婚約破棄(2)
好かれていないと思うと、スイカは恐れて震える。
(いやいやいや! !本当に聞かれなかったでしょうね……?)
「いや……」
スイカはつい唸り声を漏らしてしまった。
彼女はベッドにうつ伏せに寝て顔を枕に埋め、枕を噛んでいる。
しばらく、彼女は決意した。
スマホを開けた、和祁にラインを飛ばそうとする。
『聞いちゃった?さっきのこと。』
『?』
和祁は即返信してくれた。さすがオタクだ。
『聞いてたかどうかって聞いてるの!』
『何のこと?』
ーーーーこの返信に、スイカは噴き出しそうだった。
『……教えたら問う意味なくなるでしょ。』
送信してからスイカは迷った。
そして『じゃ何聞いたのか教えて』ーーーーというメッセージを、スイカが消した。
代わりに彼女はそっと呟いた。
「やはり、聞いてなかったか。」
もう確信できる。彼女はよく和祁を知っているから。
そう思うと、スイカの顔にやっと大笑いが綻びる。
まもなく、部屋のドアを叩かれた。
(カツケ?まさかずっと外で待ってた?)
スイカはドキドキし始めた。何度も心の中でありえないと繰り返しても鼓動のスピードを抑えられない。
「カツケ?」
彼女は小声で訪ねながら、想像を抱えてドアを開けた。
でも前に現れたのはやはり和祁ではなく、ユミリだった。
するとスイカの笑顔はとっさに散り行く。彼女はがっかりした。だけど、その表情には失望だけでなく、恐れもある。
(さすがにユミリさんにそんな酷いこと言って……怒られちゃうかな、それとも、ライバルとして宣戦しに来たの?)
「なんのことですか?」
スイカはできるだけ冷静なフリをする。でも彼女は思わずふらつく歩みでベッドまで退いて座り込んでいく。
「スイカちゃん、すこし、話したいです!」
ユミリの声は元気なまま。
「何、何のこと?」
呟くようにスイカは再び訪ねた。彼女はユミリの目を見るすらできない。
(きっと、さっきのこと……でしょ……恥ずかしい、逃げたい!)
でも後悔しても何も始まらない。
「わたしはね、やはりスイカちゃんのことが好きです!いいえ、愛してます!」
「えっ?」
スイカはびっくりした。彼女の目は自然にユミリの目と合った。
(私のこと、好き?愛?)
スイカは間抜けた顔を見せて頭を傾げる。
「ごめんなさい!直接に好きだと言わなかったということ、今まで気付いてなくて、本当にごめんなさい!誤解を起こしてしまいまして……」
事情が複雑、そしてユミリの日本語は上手くない、さらにスイカは鈍感である。
しかし、スイカはその意味を聞き取れた。
スイカも今まで自分の誤解に気付いたーーーーユミリは和祁のため近付いてきたわけではなく、自分そのものがユミリの狙いだ。
しばらくの沈黙。
「私バカでしたね。ごめん、かってに嫉妬しちゃって。」
スイカは苦笑して言った。
(私……こないだ本当におかしかったわね……ずっとこんな可愛い女の子を疑ってたなんて……)
落ち着いて考えたら、スイカは恥ずかしくて死にたくなっている。
「やはりスイカちゃんは真のお嬢様ですね。好きですよ!」
「どっ、どういうことですか?」
スイカは真っ赤の顔を余所にして、勇気を出してユミリと見合って話す。
女の子同士に告白されたのは男子の場合よりも恥ずかしいかも。まぉ、スイカは男子に告白されたことないけど。
「スイカちゃんに引かれたのは、やはり、スイカちゃんのお嬢様らしさです。」
「あれ?私そんなものあったっけ?……氏族に見捨てられて、家来も一人もいなくて、男子達にモテなくて、上流社会の作法も全然わからなくて……お父さんはイギリス人だけど、英語のテストなんか消え失せろって常に叫んでて……こんな私は……」
スイカは一気に自分の欠点を言い出して反論している。ユミリはきっと勘違いしていると、彼女は判断した。そして彼女は誤解を打ち明けようと思った。
今更、身の上を打ち明けても恥じらうことはない。
それに自嘲するのが嫌いではない。彼女もネットで常に自嘲をネタにして遊ぶ。
「それこそスイカちゃんのお嬢様らしさですよ。」
しかしユミリは即答した。迷いなく強い口調で。
「……」
スイカは黙って彼女を見る。
「その、どういう言葉でしたっけ……」
真面目に語る途中、ユミリは言語障害に会った。
幸い考えた挙句思い出した。
「謙遜、謙遜です。美徳でしょう?」
「えっ?」
スイカはぽかんとした。
(自分は確かに謙遜かもしれないが、たいしたことではないでしょ。普通皆てさそうでしょ。)
普通の女の子として育ったスイカの周りに生意気なやつもいるけど、ほとんど面白くて優しい人だ。
一方、確実に上流社会の生活を送った本物のお嬢様のユミリは世の中の悪と険しさをもっともっとたくさん見た。
友達なのに服の価値で評価する、お金持ちなのに金のために争う。
スイカも悪いメイド達やヤンキー達にいじめられたことあるけど、ただ自分が不幸だったと思っている。だいぶの人及び社会は優しいと思っている。
でも周りに争いばかりのユミリは違う。普通の優しさでも、彼女にとっては遠い。
「昔、家に来て、わたしと遊んだことあるでしょ?」
「一応憶えてます……一つや二つのシーンしか思い出せないけど……まぁ、幼い頃は常にお父さんに連れられていろんな宴に参加したけど……私にとって日常を破ったつまらない旅しか思えません。食べ物あんまり美味しくないし、大人達の会話を傍観しなければならないし。」
「そうそう、大変でしょ。」
「今でもはっきり憶えてますね……あるとても怖いこと。とても怖かったです。子供の心を酷く傷つけちゃったやつ。」
スイカは大げさに語る。彼女もだんだんテンションが上がる。
「どういうことですか?」
「あの時、私は大人に邪魔され……大事なゲームデータをカバーしちゃいました……それから3ヶ月くらい私ずっと憂いの中でした。」
「えっ、そんなことあったんですか……そのね、とにかく、わたしはスイカちゃんから見たことのない宝物を見つけましたの。わたしは貴族小学校を通ってました。友達はなまいきな感じしていました。直接に生意気な態度を見せなかったけど、その、習慣などで、えっと、軽蔑を感じました。ですけど、スイカちゃんは違うんでした。まるで天使でした。」
「『みたい』をつけなければ。」
スイカは指摘した。
「はい、わかりました。そして、スイカちゃんは全然金の争いに関わらなくた、自分のことだけやっていました。同じく立派な服着ていましたけど、全然なまいきな感じがありませんでした。貧乏な感じでした。」
「貧乏かよ……」
スイカはつっこんだ、
「でもそれこそ本当の気高さだと、わたしは今までずっと思っています!ですから、わたしはスイカのそ姿を一生忘れません!わたしはあの一瞬でスイカに引かれちゃいましたの!その後、スイカちゃんに声をかけてみたら、やはりスイカちゃんは優しくて、一緒に楽しく遊べましたね。」
「そっか……いや、ちょっと、あのころむだ日本語できないでしょ?私達どうやって……」
スイカの記憶はあやふやだ。
「そうですね。名前がスイカだと知れなかったです。」
「まじかよ……」
「でも、だからこそ!スイカちゃんが伝えた優しさは紛れもなく真実でした!」
合わせたお互いの瞳に、光が映る。
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