第7話

それから数日後王宮ではアンデッド達への対策が早急に進められていた。


大広間では国王がアンデッド対策の指示を出していた。


謁見の間に騎士達が報告にやってきていた。


「ご報告致します。騎士達の王都の各所に配置が完了致しました。」


「聖水の配布状況は?」


「はっ!!各騎士達への聖水の配布も完了しております。」


「結界魔法の展開状況は?」


「はっ!!王国中の神父やシスター達にも総出で動いてもらっております。王都の各所に結界魔法バリアの展開はほぼ完了。他の町での展開も今日中には終わる予定です。」


「うむ、備えは万全じゃな。これでいつアンデッド達がいつ動きだしても対応できるだろう。」


すると一人の騎士が国王に言った。


「そういえば国王様?シスター達からおかしな報告が上がっております。」


国王がその騎士に聞き返した。


「どんな報告だ?」


「王都で結界魔法を張っているシスター達からの報告なのですが、いっこうにアンデッド達が動いている気配がないとの事なのです。結界魔法を張ればアンデッド達がどう動いているかかなり細かい動きまで把握する事ができます。ですがアンデッド達が動き回った痕跡が全くないとの事です。まるでアンデッド達が全くいないようだと言っておりました。」


国王がいぶかしげに言った。


「なんだと、一体どういう事だ?」


すると国王が謁見の間に呼んでいたユーゲルスに尋ねた。


「ユーゲルス、襲撃者達の調査はどうなっておる?」


ユーゲルスが自信満々に答えた。


「かなりの進捗がございました。」


「ほうそうか。」


「このユーゲルスが襲撃者達の計画を看破したのでございます。そしてこのユーゲルスが襲撃者達に先んじて先手を打ったのでございます。襲撃者達はアンデッド達を我が公爵家の使用人達に化けて襲撃を企てようとしていたのです。ですので」


すると謁見の間に声が響いたのだった。


「そんな意味不明な理由で長年ルホルム公爵家に仕えてくれた者達を殺して回ったのか?」


ユーゲルスがキョロキョロしながら言った。


「誰だ?」


するといつのまにか謁見の間の中にフードを被り顔を隠した二人が立っていた。


「誰だテメエらは。」


そのうちの一人がユーゲルスに言った。


「名乗るほどの者じゃない。」


ユーゲルスがその二人に言った。


「部外者はお呼びじゃない。引っ込んでいろ。」


だが負けじとユーゲルスに言い返してきた。


「君の方こそ引っ込んだらどうなんだ!!君のイカれた妄言に巻き込まれてみんなが迷惑している!!!」


ユーゲルスが大声を張り上げた。


「妄言だと?いいかこのユーゲルス様は最愛の妻レイラと忠をつくしてくれた使用人達を無残に殺されたんだ。このユーゲルス様の気持ちも考えろ!!そうか、お前らだな。我がルイホルム公爵家を襲撃し妻レイラを殺した犯人は。」


「国王様こいつらこそが我が公爵家を襲撃した犯人達です。おのれよくも妻レイラと使用人達を殺してくれたな。なんて卑劣で醜い連中なんだ。まさに人の皮被った化け物です。」


国王がユーゲルスに尋ねた。


「ユーゲルス、間違いないのだな!」


ユーゲルスが国王に自信満々に言った。


「はい本当でございます。レイホルム公爵の名に懸けて今言った事は全て事実でございます。」


するとフードをかぶったもう一人が言った。


「ユーゲルスあなたにだけは人の皮を被った化け物なんて言われたくないですね。」


するとローブを被った二人はローブを外したのだった。


ユーゲルスや国王は驚いた様子でその二人を見て言った。


「なあレイラ?それに勇者マロイだと?」


国王は困惑した様子でレイラに尋ねたのだった。


「レイラ殿、これはいったいどういう事なのだ?」


「はい、私はユーゲルスの暴力や暴言に耐えかねてレイホルム公爵家を出てきたのです。」


国王様は驚いた様子で聞き返してきました。


「レイラ殿?ユーゲルスに暴力を振るわれたのか?」


「はい、魔道具の雷帝(らいてい)の杖で電撃を浴びせられました。意識を失うほどの電撃をほぼ毎日浴びせられたんです。殴られたり蹴られたりするのもかなりの頻度でした。」


