だれだお前
走って、走って、走って、走って、
どれくらいたっただろうか。とっくに駅は通り過ぎていた。季節は夏だ。これだけ走れば、汗がひっきりなしに出てくる。制服がびしょ濡れで気持ち悪い。一度足を止めると、全身が蒸されているように暑かった。ただただ無我夢中に走っていたから、自分がどの方向にどれくらい走ったかなんて覚えていない。
「なにしてんだよ、私、」
あの時、羽山と目を合わせたくなかった。何か、全てを見透かされていそうだった。とてつもなくそれが嫌だった。怖かった。羽山の目線が痛くて痛くて仕方なかった。
「これ、どうやって帰ればいいんだ、、?」
生憎今日に限って携帯を家に忘れてきた。
周りに人があまりいない。おそらく駅から結構遠いところまで来てしまっている。
自業自得だ。意味不明な行動ばっかりして。
羽山は、羽山は、どう思っているだろうか。
驚いているだろうか。ふざけていると思われただろうか。呆れられただろうか。気持ち悪かられただろうか。
羽山は、羽山は、羽山は、羽山は、
心配してくれているだろうか、、、、
、、、、、、、、、、、、
その瞬間、視界が歪んだ。
頭が痛い。体が重い。うまく立てない。吐き気がする。
すぐにわかった。熱中症だ。この暑さで馬鹿みたいに走ったからだ。それに、ここ最近ほとんど寝ていない。ご飯もしっかり食べていない。
あぁ、バカだなぁ、、、
もうほんと、自分が嫌になってくる、、
そのまま地面に座り込んだ。
熱が体を纏っている。
もう、動ける体力は残っていなかった。
気がつくと、眠りについていた。
ということに気がついた。
薄暗い、埃の匂いがする。そこに甘ったるい匂いも混じっている。地面を触ると、少し暖かく、柔らかかった。
「ん??、布?」
いや違う。布団だ。
「え、、?私、さっきまで外に、」
戸惑った。おかしい。誰かの部屋にいる。明らかにおかしい。どうゆうことだ。何がどうなっている。そうだ、私は走って、熱中症になって、倒れて、
いくら記憶を辿っても室内に入った記憶なんかない。
これは、やばい。
周りを見渡すが、全く見覚えのない部屋だ。
この状況はあまりにも危険すぎる。
急いで自分の体に乗っている布団を思いっきりよける。服は、上下どちらも着ていた。
「良かった、、、、、」
怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、こわい、こわい、、、、全身の震えが止まらない。布団は暖かいのに、体は冷たい。昼とは別の意味で泣きそうだ。
怖い、こわい、こわい、こわい、こわい、、
すると、ドアが空いた。涙が溢れ出した。
自分は、どうなるんだ、何をされるんだ、、
ここはどこだ、今何時だ、いったい私に何が起きてるんだ。不安が全て溢れ出した。
「あれ、起きたんだ」
声が聞こえた。そして、大声で叫んだ。
「たすけて!!助けて!何もしないで!怖い怖い!助けて!!助けて!やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめて!!!!!」
思っていること全てが口から出た。
「待ってよ。何もしないよ。あー、えっと、多分、、」
男だ。しかも結構体が大きい。いつも見ている高校生の体じゃない。大人だ。ゆっくりと近づいてくる。ゆっくり、ゆっくりと、、
「だれ!誰だお前!!近づくな!やめろ!」
男は優しく、ゆったりとした、余裕のある声で、こう言った。
「大丈夫。」
そして、目の前にしゃがみこむ。
「俺は、お前を探してたんだよ」
男ははまるで少年のようなどこか悪戯な笑みを浮かべていた。
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