婚約破棄(4)

 一方、和祁は黙って食べている。


 普段なら和祁もスイカも大人しく静に食事する。ユミリが来てから、彼女はいつもスイカに纏ついているせいで、和祁だけがひねくれるように見えている。



(ところで今はカツケに話をかけるべきじゃないか!ユミリさん!)

 スイカは困りそうにユミリを見ている。でも和祁と真弓もいるから、彼女は直接にユミリを注意できない。


(どうしよう……)


 スイカは心配している。



「では、東雲さんがもらってください。」

 ユミリは食事のための紙で手羽先を包んで和祁に渡そうとする。


「えっ?」

「 ! 」


 和祁はぼうっとしていて驚き声を漏らしてしまった。


 スイカも呆れた。

(そん、そんなに大胆!?馴れ馴れしいじゃないか!間接キスじゃないか?えっ、ちょっと、私の箸だけが手羽先に触れていたから……って、間接キスのは私!?)


 なんでだろう、今スイカは悔しさを感じた。悔しすぎて混乱に落ちている。


「いつの間にでしょうか?和祁様とユミリ様もこんなに仲良くなってきて。」

 真弓は不思議そうに二人を見ている。


「ぼっ、ぼうっとしてんじゃねぇよ、速く答えてよ。」

 スイカが和祁を注意した。彼はまだユミリに答えていないから。


 それから、和祁はただちに手羽先を受け取った。ユミリも席に戻った。


「ちょっと!かってに受けたかよ!?」

 スイカはまたつっこんだ。


「あっ、はい。その、ユミリさん、ありがとう。」

 和祁は慌てた礼を言う。


「大丈夫ですよ。」

 ユミリは笑って答えた。



 そして、スイカはふと気付いた。


 さっき『大胆に行け』とユミリに伝えたけどーーーースイカの『大胆』とユミリの『大胆』の標準が違うのだ。


 だから、今ユミリは想像以上に和祁と馴れ馴れしいようにしている。


 故に、スイカは、ちょっと焼いている。まぁ、スイカの大胆の標準で行っても焼かない保証はないけど。


「本当に仲いいですね。」

 真弓はまた感想を言い出した。


「えっ?」

 和祁は迷った。確かに今のユミリは親しい。でも仲良くなっていないだろう。完全に兆しなかったし。


「本当にそうみえますか?わたしはちゃんと東雲さんと仲良くしますから!」

 ユミリは飛びつくと思われるくらいテンション高く言った。


「……」


 和祁は考え込む。


(絶対におかしいだよな!)


 と、和祁が判断した。本当に仲良くなっていてもユミリはそれほどテンション上がらないだろう。


 きっと何かあった。


 和祁は視線をスイカに送る。


(もしかして、スイカが何かを?)


 一方スイカはその視線に気付いていないフリをして黙って食餌していて、気配を消そうとする。

(私を求めるような視線なら嬉しいけど、そうじゃなさそうね……)


 それは、咎めるような視線だった。


(いや、モヤモヤ!私こそ悔しいのに!どうして私が過ちを犯したようになってるの!?)



 幸か不幸か、真弓もスイカの異状に気付いた。

「あらら、もしかしたら、これはお嬢様が努力した結果ですか?」


「いや、私何も!」


「スイカちゃんは……その、前にも教えられた……ほの、謙遜ですね!大変助けてくれたのに!」

 ユミリはまたスイカの傍にくっついできた。


 すると、話題の中心は自然にスイカに変わった。



 気配を消したかったのに、大失敗。



「ま、まさかお嬢様のおかげで、ユミリ様は和祁様と結婚する覚悟ができたというわけですか?」

 真弓は興奮しそうに質問した。


「冗談やめろ。」

 和祁は真弓を止めようとした。


「冗談じゃありません!答えてください、そういうわけですか?」

 普段優しい真弓は今、鬼のような目で和祁を見つめている。



「いいえ、わたしはーーーー」

 ユミリは和祁の代わりに答えようとしたらーーーーヨーク曲の声が突然響き始める。


 とてもあつい前奏曲である。


 和祁のスマホに電話が入ったのだ。


 彼はすぐ電話に出て、曲も共に消えた。



「スイカちゃん、なにそれ!いいですね!」


「あ、普通の曲かな。」

 スイカはもちろん気付いた、それはアニソンだった、そして自分も聞いたことがある。彼女もいい曲だと思っている。


(一流の末。王道的なだけに、普通。)

 スイカが心の中で評価した。



「いいえ!声大きかったけど、明らかでとてもいい曲と思います!聞きたいです!」


「そっか。」

 スイカは目を逸らした。

(やはりアニソンはめっちゃ刺激的よね……)



「わたしもこういう曲が好きです。常に聞きます。」


「おっ?」

 スイカはすこし驚いた。

(ユミリちゃんもアニソン聞く?まぁ、アニソンは世界中流行ってるから、変じゃないね。)


「そんな激しいmelodyと歌はいつもわたしをわくわくさせますの!特にheroicおじさんの声がーーーー」


「激しい曲だけど、heroic何か知らないけど、おじさん出ないよ。おじさん出たら耳破壊になっちゃうでしょ。」


 激しいメロディーはもちろん可愛い女の子の声と組み合わせるのだ!


