第6話
その日の深夜頃、クリスタの町の宿屋に静かに忍びよる一団があった。
彼らは襲撃者で全員が頭巾を頭に巻いて顔を隠しており、手にはナイフや短剣などを持っていた。
リーダーらしき男が他の襲撃者に尋ねた。
「この宿屋で間違いないな。」
別の襲撃者が答えた。
「ええここで間違いありません。」
リーダーらしき男が言った。
「分かってるな。レイラ様をみつけしだい始末しろとのご命令だ。」
「よし行くぞ!!」
襲撃者達は宿屋の入り口のドアを蹴り破って宿屋の中へと侵入していった。
「おかしいです、誰もいません??」
襲撃者達は宿屋の中をくまなく探したが人っ子一人いないのだった。
襲撃者達は宿屋の外に出て首をかしげていた。
「どういう事だ?」
「こういう事だ。ライト!!」
その声が響くと周囲が明るく照らされて昼間のような明るさとなった。
「まぶしい!!!」
マロイが襲撃者達の前に姿を現したのだった。
「お客人方、そんな乱暴な事をしてはいけませんよ。それとも宿泊以外の目的でここに来られたのですか?」
リーダーらしき男が言った。
「くう襲撃を読まれていたか。」
「どうする?」
「相手は一人だ。さっさと片づけてレイラ様を探しに行くぞ。」
「分かった。うう。」
襲撃者達はリーダーに返事をしてすぐに次々と倒れていったのだった。
「どうした?」
すると襲撃者の後ろからアイザックが姿を現した。
「君のお仲間さんには催眠魔法のスリープをかけさせてもらったぜ。ブースト魔法で効力を上げているからしばらくは起きてこれないはずだ。」
襲撃者のリーダーがマロイに言った。
「くう、お前が注意を引き付けている間に隠れていた仲間がスリープを唱えていたという訳か?」
「そういう事だ。さあ観念してもらおうか、立っているのはもう君一人だけだ。」
「くそう!!」
残った襲撃者はマロイに短剣で切りかかった。
だがマロイは襲撃者の剣先を難なく交わすと拳を襲撃者の脇腹で攻撃したのだった。
襲撃者はたまらずに倒れこんでしまった。
アイザックがマロイに言った。
「さてとそれじゃあこいつらを縛りあげとくか。」
襲撃者達が縛り上げられた後で、近くに隠れていたレイラ達が姿を現して襲撃者の前までやってきた。
襲撃者達が頭につけていた頭巾は全て外されていた。
アイザックが襲撃者のリーダーに尋ねた。
「さあ教え貰おうか、誰に頼まれた?」
襲撃者のリーダーが答えました。
「答えるわけないだろうが!!」
私は襲撃者のリーダーに尋ねました。
「誰に頼まれたのか教えて頂けませんかマスタングさん?」
「レイラこいつの事知ってるの?」
「あの人、いえユーゲルスの部下の人よ。ルイホルム公爵家に仕えていてマスタングって名前なの。」
すると襲撃者のリーダーはため息をついた後で私に答えてくれました。
「ルイホルム公爵です。ルイホルム公爵からレイラ様を殺せって指示を受けたんです。」
「なぜそんな事を、レイラさんは何もしていないんだぞ?」
リーゼが頷きながらリーダーに尋ねた。
「そうよ、なんでレイラが命を狙われなきゃいけないの?命を狙われる理由がないじゃない?」
「公爵が言うにはアンデッドとして操られたレイラ様がアンデッド達を率いて王都を襲撃を企んでいる。だからその前にレイラ様を殺して土に返さなければならないからだそうです。」
リーゼがマスタングに尋ねた。
「はあ何それ、全然意味分かんないんだけど?」
マロイがマスタングに尋ねた。
「なぜここでアンデッドという言葉が出てくるんだ?」
「アンデッドなんて言葉じたいはレイラ様にはなんの関係もありませんよ。」
「えっ、関係があるからあなた達はレイラの襲撃を命令されたんでしょ?」
「なるほど、あんた達みたいな善良に生きてきた人間には分からないかも知れませんな。まああっしも気がついたのはつい最近ですからね。いいですかユーゲルスという男の人間性を理解しておかなければダメなんです。ユーゲルスという男は心の底から腐り果ててるんですよ。」