国王様がユーゲルスに尋ねました。


「ユーゲルス、それは事実か?」


ユーゲルスは淡々と国王様に答えました。


「事実でございますが、それが何か?」


国王様がユーゲルスに言いました。


「何を平然としておるのだ!!妻に電撃を浴びせるなど正気の沙汰ではないだろうが!!!しかもほぼ毎日だと??常軌を逸しておるぞ!!」


ユーゲルスは悪びれる様子もなく国王様に言いました。


「これはスキンシップの一種でございます。」


そしてユーゲルスは狂気に満ちた目で私を睨みつけながら私に言いました。


「そうだよな!」


私はユーゲルスに睨みつけられてとても怖くなりました。


その狂気に満ちた目で睨まれ私は震えだしてしまったんです。


そして私はあの辛い毎日を思い出してしまいました。


するとマロイ様がやさしく私の手を握ってくれました。


「大丈夫だから。」


私はマロイ様のこの言葉でとても安心する事ができました。


私はマロイ様に優しい言葉をかけてもらって勇気を振り絞る事ができました。


そして同時にユーゲルスに立ち向かう勇気をもらったんです。


私はユーゲルスにひるまずに言いました。


「電撃を浴びせられる毎日がどれほど辛かったか、どれほど怖かったかあなたには分からないんですか?」


国王様もユーゲルスを糾弾します。


「レイラ殿の言われる通りだ。ユーゲルス!!恥を知れ!!」


もう電撃を浴びせられるのに怯えていた私じゃない。


マロイ様と一緒ならユーゲルスにだって立ち向かえる。


私は国王様に言いました。


「私はユーゲルスに殺されそうになりました。それをこのマロイ様に助けて頂きました。」


「なんだと?」


驚いた国王様が再びユーゲルスを問いただします。


「ユーゲルス??レイラ殿を殺そうとしたというのは事実か?」


ユーゲルスは悪びれる様子もなく淡々と答えます。


「ええ殺そうとしました。それが何か?」


国王様がユーゲルスを怒鳴りつけます。


「何かではないだろうが!!!レイラ殿を殺そうとしたのだぞ!!」


ユゲールスが国王様に言いました。


「アンデッドの襲撃から王国を守るためだったのです。仕方なかったのです。」


国王様はいぶかしげに言いました。


「なんだと?」


するとマロイ様が国王様に言いました。


「国王様ユーゲルスに騙されてはいけません。今回の騒動は全てレイラ様が出て行った事をユーゲルスが受け入れなかったために起きたのです。」


国王様がマロイ様に尋ねました。


「しかしマロイ殿?レイラ殿の事と今回の事態とが繋がっているようにはとても思えませんが?」


マロイ様が国王様に言いました。


「いえそれが大きく繋がっているのです。レイラ様に見限られた事を受け入れられないユーゲルスはあろうことか起こってもいない襲撃事件をでっち上げてルイホルム公爵家が襲撃されたと騒ぎ立てたのです。」


「なんと、それではアンデッド達が王国を襲撃するという話も?」


「はい、全てはユーゲルスの心の狭さが招いた妄言に他なりません。ここに来る途中アンデッド達の動向を調べてきましたが、アンデッド達が暗躍している兆候は一切見つける事ができませんでした。このユーゲルスがアンデッドの襲撃をでっちあげようとしているとしか思えません。」


「なるほど、それでシスター達がアンデッド達が動き回っている様子がないと報告してきたわけか。」


「つまり全てこのユーゲルスの妄言でわしらはただそれに振り回されてしまっただけだと?」


「まさにその通りです。」


「なんという事だ!!そういえばマロイ殿、さきほど公爵家の使用人達を殺して回ったと言われていたがあれはどういう事か?」


「それはあっしから説明しますよ。」


声が聞こえた方を振り返ると謁見の間にマスタングが入ってきたのだった。


国王様がマスタングに尋ねた。


「そちはたしかユーゲルスの部下のマスタングだったか?」


マスタングが国王様に言いました。


「はい、国王様、このユーゲルスは自分の妄言を信じてルイホルム公爵家の使用人を殺して回ったんです。お前アンデッドだろうこのユーゲルス様は騙せないぞとか意味不明な事叫びながら電撃を浴びせて殺していったんです。あっしの妹のローラもこいつに電撃で殺されました。」


