第8話 紅の迷走

紅の双璧が自身を見つめ直す回です





車輪の惑星,宇宙船内コーダの部屋




紅     「頼みがある。スミレと俺の仲を最悪にしてくれ」


コーダ   「あははははは、強くなれるのならいいじゃないか。


       真面目に修行すれば私たちは倒せるかもしれないし」


紅     「あんな体力馬鹿を相手していては


こちらが持たん!!なんでメイド服なのだ!」


コーダ   「ああ、基礎鍛錬コースか。懐かしいなぁ」




 待たせたな諸君、この俺、紅の双璧は真紅のツインテールで


漆黒の服をまとう魔法少女なのだが、訳あってメイド服を着ている


電気と魔法で動く等身大ハイブリットマシーンに搭乗中、


俺本体は15cm。今はコーダの部屋で説得中だ。




 蒼転寺コーダ。ランの姉であり緑髪に白衣、片眼鏡で医者


属性てんこ盛りだが、超反射神経でバイクを駆る一面もあり


スミレを止めることができる実力の持ち主。


魔法少女の力を秘めているが最終兵器なため温存中




 蒼転寺スミレ。コーダと結婚したメイド。黒髪に半袖だが手袋で素肌は


守られている。ブラシとモップではなく、木刀と竹刀をクロスさせ


背中に刺している。修羅!悪鬼!パワハラ!レギュレーション違反!




紅     「とにかくだ!スミレが苦手なものとかないか?


      奴が俺に興味を抱かなければ平和になるのだ!!」


コーダ   「知ってどうなる?今逃げたところで強くなれないぞ?」


紅     「なろう系だぞ!!チートパワー俺だけに渡せよ!!


      ハーレム王になって偉人として教科書載りたいのだよ!!」


コーダ   「なろう系にも色々あるだろう?強いだけが正義じゃないさ」


紅     「”#RTしてくれた人の小説読む”のタグに


      前作の怪文書送り付けたら


      ”募集要項読みましたか?”と門前払いされたんだぞ!!」


      (注意、作中でのフィクションだ!!)


コーダ   「あはははは、個人によって読みたい作品の解釈が違うんだ。


      縁がなかったと思って諦めればいい」


紅     「どうしてこうも世界は俺に厳しんだ」


コーダ   「それが大人になるってことさ。こうやって笑い話にできる」




紅     「違う違う!こんな怪文書のことなど心底どうでもいい!


      問題はスミレだ。なんだあの強さは!傷一つ付けれなかったぞ」


コーダ   「ああ、スミレ君の強さは私と共に戦った時間の蓄積だからな」


紅     「時間の蓄積?」


コーダ   「元々私もスミレ君も規格外の強さではなかったさ。


      ともに競い合う仲間がいたからこそ、強くなったんだ」


紅     「いや、才能あっただろ。二人とも」


コーダ   「そこで終わらなかったから今の強さなんだ。


      全力で楽しんでたら人間の枠を超えていた」


紅     「人外のトレーニングが耐えられるわけないだろうが!


      もっと楽な方法とかないか?」


コーダ   「あるぞ?」


紅     「でかした!!」




母艦外。疑似体育館内




用意されたのはプラスチックの食器と玩具の食材。


さらに直線の長くて細い木でできた平均台


母艦近くに魔法で作った疑似体育館での訓練のようだが


これでどうしろというのだ!!




コーダ   「両手にお皿と食材を乗せて、落とさずに


      細い平均台を渡ればいい。シンプルだろう?


      安全のためマットを敷いたから存分に転んでいいぞ!」


紅     「平均台でなく白線のテープじゃダメなのか?」


コーダ   「バランス感覚を養うためだ。それに派手に転んだほうが


      次失敗しないよう頑張れるしな。」


紅     「失敗する事前程か、ならば一撃でクリアして見せよう!」


なんの弊害もなくクリア。いや拍子抜けだな




コーダ   「ではこんなシチュエーションはどうだ?」


紅     「雨だと?雨の中食材を運ぶメイドがどこにいる!!」


コーダ   「あはははは、物は試しだ。やってみるがいい」




 魔法で降らせた雨の中、進んでいくうちに違和感を覚えた


メイド服が水を吸って重くなっていた!


