突入してくるいとこ(5)

 24:23


『寝た?』


『寝てる。』


 和祁がラインを飛ばすと、スイカは即返信した。


『眠らない?』


『乙ゲーの最中よ。』


『……』


『えっ!?ダメですか!?』



 こういう冗談を繰り返しても始まらないから、和祁は勇気を出して本題に入ろうとする。


『いや、ただ話あるんだ。』


 メッセージを送ると和祁はおちおちとしてきた。話したいことはスイカを怒らせがちだから。


 幸い今回スイカは即返信しなかったから、和祁は思考の時間を稼げた。


 彼はパロが来た時のことを思い出す。



『何?』


 1分間くらい経って、スイカが返信した。


『そのパロって子、ディス家でよく暮らしてるようだな?』


『そうかもね、どう?』


『だからスイカもそうやってみて?ディス家と誤解あるかも。よく頑張ればそっちに認められる可能性もあるって。』


 和祁は大きく息をついて、送信のボタンを押した。



『本気?』


 スイカからの答えは冷たい二文字。


『うん。』

 ここまでやってきて、和祁は進むしかない。


『そっちの部屋行っていたぶってあげるぞ!』


『 ! 』

 和祁は不安と恐怖を感じた。


『カツケはやはり、何も知らないね。だから今度はゆるす。』


 怪しい言葉だった。言いたいけど言えないような感じ。



 考えると和祁は眉を顰めた。


(なんの事情があるかな……)



『私こそディス家を許さないから。おやすみ。』


 スイカのメッセージは終わりを告げる。



 2025/3/25(日)ーーーー9:23ーーーーリビングルーム


 リビングルームでスマホをいじるのはスイカの習慣だ。


 広い場所が好きなわけではなく、賑やかさに憧れているのだ。


 ユミリが来て確に少しずつ賑やかになっている。しかしユミリがいるせいで、スイカは好きなはしたない仕草でくつろげない。


「ねぇ、ユミリちゃん、くっつかないでくれる?」


「でも、スイカちゃんが好きだもん。」


「何か……動き辛い……」


「さっきのゲーム面白そうですね。」


「あっ、うん。」


「わたしもやりたいです。」




 そういう会話を聞きながら、和祁はモ●ハンをやっている。野良部屋でキークエの手伝いをしている。野良はキークエをクリアしてチャットで『やっと緊急来たぜ』と送信した。


 でもしばらくまた彼のチャットがきた。『変だな』『会話あったのに、緊急出ない。』


 迷ったようだった。


 もう一人の野良は『キークエまだ残ってるじゃない?』とか言って、キークエを一つずつ訪ねたけど、答えはみな『クリア』だった。



 見るだけで入られない和祁は割り込むに禁じ得ない。『村や船に戻る必要?』と提案した。


『一度船に戻ります。』『少し待ってください。』という言葉を残して、その人は通信を切った。


「どうだろうな。」

 和祁は心配そうに呟いた。



「ねぇ、カツケ、デートしろ。」

 急に、近くから小さいけど通りのいい声がした。


「だめだ。今は約束あるんだ。」


 後ろのスイカに振り向かずに、和祁はゲーム画面を見つめてばかりいる。

(あの人が帰って僕いなくなったら悪いだろ。)



「今すぐじゃなくて、ゲームの誘いよ。」


「うん。ちょっと!データじゃなくて?」


「データは動詞じゃないのよ。」


「そうだな。えっ、デートって?」

 帰ってきた野良を無視したくらい、和祁は突然大きな驚き声を出してしまった。


「ちょっと黙ってろ。」

 スイカは思わずに低い声で注意しながら手を伸ばして和祁の口を塞ごうとする。



「デ、デート! ! ! ? 」

 ユミリは叫び出すと、慌ててぎこちない動きでソファーや机を越えてスイカの傍までかけついてきた。


「だ、抱きつくな。」

 スイカは慌てた。

(せっかくゲームに集中させたのに!バカカツケ!)



「わたしから離れないでよ、スイカちゃん!」


「離れないから、離せ。」


 スイカは泣き出しそうなユミリを見下ろすと、額から汗が出てくる。


「お嬢様の恋心はついに芽生えましたか。メイドとしてわたくしは感動しています。」


「マユミさんもかってに割り込まないで下さい。」


 さっきまでずっと姿を消していた真弓は急に現れた。



「恥ずかしがる必要ありません。年頃の女の子ですし♥」


「いや、そんなわけじゃないから……」

 スイカは弱気そうに応じた。彼女はとても緊張になっていて、和祁もからかってくれるのを恐れている。彼女は恋など気まずい冗談に弱い。



 慎重な和祁はただ傍観している。


「もう、騒ぐなよ。私かまデートするわけじゃないから!! 」


 スイカの怒鳴りが響き渡ると、皆が静まる。そしてスイカは和祁に向いて説明する。


「パロはカツケとデートしたいって。そういうメッセージだったから。」


「パロって、昨日の子よな?どうして僕と?」

 頬を赤くした和祁は謹んで尋ねる。でも心でははしゃいでいる。


(やはり誤解か……でも、もしかしてあのパロって子は僕のことが!?)


「どうせいたずらなんでしょ。」


「え?パロ様ですか?」


「真弓さんもパロのこと知ってるだな?」


「もちろんです。休みの時は常に来ますから。」


「そうなのか。聞いたことない。」


「カツケの親が来る時も私に教えないじゃん。」



「ええっ?パロって誰のことですか?」

 これではユミリだけが仲間はずれ。昨日パロとすれ違ったから。


「私のいとこだよ。とても面倒いやつ。いつも……いたずらしてて。」

 スイカは本来『いつもくっついてて』と言いたいところだったが、ユミリも同じような存在だと気付いて慌てて言葉を変えた。


「お仲良しですか?」


「いや、あいつが嫌いり変な提案ばかり出して、私を無理やりいろんなところに連れてて……」


「楽しそうです!」


「楽しくねぇ!私はただ一人でゲームやりたいの。」


 スイカの言葉を聞くと、和祁も思わず頷いた。以前の休みで彼はほぼスイカと合わなかった。用事がある時だけ、二人は合流する。そのせいで和祁はパロの存在を知らなかった。


 今度の春休みはユミリ事件のおかげで、和祁はスイカの屋敷に泊まっている。


「スイカちゃん、閉じこもるのは体に悪いですよ。」


「心配ない。武装学園のトレーニングは厳しいの。私は休めるうち思い切って休みたい。」


「でもお嬢様はパロ様と一緒にいた時、とても楽しく笑っていたのですね。」


「見、見間違えたんでしょ?作り笑顔でしょ?そもそもそれは遊びとは言えないって思うの!」


 指摘されたスイカは慌て始める。


 そんなスイカ可愛い。


 和祁は彼女の頭を撫でるに禁じ得ない。


 そのまま柔らかい長髪は本当に触り心地いい。


 撫でる和祁を放っておき、スイカは頬を膨らませて真弓をじっと見つめている。


「お嬢様がそうおっしゃるのなら、承りましょう。」

 真弓はいい加減冗談をやめた。


「と、とにかく、デートしろ、カツケ。ごっこにしていい。」


 スイカは頭を撫でされるのを堪能しているから振り向かずに言う。


「いや、でも、おかしいじゃねぇか。婚約のことも解決してないし。」

 和祁は物好きではないから、疑しく面倒いことに関わりたがらない。しかも、スイカの話によると、相手はとても厄介なやつらしい。

(スイカはただパロを僕に押し付けるつもりだろ……)



「その件は急用じゃないでしょ?別に明日結婚するわけじゃないよね。」


「いや、そのため怒ってたのはスイカじゃないか……」


「はぁ?文句ある?なら、もう撫でさせない。」

 言いながらスイカは頭を振って和祁の手を振り払おうとする。



「えへへ、和祁様は受けてみたら?どうせ春休みですし。」


「婚約の件は任せていいです。わたしも責任ありますから。」



「でも、でもまだ宿題あるだろ?【執行課】のクエを一つクリアするってやつ。もうすぐ春休みも終わっちゃうから、急がないとな。」


 和祁達は【課題】のことを話し始めると、真弓は黙って離れて歩いた。


「デートしてからも遅くないよ。夕べ一緒にクエ選ぼう?」

 スイカは冷静に答える。


「スイカちゃん!その『シコカー』というのは何ですか?」













































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