第31話 ライバル ~恋~

 凪ちゃんから一週間限定で恋人になるという話を聞いたとき、率直に言えば嬉しかった。


 今まで何年間も幼なじみとして我慢して過ごしてきたから、少しだけでも凪ちゃんの恋人になれるなんてって。


 でもそれはわたしだけじゃなかった。


 優良ちゃんとも付き合うことになるというのを聞いたときに、わたしの考えは百八十度変わった。


 全然嬉しくない。


 凪ちゃんがわたし以外と付き合うなんて嫌だ。それが期間限定だとしても何だとしても。


 凪ちゃんと一緒にいられない一週間は苦痛でしかなかった。


 もちろんずっと一緒にいられないわけではない。


 でもわたしが一人で登校してるとき。わたしが一人でお弁当を食べてるとき。わたしと一緒にいないとき全て。


 その時に凪ちゃんが優良ちゃんと一緒にいて、恋人みたいなことをしていると思うとわたしは耐えられなかった。


 いつもなら多少は我慢できていたけれど、凪ちゃんと優良ちゃんの関係がただの幼なじみではなく、恋人という関係になっていることが耐えられなかった。


 本当はそんなことやめて欲しかった。わたしはつらいからそんなことやめてって、そう言いたかった。


 でもわたしはやっぱり言えなかった。


 優良ちゃんだって凪ちゃんのことが好きなんだから、凪ちゃんが平等にわたしたちに接するのは当たり前。


 それに、きっと凪ちゃんも凪ちゃんなりに一生懸命に考えた結果が一週間限定のお付き合いというものだったのだろう。


 それを否定することはできなかった。


 結局、わたしはどんな凪ちゃんでも好きだから。


 自分が重いという自覚はある。だって普通の人ならこんなに嫉妬なんてしないし、フラれたら新しい恋に目を向けている。


 そういう人たちが本当に羨ましい。


 わたしはすぐに嫉妬しちゃうし、凪ちゃんにフラれるとか考えただけでも耐えられない。


 わたしをこんな気持ちにさせた凪ちゃんとはこの恋人期間、ほとんど口を聞いてあげないつもりでいた。


 わたしは性格が悪いから、わたしが苦しんだ分、凪ちゃんも苦しんだらいいって思ってしまった。


 でも凪ちゃんが不安そうな顔をしながら、ごめんって謝ってきたとき。


 わたしはわたしがが本当に嫌なことをしていることに気が付いた。


 別に凪ちゃんはわたしに嫌な気持ちにさせたくてそうしたわけでないのに、わたしは明らかに凪ちゃんを嫌な気持ちにさせようとしている。


 わたしはなんて小さい人間なんだろう。本当にこんな自分が嫌になる。


(はあ…… でもまあこんなこと考えても仕方がない)


 わたしは嫌な沼にはまりそうだったので、すぐにネガティブな考えを吹き飛ばし、前を向くことにした。


 許してあげる代わりに凪ちゃんになんでも一つお願いを聞くようにとお願いをした。


 凪ちゃんの弱みに付け込むような形になってしまったけど、もう時間がない。


 わたしとの恋人期間が終わったら、すぐに答えを出すらしいと優良から聞いた。


 それまでになんとか凪ちゃんに好きになってもらわなくては。


 大丈夫。わたしはもう前を向いている。わたしなら凪ちゃんを振り向かせることができる。


 だってずっと一緒にいたんだから。


 わたしが凪ちゃんの一番になるんだ。




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