 和祁とスイカの同感である。



「おじさんの曲ではありませんか?」


「逆、可愛い女の子だよ。」

 スイカは即答した。


「ええっ?なんか不思議ですね。やはり聞いてみたいです、」


「……ユミリちゃんはおじさんの曲好きなの?」

 スイカこそ驚いてしまった。


「そうですよ。」



 その時ーーーー


「えっ!?どうして?でも言っただろう……わかった、でも聞いてもらえますか?…………そっか、残念ですね……」


 電話が終わった和祁は絶望な顔している。



「どうしたの、カツケ?」


「いや、その……やばい。」


「言ってみて、一緒に頑張りましょう!」

「和祁様、一人で背負うのは悪い習慣ですよ。」



「その……」

 和祁が語り始める。

「こないだ、僕が婚約の破棄を申し込んだ。ラフェル家と連絡取れて、そのまま……許可をもらった。もう安心できるって思ったら、今そっちからの電話が入ってちゃって、婚約は続くって言われた……」


「ええっ!?」

 ユミリは一番先に一番大きい驚き声を出してしまった。


「どういうこと?」

 スイカも眉を顰めた。


「その……破棄の提案を誰かに強く反対されたみたい。」

 和祁は答えた。


「えっ?」

 スイカは声を漏らした。さっきの不快をもう不安に覆われてしまっている。


(どういうこと?そこまでしてカツケに繋ごうとするなんて……さっきユミリちゃんも婚約破棄したから、反対意見を出したのは婚約両方の意見を無視できる……すごい目上なのか……)



「では、わたしのも!?」

 ユミリは驚き声を出しながらラフェル家に連絡しようとする。

 

「なんのこと?」

 和祁は迷っとようにユミリを見る。


「さっき、ユミリちゃんも電話して……婚約を破棄したの。あの時許可を得たみたい。重要なことじゃないのに、どうして急に決定を覆されちゃったのかな……」

 スイカは声はすこし落ち込むように聞こえる。彼女は和祁を見る余裕もなく、心配しそうにユミリを見守っている。



 すぐ、通話が終わった。でも皆にとって長い時間だった。



「破棄できましたよ。」

 ユミリは大笑いを見せる。


「?」

「あれ?」

 和祁は真面目にユミリを見る。スイカもわけわからなくなってしまった。


「向こう何を言ってたのか、繰り返してくれますか、ユミリ様?」

 一般人の真弓は逆に冷静を保っている。



「えっと、その……わたしに、婚約破棄できたと知らせてくれました。そしてあんまり婚約者と仲悪くしないでと。」



「ちょっと、たしかに『破棄できた』って言った?相手は?」

 スイカは頭の中に大胆な発想が浮かんできた。


「いや、その『提案が許可されました』と。えっと、どうしたのですか?スイカちゃん?」



 スイカは急に頭を下げていて、雷をためた雲みたいに怖い顔している。


「おい、まさか、ユミリさんが僕の提案却下したのか!?」

 和祁は勇気を出してその推測を言い出してしまった。



「えっ?わたし……もしかして! ! 」

 ユミリも悟ったみたい。



 でも皆安心してきた。やばい敵が現れたと思ったら誤解だった。


「速くもう一度提案して、誤解を打ち明ければワンチャンあるかもしれませんね。」

 真弓が言った。



「速く! 」


「はい!スイカちゃん!」

 悪いことしてしまったとばかりにユミリは慌てている。


 でもその寸前、さっきの素晴らしい曲は再び響き始めた。


 またラフェル家からの電話。


 和祁はすぐ電話に出た。

「おい?……………」



 ーーーーーー



 ようやく、終わった。


「おい!どうして何も言わずに終わらせたのよ!?バカカツケ!言えないなら私が!」

 スイカは暴発して和祁のスマホを奪ってきて電話をかけようとする。



「もう手遅れたよ。」

 和祁は死んだ魚のような目でスイカを見てから説明し始める。


「最終決定を告げてたよ。ユミリさんはここの学校に転校する、もちろん星間じゃなく普通の貴族女子校。元々こういう計画だったらしいから、手続きはもうできた。変更できそうにない。」


 彼は落ち着いたように長い言葉をペラペラ語っている。


 でも、スイカの方はもう理性を失っている。




「バカカツケ! ! どうして黙って!かってに!婚約破棄したのよ! ! ! ! 」


『パッコンッパパッ! ! !! !』


 何かを叩く声が屋敷の中に木霊する。




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