

いつも一緒の、ふたり。

とても仲良しな、ふたり。

ふたりはひとつでした。


メビウス様が言いました。

「この植物は怪我の痛みによく効くわ」

ゼロ様は言いました。

「詳しいんだな」

長い、長い髪を揺らして、メビウス様は嬉しそうに笑います。鈴を転がしたような、高く、可愛らしい笑い声。ゼロ様はそんなメビウス様を、とても優しい目で見つめていました。しかし、次には暗い顔をして、こう言いました。

「私がいるばっかりに、すべての生き物はいつか、死んでしまう…」

しかしメビウス様は、優しく言います。

「死がなかったら、とても残酷よ」

彼女はまわりの可憐な花々を、うっとりした目で眺めました。

「見てちょうだい。花はいつか枯れるわ。だからこそ、美しいと思えるの」

メビウス様は近くの花を一輪、細く、白く、長い指で、優しく撫でました。赤い、赤い花。空の青に、よく映える花。

「死がなかったら、生きる、という言葉も生まれなかったわ」

彼女は続けます。

「死は必要よ。魂には休息がいるもの」

しかし、ゼロ様は悲しそうに目を閉じます。

「しかしな…私がいることで、苦しむものがたくさんいるんだ」

彼は真っ黒い手をそっと、メビウス様の薄いローズピンク色の頬に当てます。鋭い爪で彼女を傷つけないように、そっと。

「私は死だ。厄災だ。私は私を封印したい」

その言葉を聞くと、メビウス様ははっとし、ゼロ様の手を握りしめて言いました。

「だめ、だめよ!あなたがいなくなったら、私…もうこうして生きていけないわ!」

彼女は悲痛な声をあげます。

「私にも、世界にも、あなたは必要なの」

彼女は目を潤ませて、続けます。

「ずっと、そばにいてちょうだい」

ゼロ様はただ、悲しそうに微笑むだけでした。


ゴーレムは見ていました。

メビウス様の、嘆き悲しむ姿を。

彼女がゼロ様の肉体を、いつまでもぎゅ、と抱きしめているさまを。やがて、彼女のぬくもりは姿を消してしまいます。

ゼロ様を求め続けて。

ゴーレムは見ていました。

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