婚約破棄(1)

 2025/3/25(金)ーーーー14:15ーーーー星間島ーーーースイカの屋敷


「私も、カツケのお嫁になりたいのです! ! ! 」



 そして、訪れるのは沈黙しかない。


 この空間では息の声しか聞こえない。


 とんでもない発言をしたスイカは気合いを崩さないやうに、強がって鋭い目付きでユミリを見つめている。



 そして、彼女の前のユミリは完全に呆れてしまった。その目はだんだん丸くなっていく。



 頭が止まりそうになったスイカはそれに気付くとつい余計なことを考えていく。

(こんな顔するんだ……ユミリさんもちょっと可愛いかも……)


 そして、何かの声がしてスイカの思考を断つ。


 ユミリの息の声?


 いや、それより遠い、そして後ろから。


 足音だ。


 スイカは呆れたように緩まった動きで振り返っていく。



 人のない廊下の曲がり角。



 スイカは一旦ほっとしたが早いか、和祁の姿が曲がり角から現れてしまった。


 間抜けた顔したスイカは、激しい感情が胸の中に波打っている。例えば視界を覆うほど大きな波だった。


 彼女は泣きそうと思っている。いや、その程度じゃなく、本当にスイカには一瞬跪く衝動があった。その衝動を抑えられたが、彼女の震えた膝はまだ恐れを示している。


(今の、聞かれちゃった?あれ?私、告白した?ユミリに対してカツケへの告白を?うわっ、意味わかんないよ……)


 スイカの精神は崩れそう。


 現実を逃避したい。


 でも。


(いや、意味は、わかる。ここは……逃げちゃダメ。)


 と考えて、スイカは口を開けた。


「カツケは……どう思う?」


 ーーーーーー


 和祁は2階のある部屋にものを取りに来た。歩くうちに突然スイカの声がした。確かに『…めになりたい』なんとか。


(?およ…めに?いや、それはありえないだろ、スイカだしな。)


「あれ?立って思ってるけど。」

 突然意味不明な質問を聞かれて、和祁はこういう反応しかできない。スイカが相手じゃないなら、彼はこれほどの下手冗談ま言い出せないだろう。



「私のことを、どう思う?」


 スイカは再び訪ねた。口調に自覚されていない怒りと恐れが出ている。


 また曖昧な質問を出してくれたが、流石に和祁はスイカと息か会うから、すこしは推測できる。

(さっきの会話を僕に聞かれちゃったから、僕の意見聞いてるか?)


 大体はあたり。



「あっ、スイカも女の子だから仕方ないっていうか。」


 と、和祁が応じた。


(お嫁になるとか、女子同士の話題してたんだろう。スイカもそんなのに興味あるのか。)



 一方、和祁のあやふやな言い方と適当な口調は成功にスイカを確信させたーーーー


(本当に聞かれちゃった! ! やばい! ! しかも、このクズ発言もやばい!)


 そう。狂いそうなスイカから聞くと、和祁の言葉はとても浮つくように聞こえた。



「何よその口調。私にがっかりした?」


「あれ?ないよ。そんなことは変じゃないと思う。」


「生意気ね。」


「誰かを好き誰かに好かれとても普通じゃないか??」

 和祁は迷った。


「普通じゃない! ! 」


 会話したあげく、口喧嘩になってしまいそう。スイカの怒鳴りは廊下に響く。



「ちょっと待ってろ、スイカ!」


 和祁は怒りそうになったスイカの腕を強く掴んだ。


 するとスイカは一瞬間抜けた顔を見せた。


 ドキドキッ


(まさか、カツケは……)



「スイカ、もしかして……劣等感を持ってるか?それは気に……」


 和祁はスイカを慰めようとした。もちろん言い終わる前にスイカに断たれた。


 手で。


 スイカはちょっとだけ(彼女にとって)手に力を入れて和祁を突き飛ばした。


「バカカツケ! ! 」


 そして逃げてしまった。


 いつの間にかユミリもいなくなった。


 故に、押し倒された和祁は一人でここに残されてしまった。



 彼が受けたショックは決して小さいとは言えない。


 長い付き合いで、スイカの暴力行為はますます減っている。彼を押し倒すのも久しぶりだった。


(一体、何故?)



 ーーーーー



 同時に、ユミリの部屋。


 まるで世界が滅びるような感情がユミリの胸を塞いでいる。


(わたし、本当にバカです。)


 ユミリもこないだ自分はどう考えていたかよくわかっていない。



 最初から気付くはずなのに。



 そんな二人を見て、どうして疑わなかった。


 どうして、カップルっぽいと思わなかった。



 スイカに告白されるまで、何も気付かなかった、何もわからなかった。



 真実を知った今、涙が止まらずに流れ出していく。



 何も変わっていないはずなのに、何もかも変わっまてしまったような感じ。



 でも、スイカのことが好きだという気持ちは変わっていない。決して変わらないから。


 楽しい春休みを過ごした事実も変わらない。


 だから、ユミリは悩んでいる。


(スイカちゃんを怒らせてしまいました。なんとかしないと!)




 あたらしい作戦を立てていく。




 15:20ーーーースイカの部屋


 スイカは落ち着いた。落ち着けば落ち着くほどバカな自分を責める。無謀に大きい声でそんな告白を口に出してしまった。そしてわがままにすねた。


(私……本当に……騒ぎの大きさに満足しないのか。)


 よく考えればわかる、和祁は告白を聞いたとは限らない。


 なのに、自分は変な質問してすねた。


 そんな必要はなかった。



「返事からすると……聞かなかったかな。」

 祈るように、スイカは呟いた。


 でも、もし聞かなかったフリをしただけならーーーー


(いや、ありえない。だったら、そんな下手な返事を出さなかったはず。)


 でも、ただ聞かなかったフリをして失敗したならーーーー


(カツケのコミュ力から……可能性でかそうだけど……)


 そして、本当に和祁は聞かなかったフリをしたという状況なら、どんな意味を示される?


 ーーーー


 つまり、スイカのことが好きじゃないから、誤魔化そうとした。











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