リーゼがマスタングに言った。
「うんアイツがひどい奴だっていうのは理解してるけど、それがなんだっていうの?」
「普通は悪事を働いたり相手に酷い事をしたら反省したり後悔するでしょう。でもあの男にはそれがないんですよ。どれだけ悪事を働こうが酷い事をしようが反省したり後悔したりしないんです。だからどんな酷い事だって出来てしまうんですよ。」
「だからそれとレイラが命を狙われる事とどう関係するの?」
「アイツはこの前国王様にレイラ様が出ていった事を問いただされてこう答えたらしいですよ。レイラ様が何者かに殺されてしまったのだと。そしてレイラ様が襲撃者にアンデッドとして操られてしまったと。そしてこれから操られたレイラ様が他のアンデッド達を率いて王国を襲撃すると。だからその前にレイラ様を殺して土に返さなければならない。それがルイホルム公爵がレイラ様の命を狙う理由ですよ。」
「あのうやっぱり全然意味が分かんないんだけど?」
「言ったでしょ、心が腐り果てていて自分を顧みない男だと、あの男はレイラ様が出ていったのをなかなか認めませんでした。そしてようやくレイラ様が出ていったのを認めたと思ったら今度はレイラ様が誘拐されたと言い出したんです。そして今度はアンデッドが襲ってくるとか言い出している始末です。もちろんレイラ様がご自身の判断で家を出ていかれたと何度もあの男に伝えました。レイラ様の置手紙もちゃんとあの男に見せました。ですがあの男はレイラ様が出ていった現実を受け入れませんでした。結局あの男は自分のせいでレイラ様が出ていってしまったとは考えなかったんですよ。」
「つまりあの男はレイラ様が自分を見限られたと認める事ができないから、レイラ様が誘拐されたとかアンデットとして操られているとか騒いでるわけですよ。レイラ様を殺そうとしているのも全て奴の心の狭さが原因なんです。」
リーゼが呆れた様子で言いました。
「まあ知ってた事ではあるけど、なんて心の狭い男なのかしら。」
ソフィアもため息をついていました。
「本当ね、自分でやった事すら受け入れられないなんて、器が小ささすぎるでしょ。」
アイザックが言いました。
「呆れてものも言えないな。」
マロイがマスタングに言いました。
「マスタングさん、レイラ様を見逃してくれないか?」
「それは無理だ。」
「もしかしてレイラ様を恨んでいるのか?」
「まさか、レイラ様の命を狙ったあっしの言葉なんて信用できないとは思いますが、あっしも含めてここにいる全員レイラ様には感謝しかありません。レイラ様はあっしらの事をいつも気にかけてくださいました。少なくともあんな頭のイカレた公爵なんぞよりはるかに感謝しています。」
「だったらなんでよ、あなたもレイラが全然悪くないって分かってるじゃない?」
「あの男は取り返しのつかない事をすでにしてしまっているんですよ。」
「アイツが何をしたの?」
「アイツはルイホルム公爵家に仕える使用人達をたくさん殺したんですよあっしの妹もアイツに殺されました。アンデットとして操られているとか意味不明な事を叫びながらね。たぶん100人以上の使用人達が殺されています。家族全員で公爵家に仕えている者がほとんどです。ここにいる者達は実質的に公爵に家族を人質に取られている状況なんですよ。」
私はマスタングさんに尋ねました。
「それじゃあマスタングさんも?」
「ええ年の離れたルーガという弟がまだ公爵の元にいます。もしレイラ様を始末しなければアイツが弟に何をしてくるか分かりません。」
「アイザック、これは直接問題を解決するしかなさそうだな。」
「そうだな。だがマロイ、これは中立組織である冒険者ギルドがやることではないのだろう。」
「やむを得ないだろう。このままレイラさん達を見過ごす事できない。」
「うむ、そうだな。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます