プロローグ 侵入クエスト(2)

 呆れたスイカの口から声を漏らされたーーーーどうして敵は潜望鏡を撃たないのだ?彼らはこういうアイテムを排除しないのか?


 もしかしてーーーー


 攻撃方向のせいで打てない。


 静かに考えたあげく、スイカは一つの結論を得た。


 それはーーーー


 盾で身を守る代わりに、攻撃の角度も定められている。


「あっ!そうだ!きっと!」

 スイカは拍手して朗らかな笑顔を浮かべる。

「ふふ、やはり私賢いなー」


 ーーーー実際は知っている、自分が答えに辿り着けるのは運が良かった。


 もう一つの潜望鏡を取り出して、スイカは続けて観察する。今回は明白な目的がある。敵の銃口を見て狙うところを判断する。


「うっ……外れちゃ死ぬ……」


 しばらく、スイカは弾丸を避けながら敵を倒す方法を見つけた。


 自分の持った二つの特殊弾丸を考えれば、このクエストはあんまり難しくない。


 スイカは値段の高い二つの弾丸をちょっと弄っていたら、銃に入れた。



 命を賭ける。



 成功すればいいな。


(こんなクエで命を落とす甲斐ないのに!)

 心の中で文句を言いながら、スイカは迷わずに動き始める。



 美しく、すらとした姿だった。


 彼女は飛び出して敵達の弾丸に立ち向かう。


 幻紋で反応力を大幅に上げられたから、スイカから見ると敵達はすこし止まってから銃を打った。火花が銃口を塞ぐ時、スイカは直ちに回って、予定した安全な位置に立つ。



 同時に左手の銃を敵の盾に向けている。



『********! ! !』


 銃声と盾の砕かれる音がこの空間を侵食している!




(よし!そして、爆発の弾丸を!)


 スイカは曲がり角に飛び込みながら再び銃を打つ。



「カン」


「カンカン!!」


 しかし、スイカだけでなく、相手も銃を打ち始める。


 一番先に出された弾はスイカの肩を掠める。巨大な衝撃力は防弾の制服を破ることは出来なかったが、人の皮と肉は耐えられない。


 幸い直撃されることはない。


 スイカは無事にさっかの廊下に戻って隠れた。



 白い閃光は刹那に、廊下を静まり返らせた。


 機関銃の大きな銃声が消えた。


 もう敵がいない。


 スイカは目を開けると、前方はもうめちゃくちゃだ。



 霧のような麻酔薬と倒れる人達。


 そして、焼かれた肉と血溜まり。


 その弾は普通の爆弾に麻酔薬を混ぜて作り出した物みたい。



 彼は、安らかに眠っている。スイカには死んだのか確かめる時間がなく、興味もない。


「なんかうける。」

 彼らを見下ろしてスイカは笑った。


(でも盾を砕いた後普通に麻酔弾で射撃したらどうでしょう。)


 もしそうに行けるなら、爆発弾丸を売って金を稼げるじゃん、とスイカは思った。



 彼女は金に困らないけど、和祁はそうじゃない。


(まぁ、無理だよね、相手は機関銃だぞ。)



「ちっ、そのバカのこと知らんわ。」


 と呟きながら、スイカは前に進んでいく。


「うわっ。」

 一歩を踏み出した瞬間、スイカは右肩からの激痛に気付いてしまった。


 彼女が自分の右肩を見ると大きく息を吸うに禁じえなかった。


 ーーーーそこは惨めな肉塊に見える。


 しかも目に近い。


 さすが威力の大きい機関銃だ。掠っただけで怖い傷を残されてしまった。服が血に濡れて透けていて中が見える。そこの肌はほぼなくなって、きらきらの肉がすいかの目を奪う。血がどんどん湧き上がってきて、制服を鮮やかな赤に染める。


 こんな酷い傷が自分の身につくなんて。


 スイカはぼうっとしていて、どうしようもなかった。




「うっう……」


 スイカの表情はQAQになっている。普段は強気だけど、彼女も女の子。



 痛みをこらえて彼女は通信器を取り出して和祁に連絡する。


「どうしよう!助けてよ!カツケ! ! 」


 スイカは子供のような無力さを感じた。


「うん?」

 向こうはただ『うん』と答えたが、その声に激しい感情が込められている。もう何かがあったと理解した。



「かた、肩が……擦れ傷が…大きい傷口! ! ! 血が止まらない!どどどどうしよう???」


 スイカは泣きそうだ。



「まだ……動ける?」


「動けるけど。」


「ではさっさとクエの方へどうぞ。」

 和祁の口調は冷静なように戻った。


「えっ!?そんな!私、ひどい傷……」


「それは……無事だったらいいじゃなーーーー」


 スイカに打ち切られた。


「ちょっと!!そもそもなんでこんな危険なクエ選んだのよ!!私が死んじゃったらどうしてくれるのよ!?私は、世界トップの財閥の令嬢で、まだまだ明るい未来が待っているはずなのに!!」


「そう言われても、今更クエを完成するしかないだろう。迎えのヘリが目的地に待っているから。」


「わっ、わかってるんだよ!もう!」


 スイカは怒鳴ってから不満に通信を切った。彼女はただ慰められなかったのに。


 でも和祁はそういう人だから、仕方ない。



 スイカは息を止めて、右肩を見ずに、麻酔薬の霧を越えていく。


 足を早めている。



 そして、廊下の雰囲気と打って変わった真っ暗な部屋に入ってきた。


 ここの唯一となる光源は1台のパソコン。


 スイカは右肩を動かせない仕草のままパソコンの前にたどり着いた。



 血が床に線を描く。



 パソコンの青い光がスイカの身を照らし、特に右肩の肉を照らされると水晶のようにも見えた。


 きらきらで、キレイ。


 でも、吐きそう。


 スイカにとって、それは恐ろしい傷以外何でもない。



 スイカはつい右手でパソコンを弄ろうと思うと、痛みのせいでやめるしかない。



 左手で操作するしかない。



 そしてスクリーンに黒いフィルムが出た。



『暗証番号を入力してください』



「どういうことよ!?」

 スイカは焦った。


 彼女はしばしポカンとしたらまた通信器を取り出した。


「適当に入力していい。」

 彼女が言う前に向こうは先に言った。


「そっか。でもどうして?」

 スイカは頷いた。


「仕方ない。パスワードそのものを除去するより、パスワードを解く方が効率的だから。」

 和祁は冷静に説明する。


 そしてスイカはさっさと適当にキーボードを押した。


 すると、スクリーンに✔が出て、『ディン』という音もした。


 同時に机の引き出しが飛び出した。


 その中の箱はスイカのターゲットである。


 スイカはそれを取ってからやっと微笑みを浮かべた。


 いつからだろう、彼女はもう汗まみれ。


「あついね……あっ、Finish。」


 と、スイカが報告したらーーーー


『ポンッ! ! ! 』

 大きな声と共に、部屋の壁が壊されて、瞬間に日差しがここを包み込む。




 1台のヘリコプターがスイカを出迎えに来ている。






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