それだけではない!皿にも水がたまりバランスが崩れ・・・。


紅     「うおっ!!足が!!」ばたーん


盛大に転んだ。雨の影響で平均台から足を滑らせたのだ。




紅     「何故こんな簡単なことで失敗するのだ!!」


コーダ   「そこだよ、敵は雨天でも待ってくれないさ。


      悪天候、服の重さ、挙動の悪さ、足回りの不具合。


      実戦ならただでは済まなかったぞ?」


紅     「ならばもう一度だ!!」


コーダ   「これはマルチタスクの訓練でもある。


      言ってしまえば脳の並列処理を鍛えるのさ」


紅     「だが、魔法を使え


コーダ   「当然魔法は禁止だ。環境を中和するのに魔力使うのは


      隙が生まれるからな」


この人怖いぞ。発言かぶせてくるタイプだ。


流石はランの姉。相手の感情を計算して発言する人種




コーダ   「ふむ、練習が必要だな。軽食作ってくるから


      サボるんじゃないぞ?」


紅     「この程度で挫折などせぬ!!」




とはいってもだ。何度も挑戦しているが解決の糸口が見えない。


そこにやってきたのはリエ達だった


      


リエ    「紅、何でずぶ濡れなのよ。というかスミレさんが


      探してたわよ。なんかすごい速度で外出て行ったけど」


ラン    「随分と苦労してるわね」


カトレア  「風邪ひいたらどうするのよ!はいタオル。


      洗わずにそのまま返してくれていいから♪」


キキョウ  「捨て犬みたいにビショビショでござるな♪」


クローバー 「コーの字から呼ばれて来たものの状況が読めぬな」




よりにもよって過去に敵対したメンバーが集まる。


コーダが呼んだと言っているが何のためだ?


笑いものにされるかと思ったが逆に声援を送っている。


止めろ!俺は善意には弱いんだ!!


あとラン!俺を見世物にして商売始めるな!




紅     「ラン!ホットドッグの匂いで気が散るからやめろ!」


ラン    「ちゃんと紅の分も取ってあるわよ?


      ただしクリアできたらだけど☆」




リエ    「ふぁんふぁりにゃしゃいよ! (頑張りなさいよ!)」


紅     「口に物入れながら喋るな!リエ!行儀悪いぞ!」




カトレア  「応援も熱が入ると汗かくわね。このタオル使っちゃお♪」


紅     「カトレア!衛生面でダメだろ!子供が真似したらどうする!」




キキョウ  「紅がんばえー。ってかんじでペンライトを振るでござる」


クローバー 「うむ。くれないのじ、がんばえー」


紅     「原初のAIに変なこと教えるな!キキョウ!!」




何だこれは!大喜利大会になっているぞ!絶賛失敗中の俺だが


リエたちが来る前のほうがはるかに集中できていた!


「あはははは」という笑い声が響き、コーダが現れる




コーダ   「これで分かっただろう。紅君!君の弱さが!」


紅     「弱さだと!この状況でまともにやれるやつは居ないだろ!」


リエ    「中二病っていっても、何かに影響されたことが多いの。


      だから見た目だけ真似しても現実とのギャップで崩壊する」


ラン    「本物とコピーの違いって要は対応力の差よ。


      その人格で修羅場をくぐっているからこそ、


      取れる戦術が多くなるの」


カトレア  「戦いにイレギュラーは付き物よ?この程度のボケは


      片手間で処理してもらわないと、ツッコミ役は務まらないわ」


キキョウ  「紅殿は真面目でござるからな。今すべきことは


      料理を運ぶことでツッコミではないでござろう?」


クローバー 「己の器が完成する前に人の真似をしても、


      結局は器以上の物は入らぬ。


      つまり基礎を磨けという事じゃ」




紅     「言いたい放題言ってくれるな!ならばこれをクリアして見ろ!!」


リエ    「サブアームで傘差せば楽勝じゃん」ドヤァ


ラン    「メイド服を防水加工にするわ」


カトレア  「時間をかけずに一気に走り抜ける!!」


キキョウ  「靴裏の摩擦の高いゴム素材にするでござる」


クローバー 「原初のAIの力、試行回数の暴力でクリアルートを出すのじゃ」


コーダ   「あはははは、自動操縦バイクなら一発だぞ?」


紅     「全員まともに攻略してないではないか」(溜息)




俺以外全員一発クリア。


何と表現すればよいのだ?ルールの穴をついているというのだが、


確かに魔法は使っていないが、これが正解と素直に喜べないぞ?




