第四話 メロンソーダアイス

 「アイスコーヒー1つとメロンソーダアイスを4つ、あとバナナオレ1つで。」


 …何故、俺が6人分の飲み物代を奢らなければならない。


 いつもの様に変身してテロリスト集団と戦っていると、謎の男女四人があまりにも質問を浴びせるので喫茶店に来たのに…まさか俺以外誰もお金をもっていないなんて…


 「で、なんであの人はあんなにも強いんですか!?」


 そのことを質問した女は杖をもっていて服装もファンタジー要素が強めのコスプレ、まるで魔法使いのような中学生っぽい子だった。


 「フッフッフ…

  それはズバリ!私が天才だからよ!」


 まーた、流奈るなの自慢が始まった。


 俺の彼女でもある流奈は顔立ちもよく、なんでもやってしまうほど器用で、そこらへんの大学の教授も顔負けするほどの天才だ。


 料理も上手で、いつも俺のために弁当を作ってくれる。


 ただ一つ、欠点があるとするならば、自慢癖があるところだ。


 人に褒められたり、羨ましがられると、すぐに自慢をはじめ話が止まらなくなってしまう癖がある。


 まぁ、そういうところも可愛いんだけど…


 「いま、陽斗はるとがつけているブレスは、人の体力や知能、限界を大幅に上げることのできる代物なの。

  なんといっても私が1か月かけて作ったんだからね!」


 「お待たせしました。アイスコーヒー1つとバナナオレ1つ、メロンソーダアイス4つです。」


 流奈が自慢を始めたところに注文しておいた飲み物が届いた。


 「これは一体、何という飲み物でございますか…?」


 もう一人の女が律儀に尋ねた。


 「お前ら、メロンソーダも知らねぇのかよ…

  とんだ田舎者だな。」


 「申し訳ございません。

  私どもの国ではこういったものは珍しく…」


 少し意地悪して答えてやったのに相手は気にしてないようだった。


 「それで、メロンソー…ダっていう飲み物はうまいのか?」


 日焼けのすごい男が尋ねた。


 「まぁ、いいから飲んでみな。」


 「そうそう、ものは試しって言うしね。」


 俺の後に続いていった流奈はアハと少し笑いながら言った。


 「「「「いただきます。」」」」


 そういうと、律儀な女はストローを使って少しずつメロンソーダを飲み、魔法使いみたいな女と、剣を後ろに担いでる男はスプーンでアイスをすくって食べ始めた。


 しかし、日焼けをした男はなにを思ったのか一気にソーダを飲み、アイスを一口で平らげてしまった。


 「なんだこれ!冷てぇー!うめぇー!」


 「ちょっとカイさん、行儀が悪いですよ。

  それにしても、なんですのこれ!とっても美味ですわ!」


 律儀な女は目を輝かせて言った。


 その時には、お互いに喫茶店に来た意味を忘れていた。


 俺達もそれぞれの飲み物を飲み始め、堪能していた。


 しばらく経って、剣を担いだ男がやっと口を開き素っ気なく言った。


 「…俺達は夢魔世界からやってきた勇者一行だ。

  よろしく。」


 「「ファンタジアトピア…?」」


 この日から、俺達二人の世界観と運命は大きく変わった

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