国王様がユーゲルスを怒鳴りつけます。


「ユーゲルス!!!なんという事をしてくれたのだ!!」


ユゲールスは何食わぬ顔で国王様を見ていました。


マスタングが国王様に言いました。


「国王様、遺体を隠した場所をあっしは知っています。道案内を致しますので確認をお願いできますか。」


マスタングさんは国王様に、ユーゲルスが行った非道な行いの確認をしてもらう事、そして彼らの弔いをお願いしたかったのだと思います。


国王様はマスタングさんの意図をくみ取ったようでこう言いました。


「分かった。すぐに近衛騎士達を向かわせるから道案内を頼む。その者達を弔ってやらねばならないな。」


マスタングさんが大広間から出ていきしばらく経ってから近衛騎士達から報告が入ってきた。


「国王様、殺された公爵家の使用人達と思われる108人の遺体を発見致しました。恐らく全員の遺体を発見できたと思われます。」


悲しそうな顔で国王様は近衛騎士達に指示を出しました。


「そうか分かった。すまないが彼らを丁重に弔ってやってくれ。」


「はっ!!」


国王様はユーゲルスに振り向くと大声でどなりつけました。


「とんでもない事をしてくれたなユーグレス!!!お主がここまでの愚か者だとは思わなかったぞ??」


ユーゲルスは平然と国王様に言いました。


「あいつらはアンデッドが化けていたのです。殺さなければならなかったのです。」


「まだそんな事を言うのか!!!もうよい!!口を閉じよ!!」


悲しい顔で国王様が言いました。


「はあどうやら余はそちを買いかぶりすぎていたようだな。まさかここまでの外道者とは。」


そして国王様がユーゲルスへ言いました。


「ユゲールス、貴様への処分を決めた。ルイホルム公爵家の使用人達の殺害とレイラ殿の殺人未遂の罪でそちを死罪とする。公爵の爵位も没収じゃ。良いな!!!」


ユーゲルスが慌てて国王様に言いました。


「待ってください国王様!!あいつらは殺されて当然だったのです。アイツらゾンビにすり替わっていたのです!!!」


「だから口を閉じよと申しておるのだ!!」


するとマロイ様が封印魔法を発動されました。


「今この者に静寂を与えたまえ! シール!!」


するとユーゲルスは大声を出すのを止めました。


「ユーゲルス!!最後にこれだけは言っておく。ユーゲルスお前は人の道を踏み外した最低の人間でロクデナシだ。その命でもって自分の犯した過ちを償うのだ。よいな!!」


「こいつを地下牢に連れていけ!!!」


「はっ!!!」


こうしてユーグレスは騎士達に連行されていきました。


すると国王様が私に言いました。


「レイラ殿、まことにすまなかった。あのような男を信じ切ってしまうとは。自分も落ちぶれたものだ。」


私が国王様に言いました。


「いえちゃんと対応して頂いたので全然構いません。」


国王様がマロイ様に言いました。


「勇者マロイ殿、本当にありがとうございました。またしても助けられてしまいましたな。」


「いえ国王様お気になさらずに。」


するとマロイ様が私に言ってくれました。


「レイラ様笑顔はやはり素敵ですね?」


私は少し恥ずかしく答えました。


「えっ??」


マロイ様が私に言ってくれました。


「レイラ様はずっと心配事をされているお顔をされていましたので。今のレイラ様はとても楽しそうで素敵な笑顔をされています。」


私は少し恥ずかしくなり目をそらしながらマロイ様に答えました。


「そうですか?」


そっか気が付かなかったけど、私ずっと暗い顔をしてたんだな。


マロイ様はずっと私の事を心配してくれていたんですね。


そうかアイツが処断されてもうアイツの心配をする必要がなくなったからかな?


でもそれだけなのかな?ううん、たぶんちがう。きっと今私が笑顔でいられるのは横にマロイ様がいてくれるからだと思う。


マロイ様といるととても安心できてとても楽しかったから。


マロイ様がいてくれたからアイツと対峙する事ができた。


ああたぶん私はマロイ様に恋をしてしまったのかな。


マロイ様は屈託のない笑顔で私に言ってくれました。


「レイラ様は笑顔が一番お似合いですよ。」


心が揺さぶられる感じがした。


でもとても気持ちのいい揺さぶりでもありました。


このままマロイ様と離れてしまうなんて嫌だ。


私はただその思いに突き動かされてマロイ様に大きな声で言いました。


「マロイ様、私も一緒に連れてってください。マロイ様と一緒に旅がしたいです。」


「レイラ様??」


「ちょっとレイラ??」


突然の告白になってしまい周辺が一時騒然となりました。


自分でもこんな大胆な事ができるんだと驚いてしまいました。


そして私はマロイ様の返答を待ちました。


「ええもちろん構いませんよ。」


よしマロイ様に大好きですって告白しよう。


マロイ様と離れたくない、その気持ちが私自身をすごく大胆にしてくれました。


「それで私・・・実はマロイ様の事が!!!」


すると突然マロイ様に遮られてしまいました。


「待ってください、そこは私から言わせてもらえませんか?」


えっ??マロイ様??それはどういう事ですか?


そしてマロイ様は私に言ってくれました。


「前からずっとお慕いしておりました。とてもやさしい心を持っておられるレイラ様の事が。レイラ様のに接しているうちに私の心はドンドンあなたに惹かれていきました。でもあなたは公爵夫人であり叶わぬ恋であると諦めておりました。ですがまさかレイラ様も私を慕って頂けていたとは思いませんでした。レイラ様、いえレイラどうかこのマロイの妻になって頂けませんか?これからずっと君と一緒に寄り添って歩んでいきたいと思っています。」


私は嬉しすぎて涙がでてきました。


まさかマロイ様も私を慕ってくれていたなんて。


「はい、もちろんです。私もマロイ様とずっと一緒にいたいです。」


マロイ様と私は見つめ合いました。


マロイ様の金髪の青い瞳で優しい笑みを浮かべていました。


するとマロイ様が私の唇に唇を近づけてきました。


私もそれに応えるように静かに目を瞑って待ちました。


そして私はマロイ様と熱い口づけを交わしました。


「大好きですマロイ様。」


「私もだレイラ。」

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