コーダ   「私達が自分の持ち味を生かし攻略しているのに対し


      紅君は自身の長所を生かし切れてない。


      君に有って私たちにないものが分かればこの課題は


      クリアできると思うぞ」


紅     「それが分からぬから、こうして頭を下げている!!」


コーダ   「これは学園のテストとは違う。故に正しい回答など存在しない。


      人の真似をしたところで別の壁に当たり、挫折を繰り返すのが


      オチだ。だが、自己完結型の紅君が私たちを頼ったのは


      いい傾向だ。あはははは、今日はご飯をお代わりできそうだ!」


ラン    「コーダ姉さん、ストレスで小食だものね」


コーダ   「それは医者時代の話だ。今は療養中だからな」


紅     「あのコーダが、療養だと?」




コーダ   「大した話じゃないさ。後天的遺伝子治療、つまりは


      人類の設計図であるDNAを後から書き換える手術。


      ただ本人の性格が変わってしまうからな。遺族からは


      クレームの嵐さ。そこで私は壊れてしまったんだ」


紅     「そんな素振り一度も見せてないではないか!!」


コーダ   「年下に大人の現実なんて見せられないさ。


      減点方式の人生なんぞより、加点方式の生き方を


      示したほうが絶対にいい!!」




年上ってやつはどうして自己犠牲の強いやつばかりなんだ


ラン、カトレア、クフェア、スミレ、クローバー、コーダ。博士は違うがな




紅     「そうか、すまなかったな、気付いてやれなくて」


コーダ   「君が謝ることじゃないさ。スミレ君が支えてくれたから、


      いや今現在、皆が私を救っているからな」にっこり


紅     「本当にすまない」


リエ    「紅!あんただけの長所って私分かったわよ?


      まず落ち着いて状況を整理しなさいな」


紅     「俺には機械知識も、手芸も、バイクの才能すらない!


      なあ教えてくれ、俺は何者なんだ?」


何かにすがるような声を出す。コーダに無理な負担をさせていたか、


自分自身の不甲斐なさか。目の周辺に水滴が集まる。


違う、これは雨だ。俺の感情ではない




キキョウ  「紅殿ならきっと過去の自分を払拭できるでござるよ?」


カトレア  「キキョウ!!自分が何言ってるか分かってるの?」


クローバー 「よい機会じゃな。安心せい。我らがついておる」




私はランが好きです。私はランが


ラン    「敵が現れたみたい!私たちは行くけど、無茶はダメよ?」


紅     「ああ、行くがいい」


カトレア  「魔法で乾かしたから新品同様よ?頑張ってね」




カトレアからタオルが渡される。こんな時まで人の心配とは恐れ入る。


敵との戦闘班と救護班で多めに人数を割いている影響で


今この場には俺一人・・・いや違う。






紅     「居るのだろう?スミレ」


スミレ   「はい、紅様」




ドアの陰からスミレが出てくる。もしかして


隠れるの下手なのか?




スミレ   「一部始終を見ました。紅様も苦労しているようで」


紅     「誰のせいだと思っている!!」


スミレ   「弱さは罪ですよ?誰も守れないですし、自分すら救えません」


紅     「だから、俺は俺自身に勝負を仕掛ける。


      後のことは頼んだぞ。スミレなら俺程度は止められるはずだ」


スミレ   「紅様、一つだけアドバイスを。昔と違いあなたは


      一人ではありません」


紅     「ああ、わかっているさ。」


自分の意識の奥へ奥へと進む。リエが完成させたシステム”紅の双璧”を


俺自身が起動させることになるとはな。




”脳内快楽物質の増大および


酸素供給不足による脳がマヒした思考能力の低下”




2つの要因で双璧。ランナーズハイとかゾーンと呼ばれているものか。


思い描いたイメージを具現化する脳のリミッターを外した状態。


俺の意識は深く沈む。やがて現れたのはもう一人の俺だった。




後書き

紅   「また書き方変えたのか!この怪文書!


    以前より場所の把握はできるようになったが


    これでいいのか?」


リエ  「テンポの為よ?サクっと読める怪文書実現のためなら


    超大国の映画シナリオの書き方から、サムライ国の脚本まで


    全部のいいとこどりをするまでよ!!!」

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