再会

篠原愛子しのはらあいこ


その名前は、僕が中学二年生のときに失恋したあの子と全く同じ名前だった。


(なんで篠原さんがこの学校にいるんだ!)


ここで少し、僕の高校受験について話そう。


僕は自分で言うのもなんだけど、そこそこ頭がいい方だと思う。でも、将来の夢などは特に決まっていなかった。


よって、


「近くで1番偉い高校に進学すればいっか」


という安直な考えの下、この高校を選んだのだ。


そのため、このような事態は全くの想定していなかった。


(よかった。篠原さん以外は元々僕がいた中学出身はいないな)


「コウくん、どうかした?」


「だ、大丈夫、なんでもない」


「そういえば、孝憲くん。職員室に行かないといけないって言ってませんでしたっけ?」


「あ、本当だ」


「コウくん、初日から何しでかしたの?」


「何もしてねぇよ。入試が主席だったから、新入生代表挨拶をしろって呼ばれてるんだ」


僕は夏樹と優里と別れて職員室に向かった。



(この学校マジで広いな)


校舎の中を歩きつつ、そんなことを思っている内に職員室に着いた。


「失礼します。金木孝憲です。新入生代表挨拶の件で来ました」


その後はつつがなく話が進み、すぐに解放された。


「失礼しました」


教室に行くために1人で歩いている途中、なんとなく下駄箱の方に視線を向けると、上履きを履こうとしている篠原さんと目が合った。


「お、おはよう。久しぶりだね」


「……」


篠原さんは僕を無視して、僕の前を通り過ぎていった。


(無視か……まあ、仕方がないか。中学の頃は毎日告白をして、付き纏ってたからなあ。高校では距離を置くようにしよう)


篠原さんと距離をとりつつ、僕も教室に向かった。


教室に入るとすぐに、夏樹と優里が近づいてきた。


「どうでしたか?」


「や、特に何もなかったよ」


「コウくん。コウくん。そんなことより、さっきまで優里くんと話してたんだけどさ、今日学校終わったら3人一緒にゲーセン行かない?」


「お、いいね。優里はいいのか?」


「いいですよ。今日は学校が終わるの早いですし、ちゃんとお金は持ってますから(ドヤ顔)」


「じゃあ、決定だね。楽しみだなー。早く学校終わらないかなー」


そんなことを話している内に


ガラガラガラ


「皆さん、席についてください」


担任の先生がやってきたようだ。

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