第六話 お人好し
「お待たせー!
流奈特製のポークカレーだよー」
「おっ!
きたきた!」
六人分のポークカレーを並べ、私は席に着いた。。
「「「「「「いただきます」」」」」」
スプーンにライスとルーをいっぱいにすくい、頬張って食べた。
豚肉の甘さが口に広がり、少し辛味のあるルーとそれを緩和するライスが口の中を満たした。
うん、我ながら美味しい。
「おっ!なんだこれ!
辛いけどうめぇ〜」
カイがガツガツと食べ出した。
他の四人も次々にスプーンですくって食べ出した。
そういえば…ホミィちゃんやクラムちゃんは魔法が使えるって言ってたわね。
これは異世界の科学を研究できるチャンスかも!?
♦︎
流自分の部屋にこもって魔法の研究をしている時、コンコンとドアを叩く音がした。
「流奈、今廊下に出れるか?」
「その声はウラヌ?
部屋に入ってきていいよ。」
ガチャとドアを開け、ウラヌが入ってきた。
「すまないな、一番風呂を貰って。」
「全然いいよそんなこと!」
「そっか。
…ところで、ホミィとクラムの杖なんか部屋にいれて何してるんだ。」
ウラヌが私の机を指差して言った。
「異世界についての研究!
私、研究したり今までになかったものを作るのが好きなの!」
私はウラヌに向かって笑ってみせた。
「そうか。」
「あ、そうだ!
ウラヌ君の剣もよかったら…」
「これはダメ!」
ウラヌは突然驚いた形相でこっちをみた。
「これは亡くなった父さんの形見なんだ!
誰であろうと渡さない!」
「ご、ごめん…」
私が謝ると、ウラヌは何か気付いたような顔をした。
「いや、こっちこそすまん…
つい感情的になりすぎてしまった。」
ウラヌってそんなに父さんのこと、好きだったんだ…
でも私には…
「いいよ、全然。
ウラヌ君の気持ちも分かるもん。
私も産みの親、知らなくて…」
私が生まれた意味ってなんだろう。
「そうだ、私の部屋のベランダ、星がいっぱい見れるんだ。
よかったら一緒に見よう!」
窓を開け、ベランダに二人座り込んだ。
「それにしてもとんだ災難だったね。
同僚のナジン…だっけ、その人に裏切られるなんて。
会ったこともないけど、きっとひどい人なんでしょうね!」
「あいつはそんな奴じゃない…」
「え…?」
「あいつは人のことを思いやれて、ちょっとした気配りもできるいい奴だった。」
ウラヌは星を見上げながら言った。
「俺とあいつは住んでる町も一緒で、学校もずっと同じクラスだった。
卒業してからは俺とあいつでパーティーを組んだこともあった。」
「うんうん。」
私は頷きながらウラヌの話を聞いてあげることにした。
「もう、勘付いてると思うんだけど、俺人見知りなんだ…
学校に入学した頃、俺に友達はいなかった。
でも、あいつだけ話しかけてきてくれたんだ。
勉強でわからないところを教えてくれたり、魔法テストの練習にも付き合ってくれた。
でも、ある日を境にパーティーから抜け出して他人を見下すようになったんだ…」
夜空には星がキラキラと輝いていた。
ウラヌの顔も月の光を反射して少し光っていた。
「他人を見下したりしても、あいつはあいつだ。
何らかの理由があるはず。」
「お人好しだね、ウラヌ君も。」
「え…?」
「だって、一度裏切られた人のこと信じられる人なんて殆どいないもん。」
こんなにもお人好しだと、まるであの人みたい…
「そうかも…な…」
ウラヌが少し笑うと、気のせいか満月もさっきよりもっと輝いた気がした。
夢双戦隊 四季 @ontaikikou
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