アナザートーク1・レッド&ブルー

【Side:レッド】

 守さんの最初の印象は、「ナンパされるとかめんどくさいな」だったかな。

 背が高くて、ちょっとだけ筋肉質で、でも優しそうな顔をしているとは思ったけど、葵とクロエがはぐれちゃってたし、4人で楽しむつもりだったから、素直にめんどくさいって思ったよ。


 なんていって断ろうかなとか、そもそも大学生ぐらいに見えるけど、私が女子高生って分かってるのかなとか、いろんなことを考えてたね。

 そうしたら、真城もナンパされてることに気づいて、いい逃げ道が出来たって思ったけど、真城の相手がちょっと悪そうな人で、あの娘の彼氏を思い出してちょっとうんざりしたり。


 あの娘は、そういう人を引き付けるオーラとかがあるのかな。


 でもあの人は、手首をつかまれて痛そうにしてる真城の顔をみて、すぐに助けに行ってた。私がなんて言って助けようって考えてる間には、真城と男の間に入って煙に巻いてた。


 受験が近いこともあって、揉め事になったら嫌だなって考えてたけど、そんな風にも一切ならなくて。

 本当は素直にありがとうって言いたかったけど、さっきナンパされた手前、ちょっとカッコつけたくなっちゃって、変なこと言っちゃったな。


 葵とクロエと合流して4人で話してるときも、皆のことをよく見てて、全員にそれなりに気を配りながら、でも個人個人の会話をちゃんと聞いてて。


 ああ、この人って、すごくいい人なんだろうな。って言うのが伝わってきた。

 それは守さんが撮った写真を見たときにも思った。どれもこれも丁寧に撮られてて、海の写真はキラキラ輝いてたし、雪像の写真は目に前にあるみたいに迫力あったし、ただの焼肉の写真だって、テレビでみる映像みたいに見えた。


 写真なのに映像みたいっておかしいよね。

 でも、そのぐらい素敵で感動したっていうこと。


 写真といえば、私たちが女子高生だって言ったときの顔が面白くて、写真撮っておけばよかったなって考えてたんだ。別にだますつもりはなかったけど、言い出せなくて……。

 ポジティブに考えれば、大人っぽく見えてたってことでいいのかもしれないけど。


 まぁ、大人が未成年に手を出すリスクみたいなことを考えたら、知らなかったとはいえ悪いことをしちゃったなとは思う。それでも、年齢関係なく、遊んでくれる言ってくれたこと嬉しかったな。

 それに、真城のことを話しても、ちゃんと受け止めてくれたこともうれしかった。


 真城を迎えに行ったときに、熱中症とか夜中に女の子1人とか、とにかくいろんな悪いことを考えて、つい言い過ぎちゃったのを止めてくれたし、なんかお兄ちゃんっぽいなとか思ったり。

 まぁ、実際に年上なんだからお兄ちゃんっぽくて当たり前なんだけど。


 深く首を突っ込むわけじゃないけど、優しく諭してくれる感じ。私にお兄ちゃんが居たら守さんみたいな人がいいななんて考えてみたり。


 綺麗な花火を背景に撮ってくれた写真、すごく綺麗だったなぁ……。


【Side:ブルー】

 はぐれた茜たちと合流したら、なんか増えてた。

 大人の人にっていう言い方は良くないのかもしれないけど、4人で遊ぶつもりだったのにっていう思いもあるから、ちょっとだけ許してほしい。


 絡まれてる真城を助けてくれたのはありがたいと思った。いつも頼りになる茜が妹みたいに甘えて絡んでるのが珍しいし、コミュ障で私たち以外とはあんまり話せないクロエがなついているのも驚いた。


 私も、身長のせいで怖がられたりイジられたりするのに、この人はそういうのが一切なかった。まぁ、向こうの方が大きいからって言うのもあるかもしれないけど。


 いつもだったら、睨みを利かせて追い払うところだけど、話しやすい茜に対してグイグイ行くわけでもなく、ノリが難しいクロエを邪険にすることもなく、ましてや男の人が苦手な真城が楽しそうに笑っているのだ。お祭りの雰囲気もあるし、少し様子見してもいいかなって思ってた。


 でも、どことなく軽薄そうでナンパ慣れしてる雰囲気があって、だからわざと萎えるようなことを言って牽制みたいなことをしてみたり。


 まぁそれもうまくかわされて盛り上げる要因になっちゃったけど。

 だって、何を言ってもいい感じにツッコんでくれるから途中から楽しくなってきて……。


 いや、あれはお祭りの雰囲気が悪い。私じゃない。

 そのあと、公園で花火を見てるときも皆楽しそうで、私もついつい普通に楽しんだりもした。とくに見せてもらった海の写真は、いますぐ泳ぎたいって思うぐらいに綺麗だったし。


 受験生の夏休み。遊んでばかりいられないけど、海に行きたいな……。

 茜や真城と一緒に。クロエは誘っても来ないかもしれないけど。いや、案外寂しがり屋なところがあるから、乗り気じゃないけど皆が行くならって言ってくるかもしれない。


 そろそろ帰ろうかなって時間になって、ホテルとかに誘われたらぶん殴ってやるなんて考えてたけど、むしろその逆で、4人全員が送っていけないなんて話になった。


 ドヤ顔で言ってたから、カメラと同じで車もこだわってるのかと思ったら、そんなことなかった。


 結局、真城がクソ彼氏の迎えを呼んで、私たち3人を送って行ってくれることになったけど、平気そうに笑う真城の笑顔はちょっと陰っていたのを覚えてる。


 たぶん、この娘は11時ぐらいになっても来ないことで諦めて、電車で帰るんだろうなって考えてたし、その時1人心細く夜道を歩く彼女のことを考えて憂鬱になったりもした。


 茜に相談しようかなと思ったけど、お兄さんが居る前で、なんて説明したらいいかわからなくて。かといって、さっきまで散々疑ってたこの人に頼るのは虫が良すぎる気がして……。


 これは後から聞いた話だけど、お兄さんと茜が真城を迎えに行ったらしい。まぁ、私の予想通り、クソ彼氏はこっちに来る気配もなかったとか。


 それでもけなげに信じ続ける真城がバカだなと思う反面、そこまで人を愛せて羨ましいって思ったり、結局そんな彼女を心配してる私も同じぐらいバカだなって思った。


 まぁ、何が言いたいかって言うと、ちょっとした思い出にはなったし、そこまで悪いお兄さんではなかったかなって思った。


 男の人に頭を撫でられるなんて、初めての出来事だったから、ちょっと照れたし。

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