感覚伝染(3)

2025/3/14(木)ーーーー14:17ーーーー白星パーク


 和祁は勇気を出してOLに立ち向かう。


「おほ?」

 OLは興味深そうに和祁とその手にある拳銃を見ている。

「その銃であたしを打つつもりですか?生意気にもていとあるでしょうが!ははははぁ!」


 と、和祁を嘲笑している。


「……」

 和祁は黙っている。確にOLの言う通り、彼女を倒せない。銃の問題じゃなく、彼の問題だ。

 距離は近いから、OLが移動しないなら和祁は当てる自信があるけど、移動しているなら桁違い。


 それにそんな近い距離なら、逆にOLに殺される可能性も高い。


 OLに宣戦した時、和祁はもう命をかける覚悟した。



 一方スイカも呆れている。


 どうして和祁はそんなリスクを負ってまでするのか。


(カツケ?バカ!死にたいのか!)

 スイカは思わずに震えた。


 死と生の狭間はいつよりも深刻に感じる。


「話さないのですか?遺言なさそうですね。」

 OLは拳銃を捨て、床に落ちた太刀を拾い上げようとする。


 この距離では、刀は銃より穏やかなものだから。


 それを見た瞬間スイカも動き出した、双銃を持って。全速全力でーーーー三つの幻紋が眩しい日差しの中に輝いている。

 彼女は一つ気付いた。


 和祁は注意を奪うためにそこに立つ。

 スイカがそのうちにOLを倒せば問題がない。


 OLより早ければいい。


 和祁は死のリスクを負おうと思っていない、彼はスイカを信じているのだ。


(私に失敗を許されない。)


 一秒以内、スイカは四発打った。

 三発は外れた、もう一発はOLに刀で防がれたーーーーが、その刃は両断されてしまった。


 スイカの銃は特製だから、凄まじい威力を持つ。スイカは怪力を持って大きな反動を耐えられるから、この銃が重い金属を使ってまで火力を重視するように作られた。


 星間学園中等部の保健室先生かつ銃器研究者の西山凛がスイカのためだけにそれを開発した。銃の名はR・NーP(rin・nishiyamaーpistol)。今ではR・NーP01からR・NーP03まで二回バージョンアップした。


 麻酔弾とはいえ、当てられたら冗談じゃない。


 一方、OLは全然怯えるように見えなくて、逆に余裕に笑った。彼女はカバンで和祁の銃撃を防ぎながら、折れた太刀をスイカに向けて振りかざす。


 スイカは攻撃をやめ、ギリギリそれを交わしたがーーーー


 和祁はスイカに向けて銃を打った。

 それを交わすためスイカ右に移動したら、OLの刃にぶつかってしまった。

 血が止まらなく吹き出していく

 という、OLの妄想がすべて外れてしまった。


 ーーーーーーー



「何笑ってるんでしょ。」

 スイカは倒れたOLの背に騎乗して、その変態みたいな笑みを見ている。


「……」

 和祁は黙って銃を打った。するとOLは麻酔弾に打たれて気絶してしまった。


「流石ですね。」

 精神が緊張しすぎて疲れ果てたあおいは座り込んでスイカを称賛する。


「すごいです!スイカちゃん最高ですっ!!」

 ユミリもすぐ飛び付いてくる。


「でも、一体どうやって……」

 あおいは気絶したOLを見て聞いた。スイカも早かったけど、OLに超えたことがなかった。流石に一撃で終わらせるのは信じられない。


「カツケのおかげですよ。」

 スイカは自信の笑顔を見せながら語る。


「東雲君もやはりすごいですね。」


「はあ?こいつ何をしました?」

 ユミリは疑うように和祁を見る。



「この女は多分精神操作みたいな能力を持ってますね、そして彼女はカツケにそれを使いました。でも、カツケも超能力を持ってます。一応感覚伝染という名を付けてます。精神操作の効果をこの女にそのまま返したのです。」

 スイカは得意げに説明する。


 和祁の超能力を見たから、スイカは超能力の存在を信じている。


 幻紋などは所詮科学技術。人間の生まれつきの能力とは違う。和祁に合う前にスイカも超能力を信じていなかった。


 感覚伝染とはフィクション的すぎる。スイカの生まれつきの怪力と違い、ディス家の脳の計算能力を強化した異能【的中】とも違う。


 学園の先生の話によると、感覚伝染の原理は脳波を送るみたい。



「そうですか、不思議ですね。」

「この男も役に立てますね。」

 あおいとユミリは普通に褒め言葉を言い出した。彼女らには技術と超能力の差を理解していない。



「こいつが余計なことしなかったら、そう簡単に倒せないはずだな。」

 和祁が補充した。


「まぁ、そうだとしてもちょっと時間かかるだけですね。」

 スイカは自慢する。


 とはいえ、スイカにまだ恐怖が残っている。もしあの日電車で完全に和祁を信じたら、自分はもう一本の目を潰されたのだろ。


 と思って、スイカは芝生地に落ちたカバンを睨む。

(恐ろしいものね、学園に送ろうか。)




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