第5話
それから数日後王都近郊から少し離れた町クリスタの冒険者ギルドにレイラの姿があった。
ギルドの中を掃除しながらレイラは長身で金髪で容姿の整った男性に話しかけたのでした。
「勇者マロイ様、本当にありがとうございました。」
私はマロイ様へのお礼を言いました。
「いえいえ、レイラ様には何度も助けて頂いておりますからね。ようやく恩返しができるというものです。」
マロイ様が私にそう答えてくれました。
そるとソフィアがマロイに言うのでした。
「私たちまで押しかけてすいませんでした。」
「リーゼとソフィアもありがとね。」
二人が私に言いました。
「別にいいって、親友の一大事だからね。」
「こういう時こそ頼ってほしいもんだよ。」
「冒険者ギルドに匿ってもらうのは案外有効かもしれないわね。」
「実家に戻るとアイツが公爵家の影響力を使って無理矢理レイラが連れ戻される可能性も十分に考えられたからね。」
「冒険者ギルドは中立組織だから王家ですら簡単に手出しはできないからね。」
「冒険者ギルドのみなさんにはご迷惑をおかけしてしまいますが。」
「レイラ様お気になさらずに。レイラ様には前に手を貸して頂きましたので、その恩返しができて我々としても嬉しいのですよ。」
「そういえばレイラ、この前手紙を書いてたよね?誰に出したの?」
「フライド国王様に公爵家を出ましたって伝えておいたんだ。セリスの首飾りも返しておかないといけなかったし。」
ソフィアが頷きながら言いました。
「なるほどね。」
「ていうかさレイラ、マロイ様と知り合いだったんだね?」
私はリーゼに言いました。
「うん前にマロイ様と一緒に魔物と戦った事があるのよ。」
「ねえこのマロイ様ってそんなにすごい人なの?」
「ちょっとソフィア失礼だよ。マロイ様はこの世界の脅威になっていた魔王ギールを倒してこの世界を救った大英雄様なんだよ。」
「大英雄様などと言われると恥ずかしい限りですが。確かに魔王ギールを倒しております。」
するとリーゼが私に尋ねてきました。
「それでどういう経緯でレイラはマロイ様と知り合ったわけ?」
「うーんそれが最初の経緯は私もよく知らないのよ。」
すると後ろから声が聞こえてきました。
「それは俺から話そう。」
後ろを振り向くと体格の良いいかつい顔の冒険者の男性が立っていた。
「戻ったのかアイザック。」
マロイ様がその冒険者の男性に言いました。
「ああ新鮮な情報をたっぷり仕入れてきたぜ。」
「アイザックさんはあの人が依頼に行った時の事をご存じなんですか?」
「ああ実はユーゲルス公爵がこの冒険者ギルドに依頼を出しに来た時に対応したのは俺でな。」
そう言うとアイザックは当時の状況を踏まえて話し始めました。
冒険者ギルドの応接室にユーゲルスがやってきて、魔物退治の依頼をしにきていたのだった。
「ありがとうございます。報酬は確かに受け取りました。」
ユーゲルスが席から立ちあがると外に出ようとした。
「では討伐の方はよろしく頼むぞ。」
ギルド長を任されているアイザックがユーゲルスに答えた。
「はいお任せください。」
するとユーゲルスが思い出したようにアイザックに言ったのだった。
「そうだ、言い忘れていたが冒険者達がハーレイドに入る事は許さんぞ。」
アイザックがユーゲルスに聞き返した。
「へっ??」
「実は昨日の晩に夢を見てな。よそ者をハーレイドに入れてはならないという内容だった。だからハーレイドには入るな。分かったな。」
「ちょっと待ってください?」
「なんだ?」
「あのう、今回の魔物討伐して欲しい場所というのはハーレイド領内にあるトリエス鉱山とバイス峠の魔物討伐ですよね?」
「そうだ、同じ事を二度言わすな。」
「領地内に入らずにどうやって魔物討伐をしろと?」
「冒険者なのだから離れた場所からでもこう腕を振ってボボーンババーンで魔物を倒せるだろう。なにせ冒険者は魔物討伐の専門家なのだからな。」
「あのういくら冒険者が魔物討伐の専門家といっても領地内に入らずに魔物討伐をするのは不可能です。それにボボーンババーンとかいう魔法も特技も存在しません。私はその言葉を聞いた事はございません。」
ギルド長の言う通りであった。ボボーンババーンという魔法も特技もこの世界には存在しなかった。
ユーゲルスは冒険者という存在をよく知らないために、冒険者という存在を大きく勘違いしていたのだった。
だがユーゲルスは怒り始めたのだった。
「なんだと、なぜそんな嘘をつくのだ?」
アイザックが必死に弁明をしたのだった。
「嘘ではございません。事実を申し上げております。」
「冒険者なんだからボボーンババーンができて当然だろう?それとも貴様このルイホルム公爵の頼みは聞けぬと言いたいのか?」
「そういう事ではございません。ルイホルム公爵様に含む所はございません。是非とも公爵様の依頼を受けたいと思っております。」
「ならばボボーンババーンを使って魔物を討伐すればいいだろう。冒険者達にはハーレイドの外からボボーンババーンを使って魔物討伐を行うのだ。いいな?」
「そういってルイホルム公爵様は去っていったのです。」
アイザックは説明を終えたのだった。
この話を聞いていたリーゼがアイザックに尋ねた。
「なにそれ?」
「ルイホルム公爵様との交渉は本当に骨が折れます。」
「それどうなったんですか?」
「どうするかみなで話し合い、レイラ様にご協力を仰ぐ事にしたのです。」
「私がまずマロイ様達をこっそりとトリエス鉱山にお招きして魔物討伐を一緒に行ってもらったのです。そして一通りの討伐が終わった後でマロイ様達を領内の外にお送りしました。」
「その後でルイホルム公爵様の前で冒険者達が爆発魔法のファイアーボールをトリエス鉱山に向けて放ったのです。それで何とか事なきをえました。」
リーゼが呆れた様子で言った。
「めんどくさ。」
アイザックがリーゼに言った。
「ルイホルム公爵様はその後も無茶苦茶な依頼をされてきたので、その都度レイラ様のご協力してもらっているのです。」
「レイラ、本当に苦労してるわね。」
「それでアイザック、何か新しい情報は手に入ったか?」
「ああそれがな、いろいろとおかしな事になってるみたいだぞ。」
「おかしな事?」
「それがなルイホルム公爵が葬式を執り行ったらしいんだ。レイラさんの葬式を。」
「私の葬式ってどういう事ですか?」
「うーん、分からない?」
「他には?」
「ミルテイン王国の騎士達が聖水を集めてるそうだ。」
「聖水を集めている。アンデッド対策のためか?」
「たぶんそうだろうが、アンデッド対策をする理由が分からん。」
「アイザックどう思う?」
「さあな?全然見当がつかない。ただ嫌な予感しかしないな。」
「同感だ。これは備えておいた方がいいかもしれないな。